全体の2/3をキッチンに 自由にアレンジを楽しむ 箱の中のプレーンなお皿

キッチン主体のリノベーション自由にアレンジを楽しむ
器に見立てたシンプルな部屋

仕事の動線を確保するために

賑やかな駅から徒歩約5分。先端のカフェやフラワーショップなどが点在する人気のエリアで、Ai Horikawaさんは築41年のマンションの1室を購入。
「自分がよく出かける場所にアクセスしやすい都心で探しました。フルリノベーションは前提だったのですが、リフォームされていない物件がなかなか見つからなくて。ここは襖のある古い造りのままでボロボロだったのですが、自由に造り変えられると思い、決めました」
室内に入ると、真っ白な空間の中に大きなキッチンが。Aiさんはレシピ開発、スタイリング、撮影を主軸に活動しているフードデザイナー。フルリノベーションは、調理と撮影を行うための動線、スペース確保が第一の目的だった。
「既にリフォームされている物件で、仕事的にちょうど良い間取りがなかなか見つけられなくて。キッチンが狭かったり、撮影スペースがキッチンから遠かったりと理想のところは見つかりませんでした。それなら全部自分でゼロから造りたい。そういう思いがありました」

作業スペースの広いアイランドキッチンを造作。

作業スペースの広いアイランドキッチンを造作。

総面積は40㎡。2LDKから1LDKに変更し、約25㎡をダイニングキッチン&撮影スペースに。

総面積は40㎡。2LDKから1LDKに変更し、約25㎡をダイニングキッチン&撮影スペースに。

空間の中に白いお皿を

リノベーションは、インテリアデザイナーの友人が代表を務めるデザイン会社「Hybe Design Team」に依頼。
「基本的に商業施設の設計がメインということで、普段個人宅はやっていないそうなのですが、友人ということもありデザインしていただきました。希望として伝えたのはキッチンを広く取ること、撮影スペースを確保すること、あとは全体的に白っぽい空間にすることです」
空間全体の2/3を、大きな白いアイランドを据えたダイニングキッチンに。曲線を描く白い仕切り壁の向こうに、ベッドルームやバスルームがコンパクトに収まっている。
「玄関を入るとすぐ左側が全面鏡になっていることと、カーブがついていて、玄関からいちばん奥の右手にいくまで角がないことによって、40㎡でも広く見えるようですね。こんな斬新なデザインで家がつくれるんだと思いました」
仕切りの白壁は、上まで塞がず隙間を空けていて、剥き出しの天井と梁を見せている。その壁の高さに揃えて、もう一方の壁にラインを合わせるように白塗装が施されている。
「部屋という箱の中にもうひとつ箱がある、あるいはお皿がある、というイメージなんです。箱自体はシンプルなので、あとは中を自由に料理してね、というのがコンセプトです」
ドアや収納扉はプッシュ式で、枠を設けず、留め具なども見えないようにデザインし、フラットでマットな面として見せている。空間全体がプレーンな白いお皿のようだ。

玄関にある全身鏡と、カーブを描く仕切り壁が空間を広く見せる

玄関にある全身鏡と、カーブを描く仕切り壁が空間を広く見せる。

仕切り壁の高さに合わせ、壁までラインを揃えて白く塗装している。

仕切り壁の高さに合わせ、壁までラインを揃えて白く塗装している。

端にもカーブをつけることで、空間の広がりを生んでいる。取っ手のついたドアの向こうがベッドルーム。

端にもカーブをつけることで、空間の広がりを生んでいる。取っ手のついたドアの向こうがベッドルーム。

出入りするドア以外はプッシュ式。たくさん設けた収納の扉はフラットな壁のよう。

出入りするドア以外はプッシュ式。たくさん設けた収納の扉はフラットな壁のよう。

細部まで計算したモノトーン空間

「お菓子づくりが多いので、機能的には作業台が大きいことが大事でした。コンロは3口をやめて、あえて2口にして作業スペースを広く取りました」
造作した大きなキッチン台では、調理だけでなく普段はパソコンを置いて仕事をしたり、友人を招いてパーティーをしたりと大活躍。生活の中心となっている。
「シンク周りがシンプルなところも気に入っているポイントです。丸みを帯びているのではなく、きれいな四角で天板の接ぎ目も見えないように。デザイナーさんに細かいところまでこだわっていただきました」
水栓や換気扇、最低限のドアの取っ手など細かいパーツはAiさんがセレクト。白い空間とグレーのカチオンの床にアクセントとなるよう、所々に黒を効かせ、飾り棚には1点1点美しい雑貨を並べている。
「基本はモノトーンなので、質感のある自然なもので雰囲気を出しています」
ベッドルームには棚を設け、モノトーンで揃えて額装した作品をメインにディスプレイ。シンプルかつ華のあるコーディネートに、洗練された空気が感じられる。

アイランドの天板は人工大理石。ダイニングテーブルとしても十分な広さがある。

アイランドの天板は人工大理石。ダイニングテーブルとしても十分な広さがある。

アイランドには食洗機をビルトイン。食器棚も設けている。

アイランドには食洗機をビルトイン。食器棚も設けている。

アイランド側面の飾り棚。好きな作家さんの花器や、お気に入りの雑貨を飾る。

アイランド側面の飾り棚。好きな作家さんの花器や、お気に入りの雑貨を飾る。

ベッドルームには天井を設けて落ち着ける雰囲気に。

ベッドルームには天井を設けて落ち着ける雰囲気に。

壁のようなドアの向こうにベッドルームが。

壁のようなドアの向こうにベッドルームが。 

ベッド脇の飾り棚はステンレスの板で仕上げ。ここにもお気に入りのものたちを飾っている。

ベッド脇の飾り棚はステンレスの板で仕上げ。ここにもお気に入りのものたちを飾っている。

つまみ状のレバーで操作するトグルスイッチを採用。

つまみ状のレバーで操作するトグルスイッチを採用。

細かなパーツに黒を使ってアクセントに。

細かなパーツに黒を使ってアクセントに。

シンプルだから心地よく過ごせる

完成して3年。ここに暮らすようになって良かったのは、仕事のしやすさと暮らしやすさ。ダイニングキッチンの窓の前に用意した撮影スペースには自然光が差し込む。
「いつもはここにライティングをセットして仕事をしています。料理してすぐに撮影という流れがスムーズにとれるようになり、仕事もはかどっていますね。収納を増やしてモノを隠すスタイルにしたので、撮影のバリエーションも広がりました」
ダイニングキッチンの天井の端から端まで設けられたダクトレールには、白系からオレンジ系まで調色できるスポットライトを。スタイリッシュな店舗のような空間を、夜にはムードのある間接照明が照らす。
「ゴージャスというよりもシンプルで整った空間が、私は好きなんです。心地よい空間で、仕事もプライベートも充実しています」

ライン照明が幻想的で美しい洗面所。ミラーはHAY。まわりを黒く塗装した。

ライン照明が幻想的で美しい洗面所。ミラーはHAY。まわりを黒く塗装した。

奥田雄太さんの作品を中心に、棚上をコーディネート。下は撮影で使う為に集めた食器を収めている。

奥田雄太さんの作品を中心に、棚上をコーディネート。下は撮影で使う為に集めた食器を収めている。

フードデザイナーAi Horikawa (https://www.instagram.com/ai_mogmog/) さん。『とにかくかわいいときめきスイーツ』などの著書も。

フードデザイナーAi Horikawaさん。『とにかくかわいいときめきスイーツ』などの著書も。

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