郊外へ引っ越した夫婦のリノベ ホシノタニ団地をイメージした 廊下のないワンルーム風の間取り

郊外へ引っ越した夫婦のリノベホシノタニ団地をヒントに
廊下のないワンルーム風の間取り

職場への通勤に2時間かかる郊外を選んだ理由は?

今年で結婚6年目になる平本夫妻は、2023年にこのマンションを購入しフルリノベーションをした。2匹の保護猫・うしちゃんとしじみちゃんと共に、夫婦2人で暮らしている。
「ここに引っ越す前は、blue studioさん設計の『ホシノタニ団地』に5年ほど住んでいました。物件サイトを見るのが好きなのですが、内装がずば抜けてかわいいと思って選んだんです。団地の周りは緑が豊かで、自然に囲まれている環境もよかったですね」と話すのは、奥様の志帆さん。
いつかは家を購入してリノベーションをしたいと考えていた2人だったが、具体的な引っ越しの計画はしていなかった。そんなある日、旦那様の雄一郎さんがこのマンションを見つけたことから始まった。
「物価の高騰で家の購入は現実的じゃないと半ば諦めかけていました。そんな時にリノベ済み物件の情報サイトで郊外にすごく安いところを見つけて。これなら自分たちでも買えそうだと思い、内見に行ったのがきっかけです」と話す雄一朗さん。
マンションの立地は、夫婦ともに通勤に片道、約2時間かかる場所だった。しかし通勤時間を1人の時間と考えることで、帰宅後の2人の時間をより大切にできていると話す。
「広いLDKと夫婦共有の寝室というシンプルな間取りにしたので個室はなく、家にいる時は基本的に夫婦一緒に過ごしています。だから通勤時間が唯一1人で過ごす時間なんです。本を読んだり、音楽を聴いたり、好きなことをする時間として有効活用しています」と続けた。

築40年、総面積は約85m²。

築40年、総面積は約85m²。

ベランダを背に、部屋全体を眺めて。

ベランダを背に、部屋全体を眺めて。

キッチンから続くカウンターは全長5m。

キッチンから続くカウンターは全長5m。

壁一面に渡したカウンターは、雄一朗さんがDIYで設置。

壁一面に渡したカウンターは、雄一朗さんがDIYで設置。

LDKの入り口にミニマルな洗面スペースを設けた。

LDKの入り口にミニマルな洗面スペースを設けた。

食器棚は、益子にある「仁平古家具店」で購入したもの。

食器棚は、益子にある「仁平古家具店」で購入したもの。

壁付けの収納は、幡ヶ谷の「BULLPEN」で購入した米国ヴィンテージ品。身だしなみグッズを収納。

壁付けの収納は、幡ヶ谷の「BULLPEN」で購入した米国ヴィンテージ品。身だしなみグッズを収納。

洗面上の鏡は「Orne de feuilles」で購入。

洗面上の鏡は「Orne de feuilles」で購入。

廊下から寝室方向を眺めて。

廊下から寝室方向を眺めて。

「ホシノタニ団地」をヒントにした仕切りのない間取り

以前暮らしていた『ホシノタニ団地』の内装が気に入っていた志帆さん。今回のリノベーションでも同じような内装にしたいと考えていたため、迷わず『ホシノタニ団地』を設計した建築設計事務所blue studioに依頼をした。
「ホシノタニ団地をそのまま大きくしたような部屋を作ってくださいとお願いしました。白い箱のようなシンプルな空間で、フローリングはオーク材、キッチンは一部タイル張りにして可愛らしい印象に仕上げました」と志帆さん。
そうして3LDKだった間取りは、ほとんど仕切りのないワンルームのような空間に生まれ変わった。
「子供の頃から廊下には暗いイメージがあり、怖くて苦手でした。だから廊下のないワンルームのようなホシノタニ団地は、住んでいてすごくホッとできたんです。風通しのいい開放感も好きなポイントでした」
この家にある個室は、バスとトイレのある約8㎡の広い洗面スペースと、ウォークインクローゼットだけだ。
「最初は壁を全て壊してひと繋ぎの空間にしようと思っていたのですが、壊せない構造壁が2箇所あったんです。その壁を活かして、洗面スペースとウォークインクローゼットを作ることにしました。ここに暮らし始めて1年ほど経ちますが、結果として壁があってよかったと思っています。洋服を料理の香りから遮断できたり、バストイレという最低限のプライバシーを守れたり、ある程度の仕切りは必要だなと感じています(雄一朗さん)」

ダイニングテーブルは、「RECTOHALL」で選んだアンティーク。

ダイニングテーブルは、「RECTOHALL」で選んだアンティーク。

LDK全体を眺めて。

LDK全体を眺めて。

デイベッドは、「TARO」で見つけた Artekの「DAY BED 710」。

デイベッドは、「TARO」で見つけた Artekの「DAY BED 710」。

新木場の「CASICA」で購入したアフガニスタンのヴィンテージラグを2枚重ねて。

新木場の「CASICA」で購入したアフガニスタンのヴィンテージラグを2枚重ねて。

寝室からLDK方向を眺めて。

寝室からLDK方向を眺めて。

いかようにも使えるりんご箱は、前の家から持ってきた数少ない家具の1つ。

いかようにも使えるりんご箱は、前の家から持ってきた数少ない家具の1つ。

志帆さんの趣味のレコードは、「BULLPEN」で購入したシステムシェルフに収納。

志帆さんの趣味のレコードは、「BULLPEN」で購入したシステムシェルフに収納。

「グランピエ」で購入したキャビネットには2人分の靴を仕舞う。

「グランピエ」で購入したキャビネットには2人分の靴を仕舞う。

“持たない”豊かさをつくる、断捨離と買い物ルール

驚くほど物が少ない平本邸。その背景には、それぞれに断捨離をした過去と、夫婦共通の買い物ルールがあると話す志帆さん。
「同棲をはじめた当初からお互いに物が全然なかったんです。主人なんて当時もってきたものがクッション1つと、服と、美容師免許と、賞味期限切れの桃の缶詰めだけでした(笑)。私は1人暮らしの時には収集癖があって、CDやレコードをたくさん集めていましたが、ある時に断捨離をしました。一方の主人も、数回の引っ越しを経験して断捨離上手でした。テレビも処分して、家具もほとんど持っていなかったので、今ある家具はこの家に引っ越すタイミングで購入したものばかりです(志帆さん)」
必要なものだけを持つ暮らしのなかで、自然と買い物のルールも決まっていったそう。
「1つ買ったら、1つ捨てる。それをルールにしているので、欲しいものがあっても自ずと慎重になりますね。正直、ここでずっと暮らそうとは考えていないので、将来の引っ越しを見据えて身軽でいたい気持ちがあるんです。ちなみに僕たちはお酒も好きなのですが、平日は350mlの缶ビールを半分ずつ。休日は好きなものを好きなだけ、というルールもあります(雄一朗さん)」
休日は見晴らしの良い部屋で、まだ明るい時間から宴をはじめるという。“持たない” ことで生まれる豊かさが、2人の暮らしをつくっている。

玄関の横につけた木製枠の鏡は「グランピエ」で購入。

玄関の横につけた木製枠の鏡は「グランピエ」で購入。

友人のイラストレーター「三嶋さつき」さんの描いた平本家の絵。

友人のイラストレーター「三嶋さつき」さんの描いた平本家の絵。

玄関のコート掛けは「The Tastemakers & Co.」で購入。

玄関のコート掛けは「The Tastemakers & Co.」で購入。

玄関と寝室の仕切りは、山小屋をイメージして濃い茶色に塗装。

玄関と寝室の仕切りは、山小屋をイメージして濃い茶色に塗装。

見晴らしのいい寝室は、景色を楽しめるシンプルな設えに。

見晴らしのいい寝室は、景色を楽しめるシンプルな設えに。

保護猫カフェで出会った、しじみちゃんは現在3歳。

保護猫カフェで出会った、しじみちゃんは現在3歳。

バスルームとトイレを同じ空間にまとめて、スペースを有効活用。

バスルームとトイレを同じ空間にまとめて、スペースを有効活用。

壊せない構造壁を利用して、寝室横にウォークインクローゼットを設けた。

壊せない構造壁を利用して、寝室横にウォークインクローゼットを設けた。

リノベーションは「blue studio」が担当した。

リノベーションは「blue studio」が担当した。

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