
オンもオフも満たされる旅で得たインスピレーションを
日常の暮らしに映し出す
帰国後の生活を見据えて
1年間のイギリス留学中にリノベーションを決意。現地からインターネットで物件を検索していたという、広告代理店勤務の荻野さん。
「帰国してからリモートワーク中心になることがわかっていたので、仕事をするスペースとプライベートを分けたいと思ったんです。それには広さが必要なので、賃貸よりも購入した方が予算の面でもよいかと考えました」
帰国後に『EcoDeco(エコデコ)』に相談。40㎡程の広さと駅徒歩10分以内、会社通勤1時間以内、などを条件に見つけたのは、都心へのアクセスのよい1987年竣工のマンションの1室。
「耐震基準でローンの組みやすさが変わることなど、知らないことがたくさんあったので、物件選びから相談して進められたのも良かったですね。この部屋は視界が抜けていて、隣地の緑も借景になり気持ちがよくて。内見に来てすぐに決めてしまいました」
玄関を入ると手前がダイニングキッチン兼ワークスペース、バルコニーから光が差し込む奥の空間には、ひと際明るいリビング兼ベッドスペースが現れる。

リモートワークも行うダイニングキッチン。梁の向こうがプライベートスペース。

天井が高く、明るく開放的なリビング。ベッドスペースを仕切りなく設け、カーペットを敷いてホテルライクにコーディネート。
落ち着ける北欧ダイニング
3パターン出してもらったプランのうち、選んだのは予想していなかった案だった。
「リノべ前は狭い廊下があって、キッチンが奥まった場所に独立していました。そこを変えずに他をどう変更するかを考えていたのですが、キッチンを動かして壁付けにすると、すべての収まりがよくて。自分にはない発想だったのでありがたかったですね」
キッチンを部屋のほぼ中央に移動させオープンに。リモートワークも行うこのスペースは、モルタルの床にラワンの壁が落ち着いた雰囲気。
「YouTubeで世界の建築のような動画を見るのが好きで、アアルトの工房などに惹かれていたんです。古い建築事務所のようなワークスペースをイメージしました」
ラワンの壁や建具は、赤味が出るように塗装、モルタルの床にはオイル塗装して艶感を出した。そこにシンプルな白いキッチンが、箱のように収まっている。
「最初に、生活感の出るものは全部隠したいとお伝えしていたんです。キッチンをオープンにするのは一番の冒険だったのですが、簡素にデザインして、家電やゴミ箱などすべて収まるよう造作したことが正解でした」
吊り戸棚や飾り棚も却下。壁面には白いタイルを、海外の事例で見たという縦貼りで整然と並べた。エレガントな佇まいが、シックな事務所の中に溶け込んでいる。

仕事場兼ダイニングキッチンの床は、配管の引き回しにより、リビングから1段上げた。低めの天高で包み込まれるような雰囲気に。

赤みがかったラワンの風合いが落ち着きを与える。アルバ・アアルトの自邸を参考にした。

ダイニングは、“白天板でシルバーの脚”を条件に選んだオフィスリース用のテーブルを採用。照明はルイス・ポールセンのラジオハウスペンダントライト。

白で統一したキッチン。コンロは2口のIHにしてプレーンに見せるなど、シンプルなデザインにこだわった。ステンレスの天板の厚みもタイルの横幅とリンクしている。

炊飯器、湯沸かしポット、ゴミ箱などはすべて内蔵。目に触れるものをなるべくカット。

何度もショールームを訪れ、選んだタイルを縦貼りに。エレガントなデザインを目指した。

引っ越し前から愛用しているチェストは、インドネシアの古道具。リビングとの仕切りになっている。イタリア製のテーブルライトともに、ネットで購入。
南欧気分に癒されるリビング
リビング側に抜けると、シックな雰囲気から一転、明るく開放的な空間に。
「全体をミッドセンチュリーで統一してしまうと、古びた感じが出過ぎて重くなってしまうかなと思ったんです。そこでリビングは雰囲気を切り替えました。小学生の頃に近所の家族と行った会社の別荘がイメージです」
思い出の別荘は、カーペットが敷かれた、癒しと贅沢感が感じられる空間。子供の頃の記憶を再現しつつ、同時に、留学中に訪れたポルトガルやスペインの明るい雰囲気もプラスした。
「南欧に行った時に、こんな色を取り入れても居心地がいいんだという気づきがあり、壁の一面をイエローで塗りました。ハッピーなカラーに元気をもらっています」
空間を広くとるために、寝室はあえて仕切らず、リビングの一部に。ゲストがふたり来ても泊まれるように、設計前に大きなソファの購入を決めて、図面に入れていたそう。
「リビング側の天井にはダクトレールを設けましたが、照明はほぼフロアライトだけなんです。ダイニングにはペンダントライトをつけているので、天井にたくさんつけてもうるさいかなと。夜は照明を落として静かに過ごす時間も癒されます」

二人分のベッドとしても使えるIKEAの大きなソファを置いたリビング。全体にベージュのタイルカーペットを敷いた。汚れた箇所のみ取り替えられるのが便利。

リビングの一角をベッドスペースに。本や掃除機、加湿器などを収めた収納にはルーバーの扉を取り付け、ダイニングのラワンに合わせて塗装した。フロアライトはネットで購入したノーブランドのもの。

壁の一面をポルトガルのポルトで見たカラーに塗装。ダイニングから雰囲気が切り替わるものの、同じイエローベースで繫がっているためか違和感がない。テレビ台はダイニングからテレビが見えない高さになるものをチョイス。

イエローの塗装は、「もう少し黄土色をイメージしていましたが、明るい黄色も結果、気に入っています」

季節感が感じられるよう、いつも花を飾ることを意識している。
DIYでよりコージーに
落ち着けるワークスペースと広々としたリビングを確保しつつ、バスルームやウォークインクローゼット、洗面の生活インフラを一括に。
「洗濯機からすぐに洗濯物をクローゼットに片付けられるし、帰宅後の動線もいいんです。最近は、玄関脇にある洗面台まわりを赤く塗装しました」
ここは、今年の夏休みに訪れた北欧でインスピレーションを得たそう。
「ホテルやカフェなど、色々なヒントが溢れていましたね。壁の色だけでこんなにコージーになるんだと感じて取り入れたくなり、一緒に旅をした会社の同期を呼んでDIYで塗りました」
雰囲気がまたガラリと変わるトイレの壁紙も、なんとひとりでDIYして完成させたもの。
「トイレは唯一、ドアが絶対に必要な場所なので、思い切って遊んでしまおうと。ジャングルの壁紙が気に入り、ネットで取り寄せて自分で貼りました。初心者なのに柄ものを選んだので、柄合わせが大変だったのですが(笑)」
そんなDIYの経験も、楽しい思い出と家への愛着を残す。
「賃貸のワンルームは寝るだけの部屋だったのですが、今は暮らしにとても満足していますね。リノベーションも楽しすぎて。いつかまたやりたいと思っています」

玄関はインドで購入したブロックプリントの布で仕切っている。ラワンの壁を「toolbox」の壁付け照明が照らす。

玄関脇に設けた洗面台は、来客時にも便利。まわりをレッドで塗装した。どこか中南米の雰囲気も。

洗面台の向こうにWIC、ランドリー、脱衣所、バスルームが。引き戸で仕切ることも可能。

洗面台の棚板にもラワン材を採用。タイルは縦貼りで。明るめのレッドが非日常感を出している。

「壁紙本舗」の壁紙を使ったトイレ内。ジャングル柄と「toolbook」の手編みロープ照明がマッチしていて楽しい。








