
湘南の団地リノベ白と黒、素材で整える
豊かな空間
団地の制約を楽しむリノベーション
神奈川県藤沢市にある、築49年の団地をリノベーションした村上邸。
リノベーションを手掛けたのは『Camp Design inc.』。
「雑誌『& Premium』の住宅特集に、『Camp Design inc.』の藤田雄介さんの団地リノベが紹介されているのを見て、ぜひお願いしたいと思いました」。まだリノベーションが施されていない空き物件を見つけ、購入を決断。
「57.58㎡の空間は、構造上動かせない壁によって4つのスペースに分かれていました。その制約の中で、リビング、キッチン、寝室、バス・トイレをどう割り当てていくかが最初の課題でした」
キッチンは壁付けとし、空間の中央には大きな作業台を設けた。
作業台の中に冷蔵庫をビルトインすることで、生活感を抑えたすっきりとした空間ができあがった。
住まいのイメージを具体化するため、村上さんは時間をかけてインテリアを研究したという。
「いろいろなデザイン性の高いホテルに泊まり、空間の使い方や素材の組み合わせを参考にしながら、住まいのイメージを作っていきました」とあづささん。
「僕はたとえばキッチンのタイルに色のあるものを使ったらどうかな?と思ったこともあったのですが、彼女には“白と黒”の空間を作り、そこに木や陶器、ガラスの素材感を加えていくインテリアのイメージがしっかりあったようです」と直樹さんは笑う。

たっぷりとした大きさの作業台をキッチンに。

作業台の下に食器類を収納できる。

キッチンは壁付に。出窓に腰掛けることができる。

村上直樹さん、あづささん、3年生ののにちゃんの3人家族。

キッチンの床はモルタルに。ペンダントライトは『飛松灯器』。

作業台の下に冷凍冷蔵庫が納められている。「ドイツ製の『Liebherr』の冷蔵庫は作業台にすっきりと納めることができて大満足です。音も静かです」

ミーレの洗濯機は、排水の能力が高いキッチンのカウンターの下に。
布框戸がつくるコントラスト
清潔感と素材感のある“白”をベースに、黒のインド綿を使った布框戸や、水栓、照明器具などで効果的に“黒”を配した空間が完成した。
布框戸に選んだ素材は、黒のインド綿。わずかな透け感のある布が、空間に静かな緊張感をもたらしながら、同時にやわらかさも添えている。
この布框戸は、『Camp Design inc.』の藤田雄介さんによる建具専門メーカー『戸戸』で製品化したもの。実際に販売もされている。
構造上動かせない壁によって4つに区切られた間取りのため、洗面スペースには十分な広さを確保できなかった。そこで洗面台は、あえて玄関ホールに小さく設えることにした。
「スクエアな洗面台がまるでオブジェのようです。壁に直接取り付けたトグルスイッチも気に入っています」

建具の“黒”が空間を引き締める。

玄関入ってすぐに手洗いを設置。ガラスの室内窓の向こうがバスルームになっている。

FRPの白の空間に、 ホーローの白の浴槽。シャワーヘッドの黒がアクセントに。洗面の水栓も黒。

シャワーカーテンには布を使っている。
余白を残す暮らしかた
チーク材のフローリングで仕上げたリビングは、既存のアルミサッシに木枠の内窓を設けることで、あたたかなリラックスできる空間に。
そして白の大きな引き戸を開けると現れるのは、のにちゃんの学習机と収納スペース。
村上家の収納はこの引き戸の中と、ベッドルームの吊戸棚のみだ。
日々の暮らしで使うものを丁寧に選ぶことで、収納量は最小限に。
必要なものだけが“白と黒”の空間に心地よく整えられた住まいが、家族の時間を静かに支えている。

優しい日差しが入る窓に、木製の内窓をつけた。ソファはハンス・J・ウェグナー。「壁付のTVはDIYでつけました」

引き戸を開けると、のにちゃんの学習コーナーが現れる。

余白を大切にした空間に、吟味して選んだお気に入りのものたちを置く。リビング側はチーク材のフローリングに。壁は漆喰が入った塗装で仕上げた。

『Santa & Cole』のフロアライト。

キッチンと廊下の間の照明は黒のアッキーレ・カスティリオーニのPARENTESI。








