
家具とアートと、器を愛でるノイズレスを少し外して
“揺らぎ”を表現
ヴィンテージを活かすために
「実家に近いエリアで探していました。ここはリノベ済みの物件だったのですが、リノベーションをしてみたい、という想いがあったので、お風呂とトイレ以外はすべてスケルトンにしてスタートしています」
美大出身のお兄様の影響もあり、もともとインテリアに興味があったそう。持っていたヴィンテージの家具に合わせて、完成させたい空間のイメージも膨らんでいた。
「最初は真っ白にグレーを使った空間を考えていたのですが、ローズウッドやチークなど、ヴィンテージ家具の濃い色を入れたときに、少しコンサバになってしまうかなと。ぱきっとした印象になりすぎない方が好みだと気づき、途中からベージュ系で揃えることにしました」
グレーをベースにしつつ、床材や塗装材などを少しベージュが入ったカラーで統一。名作家具に、作家ものの器やアートが彩る空間は、まるで美術館のように洗練されている。

総面積は75.60㎡。設計施工は『nuリノベーション』。

大判の塩ビタイルが整然と敷かれた空間。光の反射がニュアンスを加える。

リビングにニッチ収納を設けた。お気に入りの雑貨やアートを、余白を持たせて飾る。
人も猫も暮らしやすく
鯉沼さんとともに、ここで暮らす愛猫のこゆきちゃんは現在11歳。
「そろそろ色々と気を遣ってあげないといけない年齢になってきて。建具があるとぶつかったり挟まったりして危ないので、ほぼ設けませんでした」
玄関からベッドルーム、ウォークスルークローゼット、LDKまで、仕切りのないシームレスな空間は、こゆきちゃんのために考えた。猫カートを置くために、土間も広々と。
「これから病院通いも増えてくるかと思って。床は、こゆきちゃんが吐いたりしてもさっと拭けば済むように、塩化ビニールタイルを選びました。東リのショールームに足を運び、色々と悩んで決めました」
ベージュを混ぜたモルタルの土間から、硬質な塩ビタイルが敷き詰められた住空間へ。WTCからベッドルームのある廊下に抜けて洗面を通り、LDKに続く、スムーズな生活動線が確保されている。

玄関脇にモルタルの土間が広がる。D&Departmentの収納ボックスがぴったり入るよう棚を造作。ボックス内には靴を収納している。柳宗理デザインの曲木鏡の横から、左手のWTCへと続く。

ベッドルームはオープンにしつつ、カーテンがかけられるようレールも設けた。イサム・ノグチのAKARIで月を、ミナペルホネンのベッドカバーのデザインで川を表現している。本棚下をワークスペースにする予定。

回遊できるWTCは、3.2畳あり余裕たっぷり。

ベランダから光が差し込むLDKへ。

洗面台は、床材に使うフレキシブルボードで造作。モルタルに見えつつ、機能的でコストもカット。
ノイズのない空間に“揺らぎ”を
ひと部屋を壊して広々とさせたLDKは、静謐な空気が漂う。
「私は原色などの奇抜な色が得意ではなくて。集中力が切れてしまうんです。できるだけトーンを揃えたかったのですが、でも、あまりやりすぎてもお行儀よくなりすぎてしまいます。そこで、少しアンバランスで揺らいでいる雰囲気にしたいと、『nuリノベーション』の設計デザイナーさんにお伝えしました」
モノトーンでシンプルにまとめノイズを抑えつつも、デザインや素材感の違いを加えることで“揺らぎ”を表現。例えば壁付けのキッチン前は、タイルをあしらいつつ、半分ほど掘り込みを入れて躯体現しに。整然と並んだ美しいタイルと、荒々しいコンクリートの表情が、アンバランスな対比を見せている。
「掘り込みでできた段差には、アートや器を飾って楽しんでいます。造作したキッチンは4.6mと大型なので、下にたっぷり収納も設けられました。もともとお料理が好きで、友達を呼んで一緒にスイーツなどを作ったりもするので、大きいキッチンは使いやすいですね」
キッチンの脇には、家電などがすべて収まるパントリーを広めに確保。生活感を感じさせるものを全て収め、LDK側ではお気に入りのインテリアを楽しんでいる。

空間を広く取るため、キッチンは壁付けに。壁面をタイル貼りとコンクリートの躯体現しで対比させた。

掘り込み部分に、作家ものの器やアートを飾る。名古屋モザイクで選んだ、器のような質感のタイルは縦貼りに。

造作キッチンの引き出しはプッシュ式でノイズレスに。レンジフードは、ARIAFINAのAriettaシリーズ。『nuリノベーション』の施工事例や『TO KO SIE』を見て即決。

3.4畳もある余裕のパントリー。家電や集めて来た和食器、籠ものなどを収める。

レトロな食器棚に、シモヤユミコ、松本郁美などの作家ものの器がたくさん。

シルバーのトレーや陶器のシェード、ガラスのコップなど、素材の異なるものをミックスして飾る。額装しているのは、写真家・尾原深水の作品。

籐製品や木製のお弁当箱、漆のお椀など、見ているだけでも楽しいパントリーの棚。

エクステンションできるカイ・クリスチャンセンのダイニングテーブル。3本脚のアンティークチェアはハンス・オルセン。テーブル上は、大切にしている十場あすかの急須など。
ギャラリーのように魅せるニッチ
「家具は引っ越してきてから、結局ほとんど買い替えました。デザイナーものからアノニマスまで色々ですね」
“揺らぎ”の感じられるニュアンスのある空間が、ヴィンテージを古めかしく感じさせず、モダンに溶け込ませている。リビングの大きなニッチには、鯉沼さんの審美眼で選ばれたものたちがディスプレイされ、アイキャッチのように際立っている。
「ニッチ収納が欲しくてリクエストしたんです。水道橋、千駄ヶ谷、荻窪などのショップを回るのが好きで、たくさん買い集めていますが、飾る場所が多すぎて(笑)。この家に来てから、お気に入りのものを探すのも、さらに楽しくなりましたね。ひとり暮らしには少し広いし、最初は落ち着かなかったのですが、1年半経ってだんだん自分らしい過ごしやすい空間になってきました」
現在はLDKに置くチェアと、ベッドルームに設置するデスク、カーテン探しがテーマだそう。自由にコーディネートできる空間を手に入れ、インテリアへの想いがますます募っていく。

ヴィンテージ家具が、少しベージュの入った空間になじむ。

リビング側の壁面も、天井下を掘り込みにして、躯体を現している。ソファテーブルはコンスタンチン・グルチッチ。照明はAKARI。

ハンス・J・ウェグナーのGE290(1人掛けチェア)の手前は、ピエール・シャローのテーブル。個人輸入した壁のシェルフは、スペクトラムのペーパーバック。

壁の額装はアーティストYUKI MORIOKAの作品。水面に映った雲を反転させたフォトグラフ。インスタグラムで発見して購入した。

アノニマスの北欧ヴィンテージキャビネット前のこゆきちゃん。キャビネ上にはガラス作家・荒井美乃里、陶芸家・打田翠の作品などを。

ニッチ収納は、余白を持たせながらお気に入りをコーディネート。こゆきちゃんそっくりな猫の置物は、ぬいぐるみ作家・衣田雅幸のもの。








