
素材で楽しむ異なるスタイルを合わせた
インテリアコーディネーターの住まい
親の想いを引き継いで
Hさん夫妻がリノベーションをした場所は、元々妻のお母さまが購入した物件だった。「母が体調を崩して入院している時に、ここを手放したくないと言ったんです。そんなこと言えるような状態じゃなかったんですけど。終の住処として購入したこともあって、思い入れがあったんだと思います」。お母さまから許可をもらい夫が仕事場として使っていた状態が、他界されてからもしばらく続いていたが、気持ちの整理がついたところで、リノベして夫妻で暮らすことに決めたという。「母の物を片付けなくちゃいけなかったですし、どこかで区切りをつけたいという思いがあって。夫にここで暮らすことを相談したら二つ返事でいいよと言ってくれたんです」。お母さまの意思を引き継ぎ、ここで暮らすことに決めたH夫妻。インテリアコーディネーターの妻が仕事で培った経験を活かして作り上げたご自宅は、一つのテーマに縛られない自由ながらも調和がとれた空間が広がっている。

65.50㎡、1LDKの空間に様々なテーマが交わる。

一緒に暮らす猫のために塗り壁を採用した。

剣持勇が国立京都国際会館のロビー用にデザインした「Hacoシリーズ」のテーブル。

壁一面の造作本棚が、程よい差し色を加える。大量の本を入れることを想定し、棚板は厚め。

グレーを基調とした空間に、棚板やインテリアに黒を入れて引き締める。

リビング・ダイニングの床はパーケット貼り、廊下とウォークインクローゼットはサイザルを採用。「サイザルの感触が良くて素足で歩いちゃいますね」と夫。

ウッドとメタルの組み合わせが見ていて楽しい、ドイツのメーカー「KARE」のキャビネット。

保護猫を引き取って暮らしている夫妻。今は写真に映るロンちゃんと、ルイちゃんの2匹と暮らす。
違いを重ねる心地よさ
リノベのプランニングは妻がインテリアコーディネーターの仕事をする中で積み重ねてきた知識を活かし進めていった。「壁紙を選ぶときに、用途と違うものを選んだりするのも仕事柄だと思います。こういったことを受け入れてくれるのがフィールドガレージさんでした」。
リビングドアを開けると、パーケット貼りの床や曲線が美しいオーク材のリブパネルが印象的なリビング・ダイニングと、インダストリアルなキッチンが調和した空間が広がる。「全体はグレートーンで統一して、メタルとウッドを合わせました。違うものを組み合わせるのが好きで」と妻。リブパネルの壁まで伸びる天井の梁を、キッチンのスタイルに合わせモルタルで塗ったり、リブパネルの曲線に合わせパントリーの入り口上部をアールにするなど、互いの空間を重ねたりリンクさせることで、ゾーニングしながらも全体のつながりを演出している。
リビング・ダイニングの壁一面を占めているのが夫の希望で作られた造作の本棚。「本の量が多いので、以前の家では詰め込んだせいで取り出せなかったり、分散していたりしていたんです。パッと見たい本を見つけて出せる状態にしたかった」と夫。上部の梁も本棚の一部として活用していることで張り出しが気にならない。
大きなアイランドカウンターが特徴のキッチンには、妻のこだわりが随所に見られる。広いカウンターは作業がしやすいようにということに加え、ダイニングテーブルを置きたくないというのがあったから。「ダイニングテーブルを兼ねたスペースにしたかったんです。軽めの食事はここで食べていますね」と夫。カウンターがキッチンから張り出ているが、リブパネルの曲線があることで動線を邪魔しない。

夫のお気に入りの一つが、リビングドアから広がる空間。「全部好きなんですが、強いて言うならここからの開放感と景色ですね。照明が映える夜の雰囲気も気に入っています」。

リビングドアのストライプガラスはリブパネルに合わせて。「縦に長い照明は、リブパネルとリンクさせたかったのと、丸みのあるものが多いので温かさがありながらもシュッとしたものを入れたかった」と妻。

一枚一枚が違う表情がある点が気に入り採用した艶のあるタイル壁が、キッチンをインダストリアルすぎない空間にする。

シームレスシンクに「ハンスグローエ」の水栓と、使いやすさを追求した造作キッチン。

プライベートな料理教室やホームパーティもするHさん夫妻がコンロに採用したのはスウェーデンのメーカー「ASKO」。「極トロ火もできて気に入っています」と妻。
テイストを変えて楽しむ
ドア枠が埋め込まれ壁と一体となったリブパネルの扉の先はウォークインクローゼットになっており、寝室から廊下へ回遊できるようになっている。収納をウォークインクローゼットに集約し、それ以外の部屋には、あえて隠す収納をなるべく設けていない。「収納する空間を作るとしまっちゃってものが増えるので、収納スペースはあまり作っていません」と妻。造作の収納のほとんどがオープンシェルフになっており、空間に抜け感を作る効果もある。
雰囲気がガラッと変わるのが寝室だ。壁はテラコッタ調、天井はサイザルを意識したクロスを採用しエキゾチックな雰囲気にした。「壁に飾ってある母が旅行先で購入したペルシャ絨毯や、彼女の木工作品を綺麗に飾れる空間にしました。トイレや洗面所など、部屋ごとにテーマを変えて楽しめるようにしています」。
洗面所は、妻が一目惚れしたというビンテージ調のアクセントクロスに合わせ、ブリテッシュグリーンが配色された空間。タイル面の目地の幅はミリ単位で調整した。実験用シンクの下を空けたことですっきりとした印象を与える。
元々、都心で暮らしていたHさん夫妻に対して、お母さまは中心地から少し離れた場所にある、ここの良さを話していたという。「当時は都心の方がいいと言っていたんです。でも実際に暮らしてみると、視界を遮る建物や人混みもないし、周りには美味しいも店もあって、いいところだなって。「だから言ったじゃん」って、どこかで母は言っているんでしょうね」と笑顔で語った。

存在感のあるリブパネルの壁。ウォークインクローゼットへつながる扉のドアノブもアクセントカラーである黒を使っている。

ウォークインクローゼット。右に見える扉がリビングダイニングに、背面が寝室につながっている。

エスニック調の寝室。右の扉がウォークインクローゼットにつながる。

玄関の床材はモルタル。廊下までのアプローチが長く、アウトドアワゴンも楽々と通る。

夫妻共通の趣味であるアウトドアグッズなどを収納している土間の壁の一部はあえて剥き出しにした。「職人さんが墨打ちした寸法が残っているのを見つけたんです。この家の歴史だし残そうって夫と話して」と妻。

木枠のミラーとマリンランプが雰囲気を彩る。








