築50年のマンションをリノベスター猫と暮らす
モダンでシンプルな空間
グレートーンの部屋に白茶ボディが映える
まるっとしたお顔、真剣な表情、キュートなしぐさ。インスタグラムで人気を集めるスター猫、どんこに会いに、写真家の井上佐由紀さんとアーティストマネージャーの外山輝信さんのお宅に伺った。
まったく人見知りをしないどんこは、すぐに我々を自分の個室(上の写真のマンゴーの段ボール箱)に案内してくれた。
「“新鮮な”箱が好きなんです(笑)。今はこのマンゴーハウスがお気に入りのようです」と外山さん。
渋谷区内の築50年のマンションを2011年にフルリノベーションした井上・外山宅。床はすべてモルタルにしようと決めていたが、設計を進めるうちに壁もモルタルにすることにしたそうだ。グレイッシュな空間に、白茶ボディのどんこがよく映える。
「物件探しからリノベ設計、設計監理までお願いした『スマサガ不動産』は、住宅雑誌の編集者にご紹介いただきました。立地や管理の状態など、プロの目で中古マンションの良し悪しを判断いただき、とても心強かったです」
猫と暮らし始めて家がシンプルに
この家の設計段階では、猫と暮らすことは考えていなかったそうだ。リノベーションが完成する少し前に、保護猫だった当時3歳のどんこと出会う。
「そのため、猫用の扉やキャットウォークなどの猫のための特別な仕様はありません。どんこと暮らし始めてから、変化したことが多かったです」
たとえば、玄関からリビングに続く廊下に作られた本棚には、引っ越し当初は本をズラリと並べていたそうだが、どんこが背表紙を引っ掻くので本は処分してしまったそうだ。
「部屋はシンプルなほうが掃除が楽だということに気がつきました。ラグを敷くのもやめました。ラグがなくても、モルタルの床は夏はひんやりと冷たくて気持ちがいいですし、冬は床暖を入れるのでどんこも気持ちよさそうです。そして、棚の上には落として壊れるものを置かなくなりました。どんこと暮らし始めてから、モノはどんどん少なくなり、インテリアはシンプルになっていきました」
モダンな空間にアートを飾る愉しみ
モルタルの床と壁、北欧家具を中心としたソファやチェアのそれぞれのグレーのトーンの調和が美しい。そこに無垢の木の美しさが際立つ、装飾を最小限に抑えた『NAUT』のテーブル。ひとつひとつ吟味された家具はシンプルでとても美しい。
そのミニマルな家具に対して、廊下に沿って作られた長い本棚もキッチンも“見せる収納”だ。棚の上には写真や現代アートの額装が並ぶ。
「地下に3畳ほどの倉庫があるのですが、そこに保管してある作品と時々入れ替えて楽しんでいます。
どんこのおかげで部屋がどんどんスッキリしていきましたが、本棚もキッチンも何が入っているか一目瞭然なので、余計なものを買わなくなりました。猫のいる家に見えない、と言われることも多いです(笑)」