好きなものに囲まれて暮らす家  ギャラリーを作り アートと共に生活する

アートと共に暮らす家ギャラリーを作り
好きなものに囲まれて生活する

47㎡をギャラリー兼住居に

親戚が使っていた築43年の南浦和のマンションを、好きなものに囲まれて暮らすための空間にリノベーションした吉田有志さん。

「僕はアートが好きで、古道具や骨董品、陶芸家の作品や現代アート……、いろいろなものを集めています。9年間アメリカに住んでいたのですが、帰国後はしばらく実家で暮らしていて、ものは倉庫に預けていました。けれど、せっかくなら好きなものと同じ空間で生活したいと思い、ここをリノベーションすることに決めました」

そんな吉田さんの相談を受けた建築家の川島範久さんは、まず吉田さんが持っている古道具やアートのサイズを採寸し、ギャラリースペースの広さを決めたのだそう。

「47㎡の限られた空間に吉田さんがお持ちのものを置きながら、仕事や生活のためのスペースをどのように確保するかを考えました」と川島さん。
玄関とひと続きになった土間をギャラリーとし、一段上がった窓際のスペースを居住空間にした。玄関から靴を履いたまま入れるギャラリーなら、友人も気兼ねなく訪れることができる。

手前が吉田有志さんが集めた古道具や現代アートを飾るギャラリースペース。「うちにある自分が好きなものの多くは、gallery takamineで購入しています」。奥がリビングとベッドルームになっている。

手前が吉田有志さんが集めた古道具や現代アートを飾るギャラリースペース。「うちにある自分が好きなものの多くは、gallery takamineで購入しています」。奥がリビングとベッドルームになっている。

大正時代の金庫(gallery takamine)の上に載っているものは、イタリア製の暖炉の脚(miyawaki modern)

大正時代の金庫(gallery takamine)の上に載っているものは、イタリア製の暖炉の脚(miyawaki modern)。

ガラス職人が使っていた坩堝(るつぼ)の下は、江戸時代の箪笥。背面に継をした表情がおもしろい。壁にかけた板は、使い込まれた餅板(gallery takamine)。

ガラス職人が使っていた坩堝(るつぼ)の下は、江戸時代の箪笥。背面に継をした表情がおもしろい。壁にかけた板は、使い込まれた餅板(gallery takamine)。

ギャラリーとリビングを仕切るのは、半透明のポリカーボネート板と、柔らかな麻布のカーテン。いわば現代の障子の役割を果たす仕切りを通した光は、古道具を鑑賞するのにちょうどよい明るさになる。

ギャラリーとリビングを仕切るのは、半透明のポリカーボネート板と、柔らかな麻布のカーテン。いわば現代の障子の役割を果たす仕切りを通した光は、古道具を鑑賞するのにちょうどよい明るさになる。

布の素材感とギャラリー内の光量について、吉田さんと川島さんで頻繁に意見交換がされたそう(テキスタイル:NUNO 堤有希)。

布の素材感とギャラリー内の光量について、吉田さんと川島さんで頻繁に意見交換がされたそう(テキスタイル:NUNO 堤有希)。

ギャラリーの床は、玄関からひと続きになっているモルタルの土間。

ギャラリーの床は、玄関からひと続きになっているモルタルの土間。

光を再デザイン

居住空間は明るい窓側に面している。ギャラリーと居住空間の間を仕切る刺し子の布は取り外すことができる。布を外したり、麻布のカーテンの開け閉めで、ギャラリー内の明るさが変わる。

ここをリノベーションするにあたり、光も再デザインしたという。
「古道具を鑑賞するのに明るすぎる光は不要なので、ギャラリーは家の中央に配置しました。さらに半透明のポリカーボネート板と麻布のカーテンで明るさを調節しています」と川島さん。
天候や時間によってギャラリーの明るさが刻々と変わり、置いてあるものの見え方が違ってくるのも面白い。

「仕事はリビングのテーブルですることが多いのですが、ギャラリーにテーブルを置いてすることもあります」と吉田さん。好きなものに囲まれた生活を存分に楽しんでいる。

吉田さんらしいライフスタイルの実現と光のコントロールだけではなく、リノベーションにあたっては住まいの快適性の向上もこだわった。断熱遮音効果の高いペアガラスのサッシに替え、断熱ブラインドを取り付けた。床暖房も設置している。

テーブルを挟んだ反対側にベッドが置かれている。左側に立てかけてある古道具は、製作途中だと思われる囲炉裏の煙で黒く燻された状態で発見された雪かき!(gallery takamine)。

テーブルを挟んだ反対側にベッドが置かれている。左側に立てかけてある古道具は、製作途中だと思われる囲炉裏の煙で黒く燻された状態で発見された雪かき!(gallery takamine)。

カーテンを閉めると、リビングが独立した空間になる。

カーテンを閉めると、リビングが独立した空間になる。

古い紙の束もアートになる(古道具坂田)。刺し子の布は、漁師が床に敷いて、この上で網を繕っていた時に使ったものだそう(gallery takamine)。

古い紙の束もアートになる(古道具坂田)。刺し子の布は、漁師が床に敷いて、この上で網を繕っていた時に使ったものだそう(gallery takamine)。

使い込まれたアンティークのペタンクの球(miyawaki modern)。

使い込まれたアンティークのペタンクの球(miyawaki modern)。

古いセルロイド製の筆箱を飾る。

古いセルロイド製の筆箱を飾る。

客人のための小さな和室も

吉田さんのお宅には掛け軸の掛かる和室も設えている。
「まだ実現していませんが、Airbnbで海外のお客さんにお泊りいただければと思って作った客間です」

実は吉田さん、鹿児島県の肝付町への移住を進めている最中なのだそう。
「美しい海を臨める海岸線を求めて日本中を旅しました。そして見つけたのが肝付町です。宿泊施設を兼ねた家を建てる予定です。古道具と共に暮らす新しい生活のスタートにワクワクしています」

土間から1段上がった畳の間。正岡子規に師事した河東碧梧桐というアーティストの掛け軸と、弥生土器を飾った。手前は経机(すべてgallery takamine)。

土間から1段上がった畳の間。正岡子規に師事した河東碧梧桐というアーティストの掛け軸と、弥生土器を飾った。手前は経机(すべてgallery takamine)。

ペンダントライトのコードの長さを調節するフランス製の滑車(さる山)。

ペンダントライトのコードの長さを調節するフランス製の滑車(さる山)。

陶芸家の浜名一憲や、こばやしゆうの作品が食器棚に並ぶ。

陶芸家の浜名一憲や、こばやしゆうの作品が食器棚に並ぶ。

シンプルで必要十分なキッチン。手前のテーブルはフランス製のアンティーク。左奥の通路の先に浴室などのユーティリティがあり、そこからもギャラリーに出られるよう回廊式の動線を確保。

シンプルで必要十分なキッチン。手前のテーブルはフランス製のアンティーク。左奥の通路の先に浴室などのユーティリティがあり、そこからもギャラリーに出られるよう回廊式の動線を確保。

建築家の川島範久さんとはカリフォルニア大学バークレー校で知り合ったそう。図書館で偶然隣同士で座り、席を立つタイミングも同時だったとか。

建築家の川島範久さんとはカリフォルニア大学バークレー校で知り合ったそう。図書館で偶然隣同士で座り、席を立つタイミングも同時だったとか。(川島範久建築設計事務所HP : http://norihisakawashima.jp/)

集合住宅であっても、組合との相談の上、見た目が変わらなければ防音断熱機能に優れたガラス・サッシに替えてよいことになったとのこと。線路際に立つマンションだが、音はかなり静かになった。断熱効果に優れたハニカムブラインドも設置(環境設備設計協力:高瀬幸造)。

集合住宅であっても、組合との相談の上、見た目が変わらなければ防音断熱機能に優れたガラス・サッシに替えてよいことになったとのこと。線路際に立つマンションだが、音はかなり静かになった。断熱効果に優れたハニカムブラインドも設置(環境設備設計協力:高瀬幸造)。

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