インテリアデザイナーのリノベ異素材、異空間が調和する
わがままを叶えた家
やりたかったことを実験的に
築40年ほどのヴィンテージマンションを4、5年程前に購入、自らの設計でフルリノベーションしたインテリアデザイナーの久保淳也さん。
「長く住んできた地域で、見晴らしのいい開放感のある物件を見つけました。リノベ前だったので、比較的安く手に入れられたのもラッキーでした」。
2面に開口部のある角部屋。中学校の校庭に隣接する北側には、65㎡ものバルコニーがある。
「自宅兼事務所として使用するため、自分の作品として打ち出せるような空間づくりをしたいと思いました」。
玄関を入るとモールディングが施された廊下の向こうに、大空間のLDKが。
「LDKは天井を壊して高さを出し、逆に廊下はあえて低くしています。こうすると、狭い廊下を通って行った先にリビングが開け、広がりを持たせることができる。視覚的な効果もあるんです」。
面によって違う素材をアレンジ
3部屋分を壊したという広々としたLDKは、4面をそれぞれ違ったイメージで構成。
「違う素材を用いることで面白さもあるし、何年住んでも飽きがこない。リノベーションでいちばんやってみたいことでした」。
コンクリート打ちっ放しの北側、アンティークのレンガを用いた南側、サブウェイタイルを貼った東側、モルタルを金ごてで仕上げた西側。4面それぞれが違った表情を見せる。
「住んでみて違和感はないですね。人が来ても気づかれないことが多いですし、空間に自然になじんでいると思います」。
レンガはイギリスの本物のアンティークを使い、サブウェイタイルは見切りのところで中途半端に切れないよう、柱や間口の寸法に気を使った。細かなところまで計算したこだわりが、美しくて居心地のいい空間を生んでいる。
ディテールの処理にこだわり
「設計にいちばん時間がかかったのはキッチンとアイランドなんです」。
モルタルの天板を条件に造作した台は、作業しやすい高さと場所、それぞれの距離感を追求。
「食品を冷蔵庫から出し、シンクで洗って調理….、など流れを考えました。いちばんいい配置になったと思います」。
イメージは白+ステンレス+コンクリートでクリーン&シンプルに。アイランド下の棚には扉を設けず、キッチン台前の壁面には足場板を使ってオープン棚にし、見せる収納を選択。
「器もあえて見せて、雑多な感じにしたいと思いました。作業場のような、厨房のようなイメージですね」。
アンティークの武骨な照明が、インダストリアルな雰囲気を加えている。
「バスルームは防水をしっかりする必要があるので、使うものを選ぶのに悩みましたね」。
木製のアンティークのドアの向こうのバスルームは、サブウェイタイル+モルタルの壁にハニカムタイルの床。白を基調にした空間は、清潔感があって美しい。
「お風呂の扉もオーダーしました。閉鎖的にならないようにしたかったのですが、クリアなガラスにするのも抵抗があったので、ステンレスの枠に曇りガラスを採用しました」。
予算の関係で半分はモルタルになった壁面も、空間に変化がつき、工業用ランプやマリンランプと調和している。
海外で刺激を受ける
年に1回は必ず海外を訪れ、建築を見たりインテリアショップや骨董市を覗いたりするのだという久保さん。
「ちょっと秘境っぽいところに行くなど、今のうちはなるべくハードな旅をするようにしています。現地で色んな雑貨を買ってくのも好きですね」。
ダイニングテーブルやリビングのソファーなど、この空間に合わせてオーダーしたインテリアとともに、それらの雑貨が味わいを出している。
「使ってみたかった素材を取り入れて、好きなものを飾って空間を造りあげました。自分の作品としても、実験的な意味でも良かったと思いますし、満足感が高いですね」。