愛着ある収集品とともに “使い古した感じ”が心地よい
賃貸リノベーション
賃貸していた一室を取り込んで
東京都新宿区の住宅街に建つ、見た目はごく普通の賃貸マンション。柴山さん夫妻は、3年ほど前にご主人のお母さまが所有するマンションの一部を二世帯住居にリノベーションした。
もともとお母さまが101号室と201号室に当たる部分をつなげて住んでおり、数年前から夫妻と娘さんも一緒に暮らすようになったという。
「2階にリビングがあったんですが、母がミミ(愛犬)を抱きながら昇り降りするのが大変になってきて」とリノベーションのきっかけを振り返る奥さま。お母さまの家を間借りするような状態で手狭だったこともあり、隣室の102号室が空室となったタイミングでリノベを実施。101号室と102号室をつなげて子世帯のLDKを新設し、2階にあった水回りを移動することになった。
「結婚して20年経ったので、気分転換のような意味もありますね」と話すご主人。暮らしやすさを備えながら、夫妻の好きなものがぎっしり詰まった住まいが誕生した。
明確なイメージをカタチに
リノベーションの設計は、ホームページで設計事例を見て気に入った株式会社フィールドガレージに依頼することに。「話を聞きに行ってみたら、代表の原直樹さんが魅力的で、すぐ依頼を決めてしまいました」と奥さま。
一方、原さんも「柴山さんご夫妻は好みがはっきりしていて明確なイメージをお持ちだったので、とてもご提案しやすかったです」と話す。
原さんに「新し過ぎない感じ、使い古した感じに」というイメージを伝え、それに合う写真を見せてイメージを共有し、素材や仕上げを提案してもらった。
ナイジェル・ケーボンやフィルソンを始めとする海外ブランドを取り扱うアパレルOUTER LIMITSで営業の仕事に携わるご主人。ミリタリーやアウトドア系のファッションに精通し、趣味と仕事を兼ねて釣り関連のグッズやアンティーク雑貨などを長年収集している。
その膨大なコレクションを並べるため「リビングの壁一面を飾り棚にしたい」との要望を伝えたという。
そこで、撤去できない柱はレンガを貼って逆に空間のアクセントとして生かしつつ、柱の厚みを利用して棚を造作。壁を解体してみると鉄骨やブロックが出てくるという予想外のアクシデントがあったが、ブロックは白に鉄骨はグレーに塗装することで違和感なく調和させている。
一方、奥さまのこだわりはキッチン。以前はL字型だった配置を、コンロとシンクが分かれた2列型に。家族と話をしたりテレビを見たりしながら洗い物ができるようになった。
また、「茶色が大好きなので全部茶色にしたかったけど、レンジフードだけ好みに合う色がなくて。無理を言ってシルバーを茶色に塗ってもらいました」と奥さま。塗装屋さんに色が剥がれてしまうと反対されたが「剥がれても、それが味になる!」と、経年変化も楽しみにしているそうだ。
また、2階にあった浴室・洗面室を1階に移動するとともに、LDK側と玄関側からぐるりと回遊できるように配置。「2階に移動しなくても生活できるようになって、母も喜んでくれました。使い勝手が良くて便利です」と奥さま。LDKを新設したことでお母さまの生活スペースも広くなり、互いに良い距離感で快適に生活できるようになった。
家飲みが楽しい、“自分たちの城”
「使い古した感じ」の空間に、ご主人の収集した雑貨と1つ1つ個性のある家具が加わり、唯一無二の世界観を生み出している柴山邸。
「1つ2つはリアルな古いものを置かないと、“なんちゃって”の空間になりそうだったので、リビングの照明とテレビ台はアンティークショップで吟味しました」とご主人は話す。その言葉通り、工場で使われていたという大きな工業用の照明と、古い台車をアレンジしたテレビ台が、ひときわ存在感を放っている。
「リノベーションしてから、家飲みが増えましたね」と笑うご主人。ご主人は町内会や地元のソフトボール部の監督、奥さまはママさんバレーなど、夫妻揃って地域活動にも熱中しているそうで、近所の友人たちを気軽に呼べるようになったことも嬉しい変化だという。
「イメージ通りの家になったので“自分たちの城”という感じがします」と愛着深そうに部屋を見回すご主人の笑顔が印象的だった。