都心のヴィンテージスタイル溢れる色彩とアート
レトロな空間が今に蘇る
昔の学校の雰囲気に
料理研究家・小堀紀代美さんが暮らすのは、都心にあって落ち着いた佇まいを見せるヴィンテージマンション。
「引っ越しが多いのですが、ここ数年は古い低層マンションが落ち着く気分になっていて。ここは築40年経っていますが、自由に直してよい、ということだったので入居しました」。
床、壁を張り替え、キッチンの一部を壊してリフォーム。
「もともと好きで持っていたヴィンテージの家具とも合うようにコーディネートしました」。
料理教室のアトリエとしているダイニングは、昔の学校をイメージして。バウハウスで使われていたデッサン机、インドネシアの扉が加工されたダイニングテーブル…。経年の味わいを感じさせるインテリアに調和する空間を目指してリメイクした。
色がないと落ち着かない
床は、間に向きをかえた床材を1本、規則的に通す張り方に。
「ヘリンボーンがよかったのですが主流なので、ちょっと違った感じに…。自分で考えてみたのですが、現場で採寸して切って張ってもらいました」。
壁は、イギリスのサンダーソンの壁紙をベランダ側とキッチン側の2面に。
「前に住んでいた部屋は、赤い壁紙でクラシックなイメージだったので、ここはイエロー系の明るい感じにしたいと思いました」。
テーマカラーは、“イエロー・グレー・グリーン”。壁紙を張らない面はグレーで、幅木もモスグリーンで塗装した。同系色をベースにしているせいか、統一感が感じられる。
「色柄ものが好きなんです。真っ白でシンプルな空間ってどこか落ち着かなくて」。
部屋に合わせてオーダーで造ってもらった本棚にも、色とりどりの洋書を並べた。1冊1冊、色や高さを考えて並べ方を決めたのだそうだ。
「凹凸がないのも落ち着かないんです。造り付け収納ですっきり、というのは私には合わないですね。だから置き家具や棚などで空間に立体感を持たせています」。
本棚の上は、お気に入りの雑貨や、旅先で買ってきたものを、色のトーンや凹凸感を考えながらコーディネート。何気ないディスプレイも、実はしっかり計算されている。
陽光さす明るいキッチン
「実は片づけが苦手で」と小堀さん。たくさんの生徒さんが訪れるアトリエは、カトラリーや食器などの定位置を決め、“背中を押されるように”収納するのだそう。
「収納棚の中も、開けた時に色がなくて無機質なのが嫌なんです。余った壁紙を、サイズを合わせて切って貼りました」。細やかな工夫が、あちこちに行き渡る。
キッチンは、もともとのイエローのシンクや、コンロ側の壁のタイルはそのままに。作業台はワインセラーとダストボックスを脚にして天板をかけて作成。こちら側の壁は、収納をとってタイル貼りにした。テーマカラーに合わせて塗ったグレーのドアには、アンディ・ウォーホルのポスターを飾る。
「頂いたものなども、ジャンルにこだわらず何でも飾ってみたりしますね。こうでなければいけない、というのはないんです」。そんな感性が、明るく楽しい空間を生んでいる。
様々な刺激をミックスして
「夫婦揃ってインテリア好きなんです。ミッドセンチュリー、イタリアンモダンなど色々はまって、引っ越ししては部屋の雰囲気を変えてきました。でもここ数年はそれがミックスされて落ち着いてきた感じですね」。今は北欧テイストをクラシカルに取り入れ、そこに黒をミックスしたスタイルが気に入っている。
「本棚をオーダーする時、黒のアイアンを考えたのですが、インダストリアルになりすぎるかなと。女の子っぽいガーリーな感じに少しハードな黒を加えるのが好きですね」。
静かな書斎のようなアトリエ空間を、イサムノグチの黒のソファーが引き締める。
「ベルリンの小さなカフェめぐりが好きなんです。かっこいいだけでなく、ものに色があってちょっとガーリー。旅先でインスピレーションを受けることが多いですね」。
部屋の雰囲気に合わせて、アートを飾って楽しむことも忘れない。色んな刺激がミックスされ、小堀さん流のスタイルを生んでいるようだ。