メゾネットのリノベーション  民藝、北欧、アンティーク…… 吟味を重ねた部屋作り

メゾネットのリノベーション民藝、北欧、アンティーク……
吟味を重ねた部屋作り

大谷石を室内に使う

ミッドセンチュリーの家具や北欧デザイン、ヨーロッパのアンティーク、そして日本をはじめとするアジア、アフリカの民藝……それらが融合したインテリアと、『Landscape Products』がリノベーションを手がけた内装が、しっくりと調和を見せる。

この家の並外れたセンスの主は、『BEAMS』にお勤めの和田健二郎さんだ。

5年前に 築27年だったマンションを改装。4LDKのメゾネットを2LDKに変更し、奥様の求示加さんとお嬢さん、愛犬の、3人+1匹で暮らしている。

「家具は人が使った形跡のあるような、古いものが好きです」と和田さん。 
「家具は買い替えをしたくないので、欲しいものが出てくるまで我慢して、気に入ったものを少しずつ買っています」
たとえば、タピオ・ウィルカラのローテーブルは、いいものが見つかるまで、我慢してテーブルなしの生活をしていたそうだ。

アンティークのドア、大谷石の壁面、床と天井のオーク材。質感と色の絶妙なバランスが素晴らしい。手前のローテーブルはタピオ・ウィルカラのもの。

アンティークのドア、大谷石の壁面、床と天井のオーク材。質感と色の絶妙なバランスが素晴らしい。手前のローテーブルはタピオ・ウィルカラのもの。

イギリスの100年前のキャビネット。高さのあるキャビネットを分割して使っている。こちらは上部分。天地を逆に使用。

イギリスの100年前のキャビネット。高さのあるキャビネットを分割して使っている。こちらは上部分。天地を逆に使用。

イスの後ろの丸が目を引くオブジェは、アフリカに住む民族のお面。左手前のスツールも、木をくりぬいて作るアフリカの民族家具。

イスの後ろの丸が目を引くオブジェは、アフリカに住む民族のお面。左手前のスツールも、木をくりぬいて作るアフリカの民族家具。

こちらがイギリスのキャビネットの下半分。左のエアプランツのスタンドは、25年前に一目ぼれして購入したもの。

こちらがイギリスのキャビネットの下半分。左のエアプランツのスタンドは、25年前に一目ぼれして購入したもの。

日本の民藝とモダンデザイン、アンティークがセンスよく融合している和田邸。

日本の民藝とモダンデザイン、アンティークがセンスよく融合している和田邸。

大谷石の壁と棚。「室内に大谷石を使うのは、『Landscape Products』でも初めての試みだったそうです」と健二郎さん。

大谷石の壁と棚。「室内に大谷石を使うのは、『Landscape Products』でも初めての試みだったそうです」と健二郎さん。

背の高い家具は置かない

家具をひとつひとつ吟味していることの他に、「背の高い家具は置かない」ことも、和田流の家具コーディネイトのポイントだそうだ。

たとえば、イギリスのアンティークの背の高いキャビネットは、上下を分けて別々の場所に置いている。
「上の部分は上下を逆にして置きました。引き出しも逆に入れて(笑)」 
キャビネットの上には、お気に入りのオブジェを飾っている。

キッチンは全面的にリノベーション。サンフランシスコの老舗陶器メーカー、ヒースセラミックにオーダーした味わい深い色のタイルを貼った。

「食器の収納家具を制作するより、キャビネットを買って置いたほうがコストが抑えられることがわかったので、大型の水屋箪笥を探しました」と求示加さん。

ハンス・ウェグナーのダイニングテーブルと、木目が美しいフィンランドのアンティ・ヌルメスニエミのサウナスツール。

ハンス・ウェグナーのダイニングテーブルと、木目が美しいフィンランドのアンティ・ヌルメスニエミのサウナスツール。

大正時代末の水屋箪笥。上に置いてあるのは、パキスタンのパンケース。鉄鍋のSTAUBは、ラックに収納。

大正時代末の水屋箪笥。上に置いてあるのは、パキスタンのパンケース。鉄鍋のSTAUBは、ラックに収納。

「オーダーしたヒースセラミックは、ところどころに刻印が入っています」

「オーダーしたヒースセラミックは、ところどころに刻印が入っています」

和田宅では植物との暮らしも楽しんでいる。アンティークのベンチの上に、お気に入りのグリーンをまとめて飾る。

和田宅では植物との暮らしも楽しんでいる。アンティークのベンチの上に、お気に入りのグリーンをまとめて飾る。

階段の踊り場には、アアルトの三脚スツールの上に小さなグリーンをひとつ。

階段の踊り場には、アアルトの三脚スツールの上に小さなグリーンをひとつ。

イギリスのアンティークのフラワースタンド。約100年前のもの。テラスは手すりの部分にも木を貼った。

イギリスのアンティークのフラワースタンド。約100年前のもの。テラスは手すりの部分にも木を貼った。

キッチンの窓には小さな鉢を並べて、グリーンの姿形のおもしろさを楽しむ。

キッチンの窓には小さな鉢を並べて、グリーンの姿形のおもしろさを楽しむ。

一緒に楽しみながらリノベーション

「『Landscape Products』にリノベーションをお願いしてほんとによかったです。僕の好みもわかっていただいていたので、出してくださるどのアイディアにもワクワクしました。たとえば玄関に飾っている陶板ですが、組み合わせて額装してはいかがですか?というアイディアには唸りましたね」

リビングの床に段差をつけ、壁に大谷石をあしらった棚のある一角は、和田家の顏とも言える場所。大谷石は、玄関~廊下~リビングと連続している。室内に大谷石を使う試みは『Landscape Products』でも初めてだったのだそう。

「小鹿田焼の洗面ボウルを設置する洗面台の天板は、問屋まで同行させていただきました。洗面ボウルが入るサイズに穴を開けてもらい、不要になった部分はまな板に加工したり。そういった作業のすべてを楽しめたリノベーションになりました」

廊下と玄関の腰壁にも大谷石を貼った。奥に見える「玄関に飾っている陶板は、9枚を組み合わせて額装したものです」

廊下と玄関の腰壁にも大谷石を貼った。奥に見える「玄関に飾っている陶板は、9枚を組み合わせて額装したものです」

大分の小鹿田焼を洗面ボウルに。天板をボウルのサイズに合わせてくりぬき、洗面台に。

大分の小鹿田焼を洗面ボウルに。天板をボウルのサイズに合わせてくりぬき、洗面台に。

「下駄箱は造作するより買ったほうが安かった。公民館で使われていた下足入れです。把手は自分で付け替えました」

「下駄箱は造作するより買ったほうが安かった。公民館で使われていた下足入れです。把手は自分で付け替えました」

フックひとつにもこだわりを持ってチョイス。カタチと、使い込まれた色が美しいフックは洗面所に。

フックひとつにもこだわりを持ってチョイス。カタチと、使い込まれた色が美しいフックは洗面所に。

小さなパーツだけれど存在感を放つフックは、廊下でコート掛けに。

小さなパーツだけれど存在感を放つフックは、廊下でコート掛けに。

DIYで緩急のバランスを

コストを抑えるために、自分たちでやれる部分はDIYを楽しむことにしたそう。
健二郎さんと求示加さんのデスクと、お嬢さんの勉強机は、BISLEYの引き出しにホームセンターで買った天板を渡し格安で制作。寝室の帽子掛けもアンティークを真似て手づくりした。

「壁の塗装は自分たちでやりました。青山の『ベンジャミンムーアペイント』のショールームには何度も足を運びました。おかげでペンキにはずいぶん詳しくなりました(笑)」

値の張る家具を思い切って買う一方で、自分たちでできる範囲のDIYをしながら部屋作りを楽しむ。和田さんの審美眼の高さも見事だけれど、どこに力を注いでどこで抜くか、その緩急のバランスの良さが、センスのいい和田邸を作っているのだろう。

アームの曲線と美しいくびれを持つ、20世紀を代表するアメリカの住宅建築家ノーマン・チャーナー作のチャーナーサイドチェア。

アームの曲線と美しいくびれを持つ、20世紀を代表するアメリカの住宅建築家ノーマン・チャーナー作のチャーナーサイドチェア。

「アンティークの帽子掛けを真似てDIYしたものです。棒が外せるので使わないときはコンパクトになります」

「アンティークの帽子掛けを真似てDIYしたものです。棒が外せるので使わないときはコンパクトになります」

「BISLEY」の引き出しに天板を渡してデスクに。棚の上の布のコレクションは奥様のものだそう。

「BISLEY」の引き出しに天板を渡してデスクに。棚の上の布のコレクションは奥様のものだそう。

「自分たちで最初に塗ったのがブルーとピンクの壁。下手ですが家族で力を合わせて塗ったので思い出深いコーナーになりました」

「自分たちで最初に塗ったのがブルーとピンクの壁。下手ですが家族で力を合わせて塗ったので思い出深いコーナーになりました」

「10数年前にイームズ展でレッグスプリントを吊った展示を見てから、いつか自分の家でも吊りたいと思っていました」

「10数年前にイームズ展でレッグスプリントを吊った展示を見てから、いつか自分の家でも吊りたいと思っていました」

パーテーションに使っている中国の暖簾の右は、貴重な久留米の「お城絣」を額装したもの。

パーテーションに使っている中国の暖簾の右は、貴重な久留米の「お城絣」を額装したもの。

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