フリッツ・ハンセンのプライウッドチェアミニマルな美しさに心惹かれる
アルネ・ヤコブセンの名作
アルネ・ヤコブセンのアイコニックな名作、アリンコチェア・セブンチェア・グランプリチェアを特集。1952年〜57年という短い期間に発表された3脚は、誕生から60年以上経った今でもタイムレスな美しさを放ち、ミッドセンチュリーのアイコン的存在として世界中で愛用され続けている。
Arne Jacobsen
1872年に創業したデンマークの家具メーカー、フリッツ・ハンセン社とアルネ・ヤコブセンの協働は1934年にスタート。後に、創業者の孫によって確立された曲げ木技術に着目したヤコブセンが1952年に成形合板のアリンコチェアを開発し、続いてセブンチェア、グランプリチェアが誕生した。
《ANT™》
1952年、アルネ・ヤコブセンが設計したノボノルディスク社の社員食堂のためにデザインされた「the ANT™(アリンコチェア)」。ヤコブセンが手がけた最初の成形合板によるスタッキングチェアで、丸テーブルにたくさん並べられるよう3本脚に設計された。丸い背と座に細いくびれが印象的な座面は、背のくびれが程よい弾力を生み、心地よく体を支えてくれる。アリンコチェアはフォルムが蟻に似ていることに由来。3本脚は、座った時に人の脚が2本加わることにより、合計5本脚で安定感を満たすという独自のコンセプトで生まれた。座り方によっては不安定に感じることがあるものの、個性的な曲線を描く座面と3本脚がアリンコチェアの魅力。2016年のリミテッドエディションとしてデザインされたフリッツ・ハンセンチョイスは、グレーに染色したオーク合板と、パウダーコーティングを施したブロンズ製の脚で仕上げられたノスタルジックな雰囲気。
《SERIES 7™》
アリンコチェアの開発から3年、1955年にさらなる進化を遂げた椅子として「SERIES 7™(セブンチェア)」が誕生。スタッキングが可能な4本脚のセブンチェアは、ラミネート加工技術の集大成ともいわれ、ヤコブセンはこの加工技術に耐久性のある美しいフォルムの完璧な椅子を創り出す可能性を見出した。アリンコチェアよりも一回り大きい背と座で、体に沿うように緩やかなカーブをつけて座り心地を追求。デンマーク人アーティスト、タル・アールによる「SERIES 7™ MONOCHROME(セブンチェア モノクローム)」は、シート・レッグ・レッグキャップすべてを同色に仕上げたコレクションで、モノクロームはギリシャ語の「mono(ひとつ)」と「chromo(色)」に由来。2017年のフリッツ・ハンセンチョイスは、深い色合いのメルローと落ち着いたヌードの2色に、22金のローズゴールドメッキを施した脚の組み合わせ。日本の春に咲くサクラの花のフェミニンな色彩と、デンマークのミニマルなフォームをイメージして仕上げられたもので、和の空間にも似合いそうな品格を感じる。マスターピースとしてももちろんのこと、新たな表情やアート感覚で楽しめるセブンチェアにも注目。
《Grand Prix™》
アリンコチェア、セブンチェアに次いで発表された「Grand Prix™(グランプリチェア)」。1957年、デンマーク工芸博物館の春の展示会で初公開され、同年ミラノ・トリエンナーレでグランプリを獲得したことから、グランプリチェアと名付けられた。当時は座面と脚ともに成形合板によるもの。座面は体が沿うようにカーブがつけられ、脚は軽やかに見えるよう繊細な形状に仕上げられた。その後、一時期生産中止になり、2008年にクロームレッグで復刻、2014年にはオリジナルのウッドレッグで復刻した。輪郭が強調されたミニマルなフォルムが特徴のグランプリチェアは、ミッドセンチュリー期のデザインやアートを感じることができる名作として多くの人を魅了し続けている。
世界初、3次元曲面成型合板技術を確立
1920年代初頭、フリッツ・ハンセン社は軽量で丈夫な家具作りを可能にするスチーム加工による曲げ木技術を確立。その画期的な曲げ木技術に着目したアルネ・ヤコブセンが、世界で初めて背もたれと座面を一体化させた三次元曲面成形合板のアントチェアを開発し、改良を重ねながらセブンチェア、グランプリチェアを誕生させた。シェルは9枚の薄い積層合板を縦目、横目と交互に重ねて構成し、3Dプレスマシーンにて加圧・加熱して立体成形する。仕上げは、木目を生かしたナチュラルウッド、木目を生かしつつカラー塗装で仕上げたカラードアッシュ、木地に目止めをし、木目が見えないラッカーの3パターン。
フリッツ・ハンセン青山本店
03-3400-3107
東京都港区北青山3-10-11 1F・B1F
商品価格は、消費税別の本体価格です。