インテリアの達人が私物を公開 designshopオーナー、 森博さんの愛用品

インテリアの達人が私物を公開designshopオーナー、
森博さんの愛用品

インテリアやデザイン関係者の私物公開企画がスタート。第一回目は、南麻布のインテリアショップ「designshop」のオーナー、森博さんにお話を伺った。ヴィンテージの食器や名作カトラリー、南部鉄器、漆器、ウォッチ&クロックなど、幅広くご紹介。確かな審美眼を持つプロが選んだ愛用品を参考にしてみて。

ヴィンテージの食器

森さんが長年愛用しているヴィンテージのコブレットとコーヒードリッパー。南部鉄器のコーヒードリップポットは、宮伸穂さんのかっこいいデザインに惹かれて即決で購入したというお気に入り。

森さんが長年愛用しているヴィンテージのコブレットとコーヒードリッパー。南部鉄器のコーヒードリップポットは、宮伸穂さんのかっこいいデザインに惹かれて即決で購入したというお気に入り。

ヴィンテージのカイ・フランクコレクションをご紹介いただいた。ヴィンテージアイテムとも調和する現行品のタンブラーを使われているところも印象的。ダークグレーのカルティオタンブラーはdesignshopでも取り扱っている。

ヴィンテージのカイ・フランクコレクションをご紹介いただいた。ヴィンテージアイテムとも調和する現行品のタンブラーを使われているところも印象的。ダークグレーのカルティオタンブラーはdesignshopでも取り扱っている。

ヴィンテージの器類は、その年代の刻印も見どころ。TEEMAの刻印は、年代によりすべてデザインが異なる。

ヴィンテージの器類は、その年代の刻印も見どころ。TEEMAの刻印は、年代によりすべてデザインが異なる。

20年ほど愛用しているコブレット。森さんの手にちょうど収まるサイズ感もいい。

20年ほど愛用しているコブレット。森さんの手にちょうど収まるサイズ感もいい。

森さんがご自宅で愛用中の器や花器。ヴィンテージのコブレットやオードブルプレート、フラワーベースを見せていただいた。
「カイ・フランクが好きなのでカイ・フランクのイッタラプロダクツは多数愛用していますが、その中でもarabia/teemaのゴブレットは20年前に当店で扱っており、ミニマムなデザインが好きで当時購入。おもに、コーヒーを飲む際に長年愛用しています」コブレットは現在廃盤になっているが、カイ・フランクデザインのマグは、designshopでも購入可能。
「コーヒードリッパーとフラワーベースもarabiaのもの。元スタッフが運営している、北欧雑貨店kirpputoriで16年前に購入しました。南部鉄器釜定、宮伸穂さんデザインのコーヒードリップポットと共に愛用しています」アイボリーのフラワーベースは、フォルムとデザインのバランスが絶妙。花を挿さなくても絵になるオブジェのような美しい佇まいに惹かれる。
「カイフランクのオードブル、フラワーベースも20年ほど愛用しており主に見て楽しんでいます 」ピラミッドデザインが目を引くオードブルプレートは、白い器に受ける光と影も情緒的。カルティオのブルーのフラワーベースは、現在は生産していないレアアイテム。カルティオのカラフェやタンブラーは、現行品を扱っている。

デザインに惹かれたカトラリー

森さんの食卓を彩る「AJカトラリー」。アルネ・ヤコブセンの名作として知られている。

森さんの食卓を彩る「AJカトラリー」。アルネ・ヤコブセンの名作として知られている。

五十嵐威暢デザインの「TI-1カトラリー」。

五十嵐威暢デザインの「TI-1カトラリー」。

未来的なデザインや丸いフォルムが特徴的なカトラリーは、実際に使ってみると、使い勝手もよく機能性も抜群。普段使いとして愛用されているAJカトラリーとTI-1カトラリーについて伺った。
「1957年、アルネヤコブセンによってデザインされたAJカトラリーは、デンマーク王室御用達GEORG JENSEN社で製造されており、18年前に購入。2001年宇宙の旅でも使われた未来的で上品なデザイン。そして、70年近く経った今でも他のカトラリーとは一線を画する究極のデザインと言っても過言ではないでしょう。自宅ではステーキやサラダ、カレーなど普段使いで使っています」
「1989年にデザインされた五十嵐威暢のカトラリーは、丸いナイフが特徴的でその新しさに惹かれ15年ほど前に購入しました。全体的にグラフィカルに、丸をモチーフにデザインされたと伺っており、当時ニューヨークのMoMAでもかなり売れたと聞いています。ナイフは丸いが刃がついているので使いやすく、フォークも刃の部分が長くパスタがしっかり巻け、スプーンも丸だけにすくいやすく、スープを飲む際に最適です」と森さん。個性的なデザインながらも、使いやすさも備わっているところが印象的。ともに、現行品のため現在も購入可能だ。グッドデザインのカトラリーが気になる方は、チェックしてみて。

色の変化を楽しむ削り箸

上が新品。下が森さんの愛用品。10年の経年変化で美しい黒に。

上が新品。下が森さんの愛用品。10年の経年変化で美しい黒に。

次に見せていただいたのは、10年間愛用しているお箸。一見繊細なつくりに見えるが、実は丈夫で、毎日使い続けても欠けることもないそう。
「熊本の工人舎、福山さんがつくる削り箸は究極の手仕事で1本1本削って仕上げていきます。マレーシアのウリンという硬い木の総称、鉄木を使っています。私が愛用しているのは無塗装で、とにかく先が細く硬いので耐久性があります。茶から限りなく黒に変わっていく様も魅力的で、シンプルなのでどんな食器にも合わせやすい」森さんにお話を伺って、筆者も削り箸を購入。経年変化が楽しみだ。

観賞用として楽しむ、
柳宗理の土瓶

張り出した耳のような曲面が個性的で繊細な佇まい。白磁の白さと籐の持ち手のコントラストにも惹かれる。

張り出した耳のような曲面が個性的で繊細な佇まい。白磁の白さと籐の持ち手のコントラストにも惹かれる。

森さんが大切ししている柳宗理の土瓶。1957年に発表し、ミラノ・トリエンナーレを受賞した名作だ。
「柳宗理デザインの商品は、designshopでもフルラインナップ扱っていますが、その代表作として、バタフライスツールや、この熊本の天草でつくられた白磁の土瓶が取り上げられます。私はこちらの土瓶を20年前に購入。以前はお茶を入れていましたが2,3年前から観賞用として飾っています。というのは、型が古くなり、しばらく生産ができないと聞きました。生産再開までは大事に飾っておこうと思っています」

普段使いの漆器

「入れ子の美しさに惹かれ購入しました」と森さん。

「入れ子の美しさに惹かれ購入しました」と森さん。

6つの器が入れ子になった応量器。designshopでは現在、黒のみを取り扱う。

6つの器が入れ子になった応量器。designshopでは現在、黒のみを取り扱う。

応量器を日々の食卓に取り入れられている森さんに、普段使いの様子を伺った。
「こちらの応量器は20年程前に購入。以前は朱色と黒を扱っていましたが、現在は黒のみを販売しています。応量器は曹洞宗の総本山 永平寺で、修行僧が食事のために使う道具。6つの器が入れ子になっており、その美しさに惹かれ購入しました。よく使うのは一番大きな器で、お蕎麦を食べています。また、飯椀、汁椀、小鉢にごはん、みそ汁、おかずを盛り付けて、時折愛用しています」漆器は手に持っても熱くなく、保温効果もあるため、そば椀にぴったり。また、繰り返し使うことで、深みのある美しい艶が出てくるので、経年も楽しめる。

食卓にも並べられる
美しいステンレスボウル

「このボウルの角度が絶妙」と語る森さん。

「このボウルの角度が絶妙」と語る森さん。

森さんが調理にも器としても、長年愛用しているステンレスボール。柳宗理が1960年にデザインを手掛けた名作だ。
「こちらの柳さんのボウルも25年ほど前に購入して使っています。綺麗に入れ子になり、ボウルの角度、及びデザインが美しいところに惹かれました。サラダなど冷製のものなどは、調理してそのまま食卓に出したりもしていますし、そのまま蓋をして冷蔵庫に保管もしています」13cm・16cm・19cmと、使い勝手のいいサイズ感。耐久性に優れ、マット仕上げなのでキズも目立ちにくい。

南部鉄器

左が10年愛用中のシャロゥパン。

左が10年愛用中のシャロゥパン。

南部鉄瓶の新姥口糸目と釜定のドリップポット。ドリップポットのハンドルは木製のため素手で使え、IHでの使用も可能だ。

南部鉄瓶の新姥口糸目と釜定のドリップポット。ドリップポットのハンドルは木製のため素手で使え、IHでの使用も可能だ。

宮伸穂さんが描いたドリップポットの図面。

宮伸穂さんが描いたドリップポットの図面。

お皿の形状と表面のグラフィックに惹かれた、釜定のモダンな鉄皿。

お皿の形状と表面のグラフィックに惹かれた、釜定のモダンな鉄皿。

なかでも思い入れが深い愛用品が、釜定の南部鉄器。森さんは南部鉄器の産地として知られる岩手県盛岡市のご出身。2020年には南部鉄器の魅力を伝える書籍「南部鉄器のある暮らし 釡定の仕事」を出版ほどの愛用者である。tokosieでも釜定を特集した。
「シャロゥパンは、とにかくかっこいいデザインに惹かれ10年前に購入しました。釜定代表の宮伸穂さんが東京芸大大学院の卒業制作でデザイン。その後、人気スタイリストの堀井和子さんが愛用され、美味しいパンケーキを焼くレシピを書籍の中でも紹介しました。わたしは家族でパンケーキやクレープなどを焼いています。少し錆びてしまいましたが…」
「南部鉄瓶の新姥口糸目は当店で『南部鉄瓶展』を開催した15年前の2008年に購入しました。鉄瓶の肌のデザインは「肌はだ」「霰あられ」などのデザインが主流ですが、この「糸目いとめ」という装飾デザインに惹かれて購入しました」
「2018年に開催した『釜定 南部鉄器ケトルとコーヒー展』で宮伸穂が手掛けたドリップポットを発表。迷わず即決で購入しました。お湯を沸かしてお茶などを飲む際は鉄瓶。コーヒーをドリップする際はドリップポットを愛用しています。鉄瓶・ポットでお湯を沸かすとまろやかになります。そのまろやかさに合うコーヒー豆をバリスタの三木隆真さんが書籍で紹介しています」伝統的な鉄瓶は、肌のデザインがこだわりのポイント。釜定のモダンなドリップポットは、かっこいいデザインに一目惚れされたそう。宮伸穂さんが何度も試行を重ねて仕上げたドリップポットは、直線的なモダンデザインが魅力。
「鉄皿は、皿の形状と表面のグラフィックに惚れ、10年前に購入しました。通常はキーやウォッチなど、普段使うものを置いたりしています。水気に気を付けて愛用されるのであれば食卓のお皿として、または、水気のない和菓子などを盛り付けてもいいかもしれませんし、お香や香りものを置いてもおしゃれかもしれないですね」と森さん。南部鉄器は調理道具だけでなく、インテリアアイテムとしてもオススメだそう。秋にはdesignshop azabuと釜定本店で『釜定 南部鉄器あかりと結晶のかたち展』を同時開催し、ペンダント照明、花器、結晶箱の新作が発表された。

愛用のウォッチ&メガネ

左から内田繁デザインのWRIST WATCH、五十嵐威暢デザインのeki watch。森さんが普段から掛けているコンスタンティン・グルチッチデザインのメガネとも好相性。

左から内田繁デザインのWRIST WATCH、五十嵐威暢デザインのeki watch。森さんが普段から掛けているコンスタンティン・グルチッチデザインのメガネとも好相性。

五十嵐威暢デザインのリーディンググラス。

五十嵐威暢デザインのリーディンググラス。

「普段はeki watch30mmの黒で、時間をあまり気にしない日は内田繁氏の時計をつけています」

「普段はeki watch30mmの黒で、時間をあまり気にしない日は内田繁氏の時計をつけています」

森さんが普段から身に着けているウォッチとリーディンググラスを見せていただいた。ともにご自身でプロディースを手掛けた思い入れの深いもの。
「eki watchは、アーティスト五十嵐威暢氏が札幌駅のためにデザインが原型。もともとは大手メーカーから発売したものですが、デザインのクオリティを上げたいと、五十嵐氏から相談を受けて、designshopでプロデュースしました。小さな30mmは、2006年の発売と同時に購入。このときにベルトだけ別仕様にしました。大きな37mmも2017年の発売と同時に購入し愛用しています。もうひとつのウォッチは、五十嵐氏と仲が良かったインテリアデザイナーの内田繁デザインのWRIST WATCH。スイスの時計メーカー、ピエール・ジュノー製です」eki watchは、サイズやカラーバリエーション豊富に展開中。
「1995年に発表された五十嵐威暢デザインのリーディンググラスの復刻版を、2018年にdesignshopがディレクションし、発売しました。フレームのないどなたにも似合うデザインです。親交のある五十嵐氏の作品や資料が収蔵された『五十嵐威暢アーカイブ』が11月にオープンしました。designshopでも取り扱うアイテムを含め、5,000点もの収蔵作品が閲覧できます」

一目惚れしたクロック

一目惚れして購入した、倉俣史朗デザインの掛け時計。ミニマムな佇まいに惹かれる。

一目惚れして購入した、倉俣史朗デザインの掛け時計。ミニマムな佇まいに惹かれる。

五十嵐威暢デザインの掛け時計eki clock25㎝と置き時計eki clock9.5cmは、ともに森さんがプロディースを手掛けたもの。

五十嵐威暢デザインの掛け時計eki clock25㎝と置き時計eki clock9.5cmは、ともに森さんがプロディースを手掛けたもの。

マットな質感が美しい、アルミのフレーム。

マットな質感が美しい、アルミのフレーム。

ご自宅で実際に使われている掛け時計と置き時計をご紹介。
「置き時計のeki clock 9.5cmは、アーティスト五十嵐威暢氏が札幌駅のためにデザインした時計を見て、わたしがプロダクト化しました。2006年にdesignshopから限定数発売し、自分が開発した商品だったので、嬉しさのあまりすぐ購入し、17年ほど使っています。自宅では玄関、洗面に置いています。掛け時計のeki clock 25㎝は、2016年にサイズとメーカーを変えて再開発。7年ほどリビング、キッチンで使っています。また、五十嵐威暢氏とも仲が良かった倉俣史朗氏の掛け時計は、書籍『デザインの原形』で紹介されているのを見て、一目惚れして購入しました。現在は寝室で使っています。現在、世田谷美術館で開催されている『倉俣史朗のデザイン』も早速鑑賞。とても素敵でした」デザインに造詣が深い森さんは、商品開発も手掛ける。気になるアーティストの展覧会などにはマメに足を運んで刺激を受けているそう。

かつてはドイツの企業が自社ビルとして使用していた歴史的な建築「白ビル」の1階に店舗を構えるdesignshop東京都港区南麻布 2-1-17 白ビル1F

かつてはドイツの企業が自社ビルとして使用していた歴史的な建築「白ビル」の1階に店舗を構えるdesignshop東京都港区南麻布 2-1-17 白ビル1F

南部鉄器をはじめ、国内外のデザインプロダクトを扱う。

南部鉄器をはじめ、国内外のデザインプロダクトを扱う。

今回、愛用品をご紹介いただいたdesignshopオーナーの森博さん。

今回、愛用品をご紹介いただいたdesignshopオーナーの森博さん。

Ranking Interior