インテリアの達人が私物を公開ファッションプレス、
米田沙良さんの愛用品
H.P.FRANCEでプレスを担当している米田沙良さんのご自宅に伺い、愛用品を拝見。米田さんが暮らすのは、祖父母が住んでいた家をリノベーションした部屋。代々受け継がれてきた家具や絵画、食器類をはじめ、それに合わせてチョイスしたアートやインテリアをご紹介いただきました。
リビングで一際目を引くのが、真鍮のウォールミラー。ユニークで特徴的なデザインが魅力だ。米田邸は引っ越しの際にリノベーションを行い、リビングの一面だけブルーの壁紙を貼ってアクセントウォールを取り入れた。そして、リビングに鏡があると部屋が広く見えることから、ウォールミラーを掛けることにしたそう。
「休日にインテリアショップ巡りをしていた時、たまたま通りかかった外苑前のKAREの1階のウィンドウでこのミラーを見つけて一目惚れ。即決できる価格ではなかったので、とりあえず安価な丸いミラーを三つくらい購入し再現できないか試みましたが、やはり全然雰囲気が違ったので、思い切って購入しました!」
「結果的に、リビングに入った時に一番目につくアクセントとなりゲストの皆に好評で、昼間は庭の緑が鏡に映ってとても気持ちが良いです」
ミラーのフレームに合わせて、コンソールテーブルやBang & Olufsenのスピーカーもゴールドで揃えられている。
アメリカの老舗ファニチャーブランド「ドレクセル」の家具。今回は、代々受け継がれてきた家具をモダンにアレンジするコツも伺った。
「母方の祖父母が50年前にこの家を建てた時、日本橋三越でドレクセルヘリテイジの家具を揃えたそうです。ドレクセルは祖母の好みだったそうで、クラシックで飽きのこないデザインが気に入ったと聞いています」引っ越してくるときも、家具はそのまま置いてあり、当初は処分も考えたという。
「せっかくならこのクラシックな家具を基調にもう少しモダンな要素もプラスして、自分流にコーディネートできないか考えました。特にドレッサーは、祖母がいつもお気に入りのアクセサリーをしまっていたという思い出もあり、私も懐かしい気持ちになりながら毎日使っています」重厚感のあるドレッサーには、ジュエリーボックスに加えて、ユニークなオブジェやアメリカのアーティストによるペーパーフラワーを合わせている。ペーパーフラワーを挿したオブジェのようなピンクの花瓶は、オランダの「アンドクレベリン」。モダンなデザインをミックスするのが米田さん流だ。
「ドレクセルのチェアは、もともと重厚感ある赤の張地でしたが、リビングのブルーの壁紙に合わせてブルーに張り替え。家具の雰囲気を壊さないダマスク柄と色味が気に入っています。ドレクセルを手がけた実績があるSTANLEY’Sに張り替えをお願いしました」チェアの張地を変えることで、印象がガラッと変わるのが印象的。
ソファやクッションなどのファブリックは、すべて柄物なのに、その空間は上品。「柄on柄のコーディネートが好きなので、互いが喧嘩しないギリギリのラインを攻めています(笑)花やダマスク柄、唐草模様など植物風の絵柄が好みなので、何となく統一感は出せているかもしれません」
無地のソファが多いなか、柄物のソファになかなか出会えなかったとのこと。そんな中でフクラのプリントソファをたまたま見つけ、一目惚れして購入した。クッションは旅先を含め、少しずつお気に入りを集めた。「イタリアのスカーフブランド「マンテロ」のクッションは、ブルーとイエローのリバーシブル。ソファのカラーにぴったりです。タイシルクの「ジム・トンプソン」は、タイ旅行の際に購入。サンフランシスコの老舗百貨店「ガンプス」のクッションは、レザーとファーの細かい素材使いと、さりげないグラデーションが気に入っています。ブルーのクッションは「フクラ」でソファと色違いでオーダーしました」
ブルーを基調としたベッドルームには、コーラル&タスクの刺繍クッションをチョイス。「コーラル&タスクはアッシュ・ペー・フランスで長らく展開しているファブリックブランド。コーディネートしやすいインディゴシリーズと、鳥モチーフがお気に入りです。我が家は全体的に抽象的な柄のアイテムが多いので、この動物モチーフのクッションが、ほどよいアクセントになっています」
リビングやベッドルームなど、部屋のいたるところにアートが飾られている。
「アートやインテリアアイテムは、自分が好きなモチーフを集めることが多いです。あとは家族が飾っていたものから好きな絵を集めてきて飾っています」
寝室の一角は、海好きの祖父をはじめ、家族の思い出が多い海や魚をモチーフに。
「ナタリー・レテのデジタルプリントは、お馴染みの動物のイラストより、優しいタッチが気に入っています。知り合いのフランス人イラストレーター、ボルメランジェ・エチアンさんの作品は、繊細で可愛らしい魚のイラストが素敵です。特に密集したクマノミの絵がお気に入り。大胆な赤い魚のイラストは、母がスキューバダイビングでゴールドコーストを訪れた際に現地のギャラリーで買ったもの」モチーフを統一して、テイストの異なるイラストをミックスしているのが印象的だ。
さらには、日本画まで部屋に馴染んでいるところが興味深い。
「版画は、美大出身だった祖母が篠田桃紅さんのアシスタントをしていたご縁で、何点か譲り受けました。我が家はどちらかというと欧米テイストですが、篠田さんの抽象的なモチーフは意外と空間に馴染んでいて、逆にクラシックに寄りすぎずモダンなテイストが加わって良かったかもしれません。対になっている2点は鶴と亀の縁起の良い作品で、両親が結婚した際に頂いたもの。バカラのネズミは、ねずみ年の祖父に知人から頂いたものです」
米田さん流「花」の取り入れ方。「普段、自宅に飾っている花は全てフェイクです。理由は、単純に毎日の世話が必要ないというズボラな動機と、本物の緑は窓の外の庭で楽しもうというコンセプト(笑)」米田邸は、すべての部屋が広い庭に面しており、リビングと寝室は大きな窓から庭の緑が望める。
「壁にかけているアートも、花をモチーフとしている作品も多いので、生花を飾らずとも華やかさは十分出せているかなと。花の絵はジョン・デリアンのポスターを、老舗の額縁専門店ジンプラで綺麗に裏打ちして額装してもらいました」
「フェイクフラワーはニューヨークのアーティスト、リヴィア・チェティのペーパーフラワーや、レゴのフラワーブーケシリーズなど、色々なところで見つけたものを飾っています。どちらもリアルを追求するより、あえてデフォルメされたフェイクっぽいデザインが気に入っています」フェイクフラワー選びのポイントは、いわゆる造花ではなく、アートとしての花。
アンティークから現代、世界中から集めた食器を普段使い。「自分が旅先で買ったものもあれば、祖母が愛用していた食器をそのまま使用しているものも。いずれも柄やモチーフが気に入って使っています。祖母はとにかく食器が好きで、三越や高島屋など百貨店のほかに、神奈川県二宮の柏屋商店というキッチン雑貨屋がお気に入りでした。ブルーの柄の食器はそこで揃えたそうです。食洗機に入れられるくらい頑丈な食器が多いので、普段からジャンジャン使っています」ロイヤル・コペンハーゲンをはじめ、ハンガリーの窯元「ヘレンド」、フランスの陶器ブランド「ベルナルド」、陶芸家「辻常陸」などの作品を見せていただいた。
米田さんの審美眼で選ばれた個性的な器たち。マルチカラーのヴェネチアングラスやリアルな虫モチーフなど、チャーミングなデザインが印象的だ。
「昨年、新婚旅行でスキーリゾートのアスペンを訪れ、旅の記念に。スキー関連グッズを扱うGorsuchというセレクトショップで購入しました。アーティストでありスキーヤーのDede JohnstonとGorsuchのコラボシリーズです」
「ハチの大皿は、サンフランシスコのウィリアムズ・ソノマ本店で購入。かなりリアルなタッチですが、個人的にハチや蝶々などの虫モチーフもすごく好きで、一目惚れしました。サイズ感と深さもちょうど良く、出番の多い食器です」
角度や光の入り方で、さまざまな表情を楽しめるヴェネチアングラス。食洗機にも対応した頑丈なつくりもお気に入りポイント。「卒業旅行で母とヴェネチアのムラーノ島にあるガラス工房を訪れた時、記念に購入したもの。工房の中でもこのマルチカラーが一際目立っていて選びました。カルロ・モレッティのフラワーベースは、母と祖母がムラーノ島を訪れた際に購入したもの。偶然にも母娘でムラーノ島の土産を買っていたことが後から分かり、感慨深かったです。我が家のガラスコレクションになりました」
ドイツの人デザイナー、ベルンハルト・クーンが手掛けたマグカップ。独特なタッチで描かれた著名人とゴールドの持ち手が特徴だ。「マリリンモンローやオードリーヘップバーンなど可愛らしい女性モチーフもありますが、散々迷った結果、時代感を揃えてゴッホとベートーベンという芸術家二名に落ち着きました(笑)」