Astier de Villatte の陶器白の釉薬が生む独特の風合い
アスティエ・ド・ヴィラット
アスティエ・ド・ヴィラットの
クリエイション
アスティエ・ド・ヴィラットの陶器は、19世紀の伝統的な器や、ゴミ箱や道端に捨てられ人々から忘れ去られたものなどから着想を得てデザインされている。19世紀頃の陶器を見ると、美しい形はあっても白を使うことはほとんどなかったという。こうした昔ながらのデザインにカラフルな色をつけるのが流行している中、アスティエ・ド・ヴィラットでは、一番ベーシックな白を陶器に色付けした。様式や年代をただ模倣せず、新しい感覚でモダンな印象に仕上げている。懐古的なものに惹かれながらも、古いものには戻らず、そこに見過ごされていた「美しさ」と見つけることがクリエイションと解釈。そして、彼らは「自分達が心から美しいと思い、自身が誇りに思えるようなものを創り上げたい」と語る。
美意識のルーツ、
バルテュスとの出会い
1960年代、画家バルテュスがローマのアカデミー・ド・フランスの館長だった時に、画家であったブノワの父ピエール・キャロンが留学生としてアカデミーに在籍。その間、ブノワ一家とバルテュス夫妻は寄宿先のヴィラ・メディチに数年暮らし親交を深めた。幼い時から日常的にバルテュスの画集に触れて育った。ブノワは「私の美意識のルーツは、バルテュスとの出会いです」という。また、父ピエールはフランス帰国後、パリ国立美術学校(エコール・デ・ボザール)で古典芸術の専門家として教鞭をとった。そのアトリエに生徒として通ったのがイヴァンだった。イヴァンは「バルテュスの誰も見向きもしなくなったものに対する眼差し。そこに深く共感する」と語る。パリ国立美術学校で出会い、ともに絵画や彫刻を学んでいた二人は、当時からバルテュスの絵画に強く影響された。そして、ここでの出会いからアスティエ・ド・ヴィラットがスタートした。
白い釉薬
「白を使うことで、モノとしてもボリュームつまりは豊かな立体感が出て、影の部分にも表情が感じられ、立体としての力と美しさが生まれる」とブノワは語る。アスティエ・ド・ヴィラットは、ノスタルジックなディティールの器に、一番パワフルでインパクトのある「白」を使用。クラシカルなフォルムに、白というエネルギッシュな色を用いることで、気品と柔らかなコントラストが生まれる。アスティエにしかない艶やかな釉薬は、納得のいく白を生み出すまでに、丸2年以上かかったという。
パリの黒い土
アスティエ・ド・ヴィラットで使用される土は、パリ郊外、イル・ド・フランスで採掘されたもの。ヴィラ・メディチでバルテュスの門下生でもあり、のちにパリ国立美術学校でブノワたちに彫刻を教えてくれた先生が使用していた土を今でも使い続けているそう。パリのアトリエへ運ばれた後、空気を抜くために何度も練られる。決して機械は使わず一貫して手作業で行う。手でこねるからこそ、土が持つ強さをちゃんと生かせるという。白い釉薬から透けて見える黒い陶土も魅力のひとつ。
代々受け継がれた伝統的な技法
産業革命以降機械化が進み、時代や社会が変わっていく中、アスティエ・ド・ヴィラットの陶器は、19世紀以前の技法を採用。機械では生み出せない厚み、温かみ、職人的技法など、職人の残す「跡」を大切にし、代々受け継がれた技にアスティエのエッセンスをプラスして制作。型で抜いてから、エストンパージュという絵画の技法でモチーフは柔らかくぼかし、乾燥、窯焼き、白い釉薬をかけ、乾燥、窯焼きといった工程をすべて手作業で行う。ひとつひとつ手仕事でつくられるため、すべての表情少しづつ異なる。また、歪みや釉薬のムラも欠点ではなく、個性であり美しさとして大切にしている。
《Grand Châlet Collection》
ブノワとイヴァンが大きな影響を受けた画家バルテュスが晩年を過ごした、スイスで最大の木造建築Grand Châlet (グラン・シャレ)をイメージしたコレクション。美しい外壁に施された装飾をモチーフにしたもの。グラン・シャレの壮麗で華やか装飾を、アスティエ・ド・ヴィラットのクリエイションを通してモダンで気品ある器に創作された。バルテュス夫人、節子・クロソフスカ・ド・ローラとのコラボレーションで誕生した。
《Régence》
18世紀はじめフランスの美術様式Régence(レジェンス)をイメージしたコレクション。レジェンスは、ルネッサンス期に流行したモチーフが、ナポレオン1世の古典主義への偏愛により再び脚光を浴び、装飾モチーフとして18世紀のフランスで流行。決して華美ではなく、控えめに縁取られた装飾がアクセントになりクラシカルな美しさを醸し出す。
《Villa Medicis》
Villa Medicis(ヴィラ メディチ)は、ローマにあるヴィラを中心とした複合建築で、1567年フェルディナン・ディ・メディチが建立。外観を古代ローマ風の浮彫や彫像で飾り立てられた壮麗な建築。1803年にナポレオン1世に所有権が移り、フランス・アカデミーがこの地に移された。幼少期のブノワが暮らした場所だ。今季の新作として、ローマ時代の競馬場を思わせるオーバルプレートや彫像を転写プリントしたプレートを発表。在ローマ・フランス・アカデミー ヴィラ メディチとのパートナーシップのもと制作。
《Flower base》
小さなフラワーベースをピックアップ。お花を生けたり、あるいはミルクピッチャーやオブジェをしても楽しめるアスティエ・ド・ヴィラットの小さな陶器。Colbert(コルベール)は、柔らかな曲線を描くシンプルなコレクション。装飾がないのが特徴。Gedeon(ジュデオン)は、ヘブライ人の士師で、強力な戦士や木の伐採者を指す。植物のようなインパクトのあるフォルムが特徴。Aphrodite(アフロディーテ)は、美の女神アフロディーテに由来。優雅で女性的なフォルムと繊細な装飾が魅力。
《Tea cup》
小さな小さなカップとコブレット。お茶やお酒を楽しむカップとしてはもちろん、一口サイズの料理や、ちょっとしたお花やグリーン、小物入れにおすすめ。そのまま置いておくだけでもオブジェとして小さな存在感を放つ。Tuileries(チュイルリー)は、パリで活躍するコミューン・ド・パリとのコラボ。ルーブル美術館の隣にあるシンメトリーに配置された庭園をイメージ、上空からみるとこのシリーズに施された十字のように。Simple(シンプル)は、縁に施される一本ラインをアクセントに、削ぎ落とされたデザイン。Sobre(ソーブル)は、飾り気が無い・質素という意味を持つシリーズ。究極にシンプルなフォルムに小さなドットを美しく並べたミニマルなカップ。人の顔がレリーフとなったシリーズAlexander(アレクサンドル)は、浮き彫りになった表情が興味深い。ジョージ・ルーカスもお気に入りのシリーズ。Revolution(レボリューション)は、革命という意味をもつ8角形のデザイン。カットされたダイヤモンドのような佇まいが魅力。
《Crésus》
大富豪の意味をもつCrésus (クレジュス)。ノスタルジックな白い陶器に、シャイニーゴールドの縁取りを効かせたデザイン。装飾のないシンプルなフォルムに、華美になりすぎない絶妙なゴールドがモダンな印象。プレートは潔いフォルムと、その薄さも魅力だ。パーティや特別な日にぴったりな洗練された美しさを持つ器。装飾的な華美さがないので、男性ゲストのおもてなしにも。
《Simple》
装飾のないディティールに、独特なフォルムが美しく印象的なコンポート。アスティエ・ド・ヴィラット創業時から不動の人気を誇るSimple (シンプル) シリーズは、その名通り、無駄のない削ぎ落とされたデザインが特徴。シンプルゆえに、釉薬のムラや手作業ならではの歪み、器のフォルムが美しく際立つ。フルーツやケーキのプレートとして、また、アクセサリーを置いたり、ドライフラワーを飾っても。白いキャンバスのように、飾るものによって表情を美しく変える逸品といえる。
サントノレ通り173番地 ASTIER de VILLATTE Paris
2000年ルーブル美術館のそば、サントノレ通り173番地にアスティエ・ド・ヴィラット本店をオープン。18世紀末から19世紀初頭にはナポレオン御用達の銀職人の店として使用されていた歴史ある場所だ。以前の存在感はそのままに、もともとの部材を生かし、アスティエのエッセンスを加えて改修。使い込まれた什器いっぱいに白い陶器がぎっしりと並ぶ魅惑の空間だ。
Benoît Astier de Villatte
Benoît Astier de Villatte(ブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット)16歳から10年間パリ国立美術高等学校(エコール・デ・ボザール)で彫刻や絵画を学ぶ。卒業後は画家を経て1996年、アスティエ・ド・ヴィラットを設立。フランスに数世紀続く旧家、 アスティエ・ド・ヴィラット家の末裔にあたる。ローマ出身。
Ivan Pericoli
Ivan Pericoli(イヴァン・ペリコーリ)フランス国立東洋言語文化学院でチベット語を学んだ後、パリ国立美術高等学校(エコール・デ・ボザール)で絵画、写真、陶器、彫刻を学ぶ。画家を経て、美術学校で知り合ったブノワとともにアスティエ・ド・ヴィラットを設立。パリ出身。
Information
Astier de Villatte/H.P.DECO
東京都渋谷区神宮前 5-2-11
Tel. 03-3406-0313
hpdeco.com/brand/179/
Astier de Villatte
173 rue Saint-Honore 75001 Paris
Tel. +3301 4260 7413
astierdevillatte.com