家の中に町を作る リノベーションで シェアハウスを作る試み

家の中に町を作るリノベーションで
シェアハウスを作る試み

玄関を開けると室内に長屋と庭が現れる

建築事務所「オンデザイン」 に在籍中、この横浜の商店街に面した築30年以上の古いビルの改修事業計画に参加した塩脇 祥さん。社員寮と事務所として使われていた3部屋をつなげ、ひとつの家とするシェアハウスを計画する。
「居住者の独立性を尊重したシェアハウスを目指しました。共用部分は庭と考え、向こう三軒両隣とお付き合いするようなイメージです」
庭となる広いリビングと大きなキッチンを中心に、通りが各部屋をつなぐ。通りを挟んで並ぶ個室から、下町の玄関先のように少しづつ外へ個性がこぼれ出しながら町を作っていく。
コロナ禍でリモートワークが増え、日中の人口密度が上がったのだとか。家具は工事の際の端材でDIYしたり、長野県諏訪の古道具店「REBUILDEING CENTER JAPAN」で揃えた。

コロナ禍でリモートワークが増え、日中の人口密度が上がったのだとか。家具は工事の際の端材でDIYしたり、長野県諏訪の古道具店「REBUILDEING CENTER JAPAN」で揃えた。

リビングの中央に大きなキッチン。「お酒はいただきものがどんどん増えています。誰が飲んでもいいことになっています」。料理は食べたいものを各自作るスタイルだそう。

リビングの中央に大きなキッチン。「お酒はいただきものがどんどん増えています。誰が飲んでもいいことになっています」。料理は食べたいものを各自作るスタイルだそう。

下町の通りや庭先のように、いろいろな場所に居場所がある。

下町の通りや庭先のように、いろいろな場所に居場所がある。

エントランスを入ると、右側に個室が4室。左側にリビングルーム。

エントランスを入ると、右側に個室が4室。左側にリビングルーム。

設計者が集う町

部屋の数は5つ。ここ水谷ビルの改修を計画・設計した塩脇 祥さん自ら「水谷基地」に住み、隊長を務めている。塩脇さんは現在、「オンデザイン」を独立し、「ヨツカドデザインスタジオ」を構える。

そして「水谷基地」の一員の鶴田 爽さんと千代田彩華さんも「オンデザイン」の所属だ。残りの2部屋は、同じく「オンデザイン」の設計士と、短期貸しの部屋になっている。
「設計段階から住みたいと思っていて、立候補しました」と鶴田さん。千代田さんは大学時代に研究室で塩脇さんと出会い、ここに住むことを決めたのだとか。気づくと「水谷基地」が設計事務所の社員寮の様相を呈していた。それだけ、設計のプロに愛されるシェアハウスなのだ。

塩脇さんは設計の際、選ぶ価値のない部屋は作りたくない、と決めていたそうで、北側の部屋は広めだったり、部屋に外から直接入れるドアがつくオマケつき。南側は日当たり抜群だけど広さは抑えられている。
「入居の際、どの部屋を選ぶか話し合ったのですが、不思議とお互い被らなかったですね。暮らしで何を大切にしているのか、優先順位がそれぞれ違うことがわかっておもしろかったです」

「水谷基地」の模型。合計5室のシェアハウスだ。約3世帯分をつなげたので、玄関のドアは3つある。

「水谷基地」の模型。合計5室のシェアハウスだ。約3世帯分をつなげたので、玄関のドアは3つある。

それぞれの部屋の前に門灯のような照明が下る。ドアは半透明のポリカーボネイトなので、在宅中は気配でわかる。

それぞれの部屋の前に門灯のような照明が下る。ドアは半透明のポリカーボネイトなので、在宅中は気配でわかる。

鶴田さんの部屋。縁側のような段差を上がり部屋に入る。靴はそれぞれの個室の入口で収納管理する。1段高くなっている居室の床下は物入れになっている。

鶴田さんの部屋。縁側のような段差を上がり部屋に入る。靴はそれぞれの個室の入口で収納管理する。1段高くなっている居室の床下は物入れになっている。

各部屋に2段になっている場所がある。下の段がもともとの床面のレベルだ。

各部屋に2段になっている場所がある。下の段がもともとの床面のレベルだ。

塩脇さんの部屋。下の段をベッドに。上の段には遊びに来た友人のベッドにするために空けてあるそう。

塩脇さんの部屋。下の段をベッドに。上の段には遊びに来た友人のベッドにするために空けてあるそう。

塩脇さんの部屋は、一部の床を下げてある。「グリーンを飾る場所にしようと考え、防水も施しました。まだ飾っていませんが(笑)」

塩脇さんの部屋は、一部の床を下げてある。「グリーンを飾る場所にしようと考え、防水も施しました。まだ飾っていませんが(笑)」

カーテンの向こうが塩脇さんの部屋の前のスペース。

カーテンの向こうが塩脇さんの部屋の前のスペース。

部屋の前のスペースは塩脇さんの仕事場になっている。

部屋の前のスペースは塩脇さんの仕事場になっている。

楽しい秘密基地

それぞれの住人の友だちが集まることも多いのだそう。共有部分は庭なので、テントを張ったり、ハンモックに揺られたりも。
夜はプロジェクターでゲームを楽しんだり、部屋の一角で育てているシイタケを収穫する宴を企画したりと、住人たちはシェアハウスならではの生活を楽しんでいる。

”家”のくくりを再構築し、様々な可能性を秘めたシェアハウスで、設計者どうし刺激しあって過ごす日々はこれからの人生の大きな糧となるに違いない。

千代田さんの部屋はテラスに面している。手前のドットの家具は、イラストレーターでもある千代田さんのお手製。

千代田さんの部屋はテラスに面している。手前のドットの家具は、イラストレーターでもある千代田さんのお手製。

千代田さんは上の段をベッドにしている。壁面に本を並べるための棚をDIY。

千代田さんは上の段をベッドにしている。壁面に本を並べるための棚をDIY。

黒のスクエアなボウルがスタイリッシュな洗面スペース。鏡はIKEAで。他に、トイレが2つ、シャワー室が2つ、洗濯機が2台ある。

黒のスクエアなボウルがスタイリッシュな洗面スペース。鏡はIKEAで。他に、トイレが2つ、シャワー室が2つ、洗濯機が2台ある。

キッチンの奥にはパントリーを設けた。調味料は共有。個人のストックはカゴの中へ。

キッチンの奥にはパントリーを設けた。調味料は共有。個人のストックはカゴの中へ。

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