ToKoSie ー トコシエ

セレクトショップ元バイヤーさんご自宅米軍ハウスから学ぶ
現代日本の暮らしのルーツ

出張先のアメリカで泊まった、古いホテルを思い描いて

今年で結婚20年目を迎える大石家は、夫婦と2人の娘の家族4人暮らし。2011年に約85㎡の中古マンション物件を購入し、フルリノベーションをした。
「31歳のときに初めて買ったマンションに家族で住んでいました。10年経って2人の子供も大きくなったので、自分の好きな家に住もうと思い、40歳で2軒目を購入してフルリノベーションをしました」と話すのはご主人。リノベーションをする前から具体的な住まいのイメージを描いていたという。
「僕はずっとセレクトショップのバイヤーをしていたので、出張のたびに海外のいろんなホテルに泊まる機会がありました。なかでもアメリカの古いホテルが好きで、リノベをするならこういう雰囲気の建物、こういうロケーション、こんな内装という具体的なイメージが最初からありました」と話す。そんなときに出会ったのが、現ハウストラッドデザイナーの細田氏だ。
「当時は今ほど日本でリノベーションをする人って少なかったと思います。そんな中で僕の細かなこだわりまで理解して表現してくれたのが細田さんでした」と続けた。
築51年、総面積は約85㎡。
築51年、総面積は約85㎡。
照明はジョージネルソン作のバブルランプ。
照明はジョージネルソン作のバブルランプ。
「Pacific Furniture Service」のスタンドライト。
「Pacific Furniture Service」のスタンドライト。
「HEYWOOD WAKEFIELD」のコーヒーテーブル。
「HEYWOOD WAKEFIELD」のコーヒーテーブル。
「Bang & Olufsen」のステレオアンプ(上段)。
「Bang & Olufsen」のステレオアンプ(上段)。
ダイニングチェアは「Pacific Furniture Service」。
ダイニングチェアは「Pacific Furniture Service」
床は磁器質タイルとウールのカーペットを切り返して。
床は磁器質タイルとウールのカーペットを切り返して。

日本の住宅様式の基礎は、米軍ハウスから生まれた?

20世紀中頃のアメリカの家具や建築様式が特に好きだと話す大石さん。現代の日本の住環境スタイルは、アメリカ文化の影響を受けている部分が少なくないという。
「第二次世界大戦直後から今の代々木公園ができる前まで、あの場所には米軍の家やマンションがたくさん建っていました。座間や横浜にも米軍ハウスはありますが、代々木は将校クラスの人たちが住む高級な米軍ハウスだったんです」と大石さん。
「当時まだテーブルやソファで暮らす文化のない日本にやってきた彼らのために、日本の職人は見様見真似でアメリカの家具をつくりました。もちろん素材も日本にあるものを工夫して。また、アメリカと比べて土地の少ない日本。限られたスペースにアメリカ様式の家を建てるため、米軍が図面をひき多くのマンションや住宅がつくられました。それが今の2LDKや3Lという日本の住宅様式の基礎になっているとも言われています」と細田氏が続けた。
「僕が細田さんにデザインをお願いした1番の理由は、そういうルーツをしっかりと理解してくれていたからです。ルーツを知らずに作られるものは、見る人が見るとちぐはぐだったり、本来の目的と違うものになっていたり…デザインのためのデザインになってしまうことが多々あります。だから僕は“ものづくり”において、ルーツを学ぶことはとても大切なことだと思っています」と大澤さん。
「実はこの家って凝ったデザインはしていないんですよ。ここをリノベーションをして今年で10年が経ちますが、今でも古さを感じさせない。それはスタンダードを大切にシンプルな設計を心がけているからこそ、できることだと思っています」と細田氏。
壁付けのコンパクトなキッチンは約8㎡。
壁付けのコンパクトなキッチンは約8㎡。
「リンナイ」のビルトインガスコンロ。
「リンナイ」のビルトインガスコンロ。
使わないときは天板を置いてスッキリと。
使わないときは天板を置いてスッキリと。
標準的なデザインのコンセントやスイッチは横向きに配して。
標準的なデザインのコンセントやスイッチは横向きに配して。
木目を縦と横で使い分けることで、シンプルでも表情のある戸棚に。
木目を縦と横で使い分けることで、シンプルでも表情のある戸棚に。
板張り天井には木材の台座付きブラケットライトを。
板張り天井には木材の台座付きブラケットライトを。
リビングの窓際にはベンチにもなる収納棚を設置。
リビングの窓際にはベンチにもなる収納棚を設置。

2つのガラスを使い分けて、圧迫感のない玄関に。

マンションの規制が厳しく、水回りの移動ができなかったという大石邸。なかでも頭を悩ませたのが、玄関のすぐ横にある浴室だ。
「もともとの間取りでは玄関がすごく狭くて、そのさきに続く廊下の途中にお風呂への扉がありました。水回りの場所は移動できない、でも玄関は明るく広くしたい。この2つを許容するにはどんな間取りが可能なのか。考えた結果、“じゃあもうサンダル履いてお風呂はいっちゃいましょうよ”というノリで今の形になりました」とデザインを担当した細田氏は語る。
大石邸では玄関のすぐ横がガラス張りの扉になっていて、その先に洗面、浴室、トイレが続いている。磁気質タイルの貼られた玄関と浴室の総面積は約5㎡。余裕のある玄関スペースが実現した。
「マンションの玄関って薄暗くなりがちですが、扉や壁をガラス張りにすることで光を拾い、圧迫感をなくしました。さらに人の背丈より高い部分はクリアガラス、低い部分はぼかしの入った型ガラスにすることで、プライバシーを守りながらも天井部分の繋がりで開放感を出しました。間取りのレイアウトはほぼ変わっていないけど、このようなちょっとした工夫で広く感じさせることができます」と細田氏は続けた。
キッチンにも細田氏の工夫が散りばめられている。
「キッチンの木材はパーツによって異なる素材を使っています。例えば備え付けのテーブルには楢木、食器棚や腰壁には樺の木 、パーテーションにはラワン材を使いました。木の色味はワントーンで統一しながらも、要所要所に違う素材を使うことで木目のバランスが変わって立体感がうまれます。さらに時間が経つことで木目に黒みが出て、色のコントラストがつき一層味わい深くなるのも魅力です」と締め括ってくれた。
玄関の壁面にはコペンハーゲンリブを採用。
玄関の壁面にはコペンハーゲンリブを採用。
傘用の収納がついたシューズクローク。
傘用の収納がついたシューズクローク。
米国ヴィンテージ照明は「ACME Furniture」で購入。
米国ヴィンテージ照明は「ACME Furniture」で購入。
10年経って味わいの増した真鍮のドアノブ。
10年経って味わいの増した真鍮のドアノブ。
アメリカの住宅をイメージさせるドアベル。
アメリカの住宅をイメージさせるドアベル。
玄関のすぐ横には洗面所、浴室へと続く扉がある。
玄関のすぐ横には洗面所、浴室へと続く扉がある。
玄関からリビング方向への眺め。
玄関からリビング方向への眺め。
磁気質タイルで繋がる玄関と洗面所の床。
磁気質タイルで繋がる玄関と洗面所の床。
洗面所と浴室はクリアガラスで仕切り圧迫感を軽減。
洗面所と浴室はクリアガラスで仕切り圧迫感を軽減。
細長い洗面所の空間を効率よく活用した収納。
細長い洗面所の空間を効率よく活用した収納。
リノベーションは「HOUSETRAD」に依頼。
リノベーションは「HOUSETRAD」に依頼。