家具と器を生かす 居心地の良い家は プライベートレストランにも

家具と器を生かす 居心地の良い家は
プライベートレストランにも

お客様を迎える楽しみが生まれた家

20年ほど前に、窓から海や富士山が見える見晴らしの良い集合住宅を購入した秋山さん。
「3方向に大きな窓があり、個性的な家のカタチや、バルコニーが4つあることも気に入りました」

そして、このご自宅を約7年前にリノベーションした。設計は、ハンズデザイン一級建築士事務所に依頼。

現在、秋山さんはこのご自宅で完全予約制のプライベートレストランを開いている。きっかけは小さな出来事からだった。
「金継ぎした器を見せたいのでお友達を連れて行ってもいい? 器に料理が盛り付けてあると素敵かも……、そんなふうに徐々に始まりました。お料理を習ったことはないのですが、それでもみなさんが喜んでくださるのが嬉しくて、お食事の会が口コミで徐々に広がっていきました」

作り付けの食器棚にはお気に入りの器が並ぶ。李朝の箪笥の上の壁に飾った李禹煥の作品。「ここにかける絵は季節ごとに変えています」。
作り付けの食器棚にはお気に入りの器が並ぶ。李朝の箪笥の上の壁に飾った李禹煥の作品。「ここにかける絵は季節ごとに変えています」。
「お客様がいらっしゃったら、まずここでウェルカムドリンクを飲みながらくつろいでいただきます」。京都の骨董市で出会った座卓は、脚に八角形のパーツを足してもらいローテーブルとして使いやすい高さにした。
「お客様がいらっしゃったら、まずここでウェルカムドリンクを飲みながらくつろいでいただきます」。京都の骨董市で出会った座卓は、脚に八角形のパーツを足してもらいローテーブルとして使いやすい高さにした。
キッチンでお茶の準備をする秋山さん。プライベートレストランではシェフに徹し、キッチンに籠もる。
キッチンでお茶の準備をする秋山さん。プライベートレストランではシェフに徹し、キッチンに籠もる。
お客様を迎える日は必ずお花も準備する。ガラスの花瓶は北欧のヴィンテージ。器の中に入れたガラスの花留めは神戸の『モリス』で購入。
お客様を迎える日は必ずお花も準備する。ガラスの花瓶は北欧のヴィンテージ。器の中に入れたガラスの花留めは神戸の『モリス』で購入。
キッチンの形に合わせて作ったオリジナルキッチンは、色や素材、デザインを吟味し、掃除もしやすく機能的。「食洗機は入れませんでした。食洗機に入れられない器が多いですし、大好きな器を手で洗っている時間が好きなんです」
キッチンの形に合わせて作ったオリジナルキッチンは、色や素材、デザインを吟味し、掃除もしやすく機能的。「食洗機は入れませんでした。食洗機に入れられない器が多いですし、大好きな器を手で洗っている時間が好きなんです」
イギリスのアンティークのゲームテーブルは、ダイニングテーブルと同じ高さで、料理を運ぶ際に大活躍。「ゲームテーブルをしまう場所を予め考えてキッチンを設計してくださいました」
イギリスのアンティークのゲームテーブルは、ダイニングテーブルと同じ高さで、料理を運ぶ際に大活躍。「ゲームテーブルをしまう場所を予め考えてキッチンを設計してくださいました」

家具や器を生かすリノベーション

秋山さんのお宅にある家具や器は、ひとつひとつ丁寧に選ばれ、そしてそれぞれに思い出が刻み込まれているものばかり。物語に彩られた美しいものたちが彩る丁寧な暮らしがある。
 

お客様を迎えるアンティークのダイニングテーブルは、40年前に代官山で購入したもの。家族の団らんの思い出も刻み込まれている。ウェルカムドリンクをいただくリビングのソファは20年愛用している『家具蔵』。
「折りたたみできる山葉(ヤマハ)の文化椅子はオリジナルです。使わないときはしまっています」

リノベーションの設計は、それらのものたちの置き方や使い方が最初に決まり、それからデザインの作業に進んだ。

大好きな器を眺められるガラス扉の食器棚を製作。「奥行きが浅いので食器の出し入れがラクです」
大好きな器を眺められるガラス扉の食器棚を製作。「奥行きが浅いので食器の出し入れがラクです」
村上躍さん、小野哲平さん、村田森さん……、見晴らしのいいキッチンの窓辺にお気に入りの陶芸家のティーポットを並べて。
村上躍さん、小野哲平さん、村田森さん……、見晴らしのいいキッチンの窓辺にお気に入りの陶芸家のティーポットを並べて。
キッチンの引き出しにも器がたっぷりと収納されている。
キッチンの引き出しにも器がたっぷりと収納されている。
「私がお盆をたくさん持っているのを見て、設計士さんがお盆を置く場所を作ってくださったんです」
「私がお盆をたくさん持っているのを見て、設計士さんがお盆を置く場所を作ってくださったんです」
アンティークのバタフライテーブルは、新婚当時、代官山にあった同潤会アパートの一室の店まで探しにいったもの。コーナーの窓が直角でないのもお気に入り。
アンティークのバタフライテーブルは、新婚当時、代官山にあった同潤会アパートの一室の店まで探しにいったもの。コーナーの窓が直角でないのもお気に入り。

設計士との出会いはポストのチラシ

この家に暮らして15年ほど経ったころ、リノベーションに踏み切った。
「工事期間の仮住まいが億劫に感じる前に、住まいを綺麗に整えておきたいと思っていました。
ある時、『ハンズデザイン一級建築士事務所』の見学会のチラシがポストに投函されていました。写真や文章の雰囲気がとても良かったので、足を運んでみました。照明のスイッチも吟味されていてとても素敵でした。そして次男の独立を待って(笑)、連絡したんです」
 

リノベーションはダイニングスペースを拡張し、ダイニングテーブルを斜めに置けるようにした。
「間取りの大胆な変更はなかったのですが、素材や色にこだわってくださり、機能的なキッチンの設計など、とても丁寧な仕事をしてくださいました」

毎シーズン届けられる『ヨーガンレール』の案内状を飾って季節を感じられるコーナーに。右の箪笥は、上京する際に実家から持ってきたもの。「娘時代から使ってきた思い出深い箪笥です」
毎シーズン届けられる『ヨーガンレール』の案内状を飾って季節を感じられるコーナーに。右の箪笥は、上京する際に実家から持ってきたもの。「娘時代から使ってきた思い出深い箪笥です」
廊下の先に置いた和箪笥は、漆職人だったおじいさまの作品。壁にかけた皿はフランスのアンティーク。「皿に入った傷が絵のように見えます」。スポットライトを当てて演出。
廊下の先に置いた和箪笥は、漆職人だったおじいさまの作品。壁にかけた皿はフランスのアンティーク。「皿に入った傷が絵のように見えます」。スポットライトを当てて演出。
和室にかけた絵はグラフィックデザイナーだった義父の作品。「父に守られているような気持ちになります」
和室にかけた絵はグラフィックデザイナーだった義父の作品。「父に守られているような気持ちになります」
琉球畳を敷いた和室とリビングの間は引き戸で閉めることができる。
琉球畳を敷いた和室とリビングの間は引き戸で閉めることができる。
「擁壁の目隠し用に作ってもらったベランダのレッドシダーのルーバーは、大規模修繕の際に簡単に分解できます」
「擁壁の目隠し用に作ってもらったベランダのレッドシダーのルーバーは、大規模修繕の際に簡単に分解できます」
ダイニングテーブルに飾る小さなテーブルフラワーは、バルコニーで育てた花を摘む。
ダイニングテーブルに飾る小さなテーブルフラワーは、バルコニーで育てた花を摘む。

自分を居心地良くしてくれる家

「これからの人生を楽しむため、自分を居心地良くしてくれる家を作りたいと思いました」
そのため、素材にはこだわって選んだのだそう。
壁はホタテ貝殻が原材料の塗装材使い、薄いグレーで統一しながら、スポンジや粗目の箒など、場所によって仕上げの違いを楽しんでいる。
床材は幅広のオーク。
琉球畳の和室には、畳と壁の間に名栗加工のナラ材と天然石を配している。
 

「窓からの眺めが美しく、特に黄昏時の空の色の変化はとても綺麗です。
思いもよらずプライベートレストランを始めることになりましたが、この家で過ごす時間をお客様に喜んでいただいて、それが私のプレゼントになっています」

壁は場所によって仕上げ方法を変え、テクスチャーの違いを楽しむ。壁の文箱の展開図は義父の作品。
壁は場所によって仕上げ方法を変え、テクスチャーの違いを楽しむ。壁の文箱の展開図は義父の作品。
玄関〜洗面室〜キッチンは風通しがよい通り抜け。
玄関〜洗面室〜キッチンは風通しがよい通り抜け。
掃除が楽なように壁出しにした水栓。洗面ボウルは大洋金物の『Tform』。
掃除が楽なように壁出しにした水栓。洗面ボウルは大洋金物の『Tform』。
トイレ内の飾り棚は、スポットライトでドラマチックに演出。季節に合わせて飾るものを変える。
トイレ内の飾り棚は、スポットライトでドラマチックに演出。季節に合わせて飾るものを変える。
廊下の先の和箪笥のコーナーが見えるように、ガラスの引き戸に。床はオーク材。
廊下の先の和箪笥のコーナーが見えるように、ガラスの引き戸に。床はオーク材。
「表札は設計士さんが手作りしてくださいました」
「表札は設計士さんが手作りしてくださいました」