ポスター専門店オーナーの暮らし静謐な箱を自由にデザイン
ポスターが映えるギャラリー空間
“縁”を感じて購入
輸入ポスター専門店「ナップフォード・ポスター・マーケット」を運営する井上恭太さんは、約3年前、結婚を機に新居を探していた。
「なかなか条件に合うところが見つからなくて。ネットで探していたとき、うちで販売していたポスターを飾っているモデルルームに出会ったんです。買ってくれたスタイリストさんのことも思い出し、縁を感じて見にきたのがこの部屋です」。
『リビタ』が1棟丸ごとリノベーションを行った当時築24年程のマンションの1室。
「さらに、ロナン&エルワン ブルレックがデザインしたソファが置かれていました。ブルレック兄弟のポスターはうちのショップでも扱っていて思い入れも深いので、何かつながりを感じましたね」。
白い壁に包まれた無駄なもののないシンプルな空間は、ポスターをたくさん飾りたいという希望にもぴったりだった。ミラノサローネでのイベントコーディネートなどを務め、デザインに興味の深い妻も気に入って、ほぼ即決で購入した。
ダイニングテーブルからスタート
「部屋に入った時、空気の清潔感、透明感を感じました。空気がどこか澄んだ感じがするんですよね」。
都心の人気エリアにある住宅街の一角。マンションには共用の土間があったり、植栽は「SOLSO」が担当するなど、洗練された雰囲気が漂う。
「後から部分的に手を加えられる“あとリノ”というサービスを利用して、収納を増やすためにベッドルームに壁を立ててクローゼットを設けました。あとは洗面所の洗濯機の上に吊り戸棚も造作しました。動線や機能面を考えてフォローしてくれるのは有り難かったですね」。
ヘリンボーンの床は妻のお気に入り。キッチンは独立型で、大きなダイニングとソファが置かれたリビングダイニングは、生活感が削ぎ落とされたギャラリーのような空間だ。
「実は、入居前に購入していたダイニングセットもロナン&エルワン ブルレックのデザインなんです。これが合う家じゃないとだめだと思っていたのですが、サイズ感もぴったりでした。ダイニングテーブルから家具のレイアウトを決めていったところはありますね」。
チェアは一脚ずつバラバラのカラーをセレクト。
「一脚は座面にファブリックを使ったものを選んで、違うテイストを楽しんでいます。ブランドや形もあえて揃えず、色々なものを置こうと思いました。好きなものを集めただけで、空間を統一させるつもりはなかったのですが、北欧テイストになってきたようですね」。
ダイニングテーブル上の照明は、IKEAのものだそうだ。
「すごく悩んで、なかなか決められなかったんです。たまたま雑貨を買いにIKEAに行ったとき、これが似合いそうな気がしたので買って、取り付けてみたらぴったりでした」。
灯りは他に、FLOSのスタンドライトなどで分散させている。静謐なインテリアが、井上さんの選んだポスターを際立たせている。
ポスターでメリハリを効かせて
「ポスターは家具が全部揃ってから、最後に考えました。置いてあるものは淡い色が多かったので、ポスターでメリハリを効かせたいというのはありましたね。リビングのソファ上は、ここで写真が撮りたいと思ってもらえる、誇れる場所になりました」。
ダイニング側には、ロナン&エルワン ブルレックの兄ロナンのエディションプリントが存在感を放っている。
「住空間の中にポスターがあるのとないのとでは全然違いますね。視覚が刺激されるし、豊かな気持ちになれるのを感じます。欧米では家の壁にアートを飾るのは当たり前で、日常なんです。日本でももっと浸透していくといいと思っています」。
では、そのポスターをどのように選んだらよいのか聞いてみた。
「好きなものを直感で選ぶのが、いちばん飽きがこなくて長く楽しめる方法です。テーマでくくってしまうと、その時点で選択肢が狭くなるんです。自分の感覚で選んだものにもっと自信を持って欲しいし、飾ることを楽しんで欲しい。気軽に楽しんでもらえたらいいと思っています」。