庭付きヴィンテージマンション重厚感の漂うアンティーク家具と
緑を借景にできる大迫力の窓
同じマンション内で引越し。2度目のリノベーション。
Wさんご夫妻は、ヨークシャテリアのモモちゃんと、保護猫のちぃちゃん、くぅちゃんとの2人と3匹暮らし。2021年に築61年のヴィンテージマンションを購入し、フルリノベーションした。
「実は、以前も同じマンションでリノベーションをして暮らしていたんです。12年ほど住んで、次は庭付きの家に引っ越そうかと思っていたところ、住人の方に『隣の部屋が売りに出たよ』と言われて。以前の部屋よりは狭くなったものの、念願だった庭付き。しかも60㎡という広さに惹かれて、購入を決めました」と話すご主人。
同マンションでは住人同士の距離が近く、互いの家に行き来することもよくあるそうだ。今回設計をお願いした篠原明理さんは、引っ越して隣同士になった篠原夫妻の息子さんだ。
「篠原さん宅のリノベーションも、息子の明理さんが手がけています。インテリアのテイストが好みだったので、うちも似たような感じでお願いしました。しかもお母様はガーデニングの先生で、篠原邸の庭は手入れが行き届いていて。その庭の雰囲気も憧れでした」と続ける。
主役の庭を四六時中、眺められる空間に。
60㎡の庭を主役にするため、リビングには大きな窓を設置した。その窓から自然光や風を最大限取り込めるよう、浴室以外には扉を設けていない。
「できるだけ生活空間には扉をつけないようにしました。ひと繋がりの間取りにすることで広さを最大限、確保する狙いもあります」と話すのは、設計を担当した篠原さん。
「この部屋に暮らすのは、Wさん夫妻と愛犬愛猫。個室を設けてプライバシーを守るというよりは、それぞれが作業をしている間もお互いの気配を感じられる。そんな距離感を意識しました」と続けた。
庭には前の住人が残していったツツジや柚子のほか、果樹や落葉樹など四季を感じられる植物が植えられている。季節の変化を少しも見逃さないよう、家のあらゆる場所から庭を眺めることができるよう設計したのもこだわりだ。
「キッチンを拡張し、庭に少しはみ出すような形でステンレスのカウンターをぐるっと回しています。そうすることで、料理中はもちろん、カウンターで仕事をしていても外の景色が視界に入ります。また、リビングの窓際には腰の高さほどのベンチを造りつけました。腰をかけたときに庭と室内の境界がなくなり、外の環境を中に持ち込んだような繋がりを感じられます」と続けた。
低い境界線で、お隣さんの美しい庭も借景に。
隣の庭との境界線は、膝まで届かない程の低い柵のみ。庭の管理は目の前に住む人が行うというルールだ。
「愛犬のモモちゃんは、庭をドッグランのように使っています。時折、お隣のワンちゃんがうちの庭までやって来て、一緒に遊ぶこともありますよ。猫たちもキャットウォークやベンチから外を眺められるので、1日中飽きることがなさそうです」と話すのは奥様。互いに隣の庭までも借景にする緩やかな境界線は、ここに暮らす人やペットたちにとって心地のいいものになっている。
休日はもっぱら庭の手入れや、室内の植物の世話に勤しんでいるというお2人。
「私の管轄はハーブやネギや大葉なんかを植えている家庭菜園の一角だけ。あとはほとんど主人の趣味なので、彼が担当しています。草むしりは年中必須項目ですが、やっぱり庭があるのは癒されますね」と締め括った。