デザインを楽しむリノベーション 夫婦それぞれの思いを叶えた
名作椅子ギャラリーのある家
高台の大型マンションをリノベ
「下の子の育休中に、近所を散歩していて、このマンションが気になったんです」
緑いっぱいの敷地内に何棟もの住居棟が建つ築45年の大型集合住宅。84㎡強の1室を、Uさんご夫妻は約1年前にフルリノベーションした。
「高台なので眺望がいいんです。天気によっては富士山も見えるんですよ。何より、子どもの小学校・保育園が敷地の隣にあって、道路に出なくても通えるという安心感がありました」
もともとリノベーションに興味があり、様々な情報を集める中、7年前から気になっていたnuリノベーションに依頼。
「結婚当初は新築も見たのですが、間取りが決まっていると自分たちの暮らしに合わせにくいなと思っていました。夫婦それぞれのこだわりがあるので、設計デザイナーの方と毎週相談を重ねながら、自分たちに合った空間を考えていきました」
ギャラリーありきで計画
リノベーションには、ご夫婦それぞれに強いこだわりがあった。最優先したのはご主人の名作コレクションを眺めるスペースを設けること。
「高校生の時から『Hot-Dog PRESS』のインテリア特集や『Casa BRUTUS』を見て、イームズなどミッドセンチュリー家具に憧れていました。少しずつ買い集めていき、今は21脚ほど持っているのですが、前の賃貸では出しきれず隅に追いやっていて。それでは意味がないなと」とご主人。
そこで、リビングの壁沿いに2段になったラックを造作し、椅子をずらりと陳列。
「原宿のキャットストリート沿いにあったインテリアショップ『hhstyle』 のディスプレイがずっと頭にあり、それを再現してもらったんです。目線の先に椅子があるのが理想だったので、棚は2段じゃないとだめでした(笑)」
部屋全体の間取りはこのスペースをどこに設けるか、からスタートしたそう。
「土間を設けてそこに置くかとか、キッチン側にするか、とか。でもいちばん陽が当たる場所でソファに座って眺められる、リビングのこの位置にして正解でした」
広々としたLDKの中に、グレーのタイルで床を切り替えたスペースは、照明も効果的に施され、ショールームかギャラリーのよう。
「本当はこのスペースだけガラスで仕切るのが理想だったのですが、予算の関係で断念しました。その代わり、廊下との間に一部分だけ取り入れています(笑)」
最近は新たに塊根植物にもはまり、ユニークな樹形のプランツが増殖中。椅子とグリーンを愛でる生活を楽しんでいる。
家事・生活動線を追求
同じ大学で共にプロダクトデザインを専攻した奥様がこだわったのは、“自分たちの動きと持ちものに合わせた間取り”。LDKまで視界が抜ける広々とした玄関に隣接させて、回遊できるウォークスルークローゼットを設けた。
「家に入ってまずコートをかけ、そのまま回遊して服を着替えて、洗面、バスルームへと流れる動線を考えました。生活用品を一括にまとめたかったので、持ちものの容量から設計デザイナーの方に計算してもらい、スペースを決めています」
ランドリーの脇は、洗濯後の衣類を最短で片付けられる動線を確保。整理収納アドバイザーの家のように考え尽くされている。
「玄関は土間にしたかったのですが、マンションの制約で実現できなくて。雰囲気だけ残そうと、土間を考えたスペースを三和土(たたき)と同じグレーの色味でつなげました」
玄関を挟みウォークスルークローゼットと水廻りの反対側のスペースには、カーテンで仕切ったベッドルームとキッズスペースが。
「基本的に仕切りはつけたくなかったんです。後から自由に変更できるよう余白を残し、今は緩くゾーニングしています。仕切らないと寒いかなと思ったのですが、以外と温かいし、夏もエアコンをつければ涼しくて効率もいいですね。掃除もしやすくて助かっています」
リノベらしさを残してデザイン
「天井は“リノベしたぞ”という感じを出すためスケルトンにしました(笑)。所々、建設中に書かれた文字がそのまま残っているのが面白くて。これも憧れのひとつだったんです」
もともと無垢のオークを敷いた床は、お子さんが大きくなるまでは遮音性のあるベージュのカーペット敷きに。
「木目が美しいので残念なのですが、今は温かみもあっていいかなと思っています」
空間全体を黒とグレーと白、それに木目の色で統一。大きな黒いオープンキッチンが、LDKの中でアクセントとなっている。
「たまたま入ったスターバックスで、リブパネルがあしらわれているのを見ていいなと思い、キッチンの腰壁に黒のリブパネルを取りつけてもらいました。空間の印象を引き締めてくれていると思います」
憧れだったジャン・プルーヴェのダイニングテーブルも、入居に合わせて購入。インテリアへの思いが炸裂した。
「今は開放的な空間の中でインテリアを楽しんでいます。いずれ子どもが大きくなったら個室を設けることも考えていますが、その場合も椅子ギャラリーには手をつけません(笑)。やりたいことを実現できて満足感が高いですね」