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空間のトータル提案Part1ライフスタイルと動線で考える
リノベーションのアイデア

間取りは生活スタイルから決める

一級建築士でありインテリアコーディネーター、さらにライフオーガナイザー®でもある前田彬子さんのご自宅に伺った。3年前、築20年のマンションを購入し、もちろん自分でプランニングしてリノベーション。
「夫も私も設計の仕事をしてきたので、戸建てを建てるかマンションリノベにするかで考えました。間取りに合わせて生活するのではなく、生活スタイルに合わせて間取りを決めたいと思うんです」。
リノベ前提で、選んだ部屋は2階の東向き。
「子供たちが走りまわっても音を気にしなくていいので、下が非住戸の2階の部屋は都合が良かったんです。また、夫は夜遅く帰ってくるので、家で過ごす時間は朝がメインになります。だから、東向きで光が朝入り、気持ちよく過ごせる部屋が良かったですね」。
ライフスタイルに合わせて選んだ部屋を、動線を考えてプランニング。プロが自分のために考えたリノベの工夫を見せてもらった。
朝、心地よく光が届けられる東向きのリビング。結婚記念に購入した大きなサイズのダイニングテーブルが、きれいに収まるかどうかも考えたそう。

朝、心地よく光が届けられる東向きのリビング。結婚記念に購入した大きなサイズのダイニングテーブルが、きれいに収まるかどうかも考えたそう。

独立していたキッチンの位置を変え、オープンな対面式に。さらにまわりに梁を設けてフレームのように縁どりをした。リビング側にはニッチを設置。ダイニングテーブルは、「I+STYLERS」のもの。

独立していたキッチンの位置を変え、オープンな対面式に。さらにまわりに梁を設けてフレームのように縁どりをした。リビング側にはニッチを設置。ダイニングテーブルは、「I+STYLERS」のもの。

梁を設けて意匠性を高める

一度スケルトンにした空間は、床に無垢のホワイトオークを張り、壁は白く塗装。リビングの天井のみやさしい色合いのアルダー材を張った。天井にはダウンライトは取り付けず、ルイス・ポールセンのペンダントライトをふたつ。
「木を張った天井はフラットにしておきたいので、何も施したくはありません。それに対して作業をするキッチンは明るさが必要なので、ダウンライトをつけるために、天井を壁と同じく白で塗装しました」。
何気ない空間は、実は細かな計算が隠されている。例えば、ダウンライトをつけたキッチンはリビングと明確に区分けするために、あえて天井下に梁を作って、フレームでキッチンを取り囲むように見せた。
「リビングのテレビ台側の天井下も、本当はなくてもいい梁なんです。そちら側には外せない大きな柱があるので、目立たせないよう梁をつけました」。
キッチン内もダクトを隠す梁をそのまま連続させるなど、美しく見せるための工夫があちこちに施されている。
テレビ上の天井に注目。右手前の柱を目立たせないためと、壁が間延びして見えるのを避けるために、あえて梁を設けた。

テレビ上の天井に注目。右手前の柱を目立たせないためと、壁が間延びして見えるのを避けるために、あえて梁を設けた。

キッチンの灯りは何段階にも調光・調色が可能。

キッチンの灯りは何段階にも調光・調色が可能。

何があったら便利かを考える

「キッチンは対面にしたくて、位置を変えて奥にパントリーを設けました。動きを考えて設計したので使いやすいですね」。
前田さんのパントリーは、食料品や食器を収めているだけではない。
「買いものから帰ってきた時、必ず立ち寄ることになるのがキッチンです。買物袋だけでなく、バッグもここに置いた方が楽なので、パントリーにバッグ置き場を設けました」。
仕事関係の書類や、お子さんの学校のプリントなどもすべてここに。
「“ここに何があったら便利か”が大事で、“こうでなければいけない”というのはないですね」。
キッチンの収納棚は、収める食器のサイズを予め計って造作。
「どこに置いていいかわからなかったサランラップの置き場も確保しました。また、コンロの横が中途半端に狭いのが嫌で、お皿が置ける程度の幅に設定しました。こうすると作った料理をお皿に運びやすくて便利なんです」。
ライフオーガナイザー®としての視点も活かされている。
季節の花をさり気なく。

季節の花をさり気なく。

使用頻度が高い上に置き場に困るサランラップはここ。細かな動きを考えて。

使用頻度が高い上に置き場に困るサランラップはここ。細かな動きを考えて。

コンロ横はお皿を置ける幅に。お鍋やフライパンからサーブしやすい。

コンロ横はお皿を置ける幅に。お鍋やフライパンからサーブしやすい。

1枚ずつ立ててお皿を入れられるように造作。寿司桶も取り出しやすい。 

1枚ずつ立ててお皿を入れられるように造作。寿司桶も取り出しやすい。 

お椀をふせたときの高さを考えて、引出しの深さを決めた。

お椀をふせたときの高さを考えて、引出しの深さを決めた。

カトラリーは斜めに。容量が増えて、隙間が生まれた。

カトラリーは斜めに。容量が増えて、隙間が生まれた。

パントリーの一角。食材からOA機器まで、普段使うものをここに。

パントリーの一角。食材からOA機器まで、普段使うものをここに。

必要なものを何でも収めるパントリー。ファイルボックスやカゴなどで細かく分けて収納。

必要なものを何でも収めるパントリー。ファイルボックスやカゴなどで細かく分けて収納。

キッチンの入り口に本棚を。リビングにも近くて便利。奥は鏡を備えてメイクコーナーに。

キッチンの入り口に本棚を。リビングにも近くて便利。奥は鏡を備えてメイクコーナーに。

玄関を彩るスペースを設ける

玄関は家に足を踏み入れたとき、最初に目に入る場所。前田さんはここを大切に考えた。
「ずっと欲しかったテーブルがあって、そのサイズから間取りを考えたと言ってもいいくらいなんです(笑)。玄関ホールは家に入る時ワンクッションとなる場所。素敵にディスプレイできるようスペースを確保しておきたいですね」。
水回りは、廊下側に向いていたトイレのドアの位置を変え、バスルーム、ランドリー、トイレをすべて一体に。
「スペースがなかったので、反対側から空間をとり収納を設けました。この収納棚によってL字型の部屋になるので、奥で着替えなどしても見えないのが良かったです」。
収納は大きなものを一カ所にまとめるより、適材適所にあるのが便利、という考えも取り入れた。
「ウォークインクローゼットは場所を取るし、デッドスペースがあったりして意外と使いにくいんです。それよりも使う場所に使うものを収めておきたいと思います。動線に合わせて収納を設けたのも、暮らしやすさのポイントのひとつですね」。
コンクリートを敷いたシンプルな玄関。共用部のため変えられなかったドアは白いシートを貼った。

コンクリートを敷いたシンプルな玄関。共用部のため変えられなかったドアは白いシートを貼った。

置きたかった「北の住まい設計社」のコンソールテーブル。リビングのtv上同様、壁が間延びしないよう梁を造作。梁に合わせて鏡の高さを設定した。

置きたかった「北の住まい設計社」のコンソールテーブル。リビングのTV上同様、壁が間延びしないよう梁を造作。梁に合わせて鏡の高さを設定した。

洗面所の入り口。右手にトイレ、ランドリー、左奥にバスルームがある。左手前の棚は、脱衣を仮置きできるようスペースを空けている。 

洗面所の入り口。右手にトイレ、ランドリー、左奥にバスルームがある。左手前の棚は、脱衣を仮置きできるようスペースを空けている。 

洗面台は、オークの突板にホワイトふき取り塗装をかけた素材で造作。下はオープンにして脱衣カゴなどを置くスペースに。

洗面台は、オークの突板にホワイトふき取り塗装をかけた素材で造作。下はオープンにして脱衣カゴなどを置くスペースに。

クローゼットはベッドルームに。スペースを活かせるよう棚の取り付け方に工夫あり。かけておくもの、畳むものなどを考えて無駄なく収納。

クローゼットはベッドルームに。スペースを活かせるよう棚の取り付け方に工夫あり。かけておくもの、畳むものなどを考えて無駄なく収納。

一級建築士・前田彬子さん。間取り、インテリア、収納をトータルで提案する「ie(アイエ)」代表。

一級建築士・前田彬子さん。間取り、インテリア、収納をトータルで提案する「ie(アイエ)」代表。

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