確かな目が選んだ生活道具  慈しみ、ともに暮らす 「日用美」店主の日用品

もの選びの達人が愛用 生活を穏やかに彩る
「日用美」店主の日用品

温もりが伝わる道具とともに

鎌倉で器などの日用品を扱うお店「日用美」を営んでいた浅川あやさん。3年間のクローズ期間を経て、今秋、相模湾を望む山に囲まれた街、二宮で再オープンした。
「華美ではないけれど生活を穏やかに彩ってくれるものを」。
浅川さんのセレクトするものは、どこか温かく、手にやさしくなじむものばかり。そんな浅川さんが自宅で自分や家族のために愛用するものとは? お店とともに移り住んだ自然に囲まれた家で、日々寄り添って暮らす日用品を紹介していただいた。
硬質なモルタルの床に、愛用する家具や器が温もりを添える。ダイニングテーブルとチェアはプロダクトデザイナー松岡智之さんのデザイン。
硬質なモルタルの床に、愛用する家具や器が温もりを添える。ダイニングテーブルとチェアはプロダクトデザイナー松岡智之さんのデザイン。
図面を描いて造作したキッチン。扉を付けずオープンに。
図面を描いて造作したキッチン。扉を付けずオープンに。
キッチンに立つ浅川さん。ここからは家を取り囲む森の木々が眺められる。
キッチンに立つ浅川さん。ここからは家を取り囲む森の木々が眺められる。

使い込んで味が出るものを

全国各地の工房などを訪ねては、新たな作家の作品を発掘する浅川さん。
「できればまだ知られていない、若い作家さんを見つけたいと思っています。調理器具を選ぶ基準はまず機能的であること。そして見た目にキレイであるかどうかも大事ですね」。
そうして見つけてきたキッチン用品は、ご自身でも長く愛用することになるものがたくさん。どこか原始的な魅力を感じさせる土鍋や、木目が美しい鍋敷、1本1本手でつくりあげられたスプーンなど…。
「火にかけることで色合いが変っていったり、傷がつくことで味わいを深めたり。使い込むうちにどんどん味が出てくるものが好きですね」。
経年により魅力を増したものたちが、オープンな収納の中で静かに存在感を放っている。
棚板の端は壁に埋め込みしっかりと取り付けている。手仕事の技が伝わるザルや鍋敷を壁に掛けて。
棚板の端は壁に埋め込みしっかりと取り付けている。手仕事の技が伝わるザルや鍋敷を壁に掛けて。
左は、金沢の伝統的な桐工芸品をつくり続ける、岩本清商店の桐の鍋敷。美しい木目がお気に入り。素朴な白い土鍋は、伊豆の山中に暮らす陶芸家・渡辺隆之さんの作品。右は鎌倉・WATOの銅鍋。鍋にフタがかけられるのが便利。使い込んだ本体は深みのある色に変色している。 
左は、金沢の伝統的な桐工芸品をつくり続ける、岩本清商店の桐の鍋敷。美しい木目がお気に入り。素朴な白い土鍋は、伊豆の山中に暮らす陶芸家・渡辺隆之さんの作品。右は鎌倉・WATOの銅鍋。鍋にフタがかけられるのが便利。使い込んだ本体は深みのある色に変色している。 
FD STYLEのキッチンツール。新潟県・燕三条で製造されるオールステンレスフッ素加工の素材と、機能性を考えた形状に加え、マットな質感とデザイン性がポイント。テーブルトングは器に掛けて、薬味オロシはそのままテーブルに出すことができて便利。
FD STYLEのキッチンツール。新潟県・燕三条で製造されるオールステンレスフッ素加工の素材と、機能性を考えた形状に加え、マットな質感とデザイン性がポイント。テーブルトングは器に掛けて、薬味オロシはそのままテーブルに出すことができて便利。
木工作家・堀宏治さんの作品。もともと持っていたクルミの木のお皿に合わせて、オーダーでフタをつくってもらったそう。フタの上部とフォークはウォルナット。木のバターケースはバターが固まりすぎず、ほどよいやわらかさがキープできる。
木工作家・堀宏治さんの作品。もともと持っていたクルミの木のお皿に合わせて、オーダーでフタをつくってもらったそう。フタの上部とフォークはウォルナット。木のバターケースはバターが固まりすぎず、ほどよいやわらかさがキープできる。
スプーン作家・宮薗なつみさんのmiyazono spoon。グラタン用、スープ用、カレー用など様々なアイテムがある。すくう部分のみ漆をかけていて、口に入れたとき感じらる感触がお気に入り。
スプーン作家・宮薗なつみさんのmiyazono spoon。グラタン用、スープ用、カレー用など様々なアイテムがある。すくう部分のみ漆をかけていて、口に入れたとき感じらる感触がお気に入り。

大切な器も日々使いまわす

「器は、骨董品から現代の作家ものまで色々と持っていますが、やはり使って味が出るものが好きです。産地で選ぶことはなく、出会って心惹かれたものを集めています」。
価値の高い貴重品も、すべてしまい込まず日常的に使いまわしているという。
「器は飾るものではないと思っているんです。繊細そうに見えてがんがん使っても大丈夫なものが好きですね」。
食器棚には自然で素朴なものから、ちょっと華やかでかわいい感じのデザインまで。
「最近は薄くて軽い感じのものが好きですね。湯のみなら、手のひらに収まるくらいの小ぶりなサイズ感のものに愛着を感じます。両手でそっとくるみながら、ちびちびとお茶をいただく時間が幸せです」。
棚に並ぶたくさんの和食器やお椀。眺めるだけでも楽しい。
棚に並ぶたくさんの和食器やお椀。眺めるだけでも楽しい。
松本で「半農半陶」生活を送る青木郁美さんのコーヒーカップとプレート。半陶半磁で薄くて軽く、使いやすいのが特徴。ライフスタイルにも共感しているそう。
松本で「半農半陶」生活を送る青木郁美さんのコーヒーカップとプレート。半陶半磁で薄くて軽く、使いやすいのが特徴。ライフスタイルにも共感しているそう。
手前は岐阜県多治見市「ギャルリももぐさ」主宰の安藤雅信さんの作品。直火OKで使いやすい。漆のお皿とお椀は、ジーンズ感覚でどんどん使いたいKINJUのもの。左は伊万里焼。
手前は岐阜県多治見市「ギャルリももぐさ」主宰の安藤雅信さんの作品。直火OKで使いやすい。漆のお皿とお椀は、ジーンズ感覚でどんどん使いたいKINJUのもの。左は伊万里焼。
左側のガラスの器は吹きガラス作家アキノヨーコさん(手前)と佐藤玲朗さん(奥)、中央の陶器の器は北九州門司で活動する濱田正明さん。その後ろの茶碗は奈良に青蛾窯を構える松元洋一さん、右手前の陶器に漆をかけた黒いお皿は渡辺隆之さん。奥のお椀は能登の塗師・赤木明登さんの作品。 
左側のガラスの器は吹きガラス作家アキノヨーコさん(手前)と佐藤玲朗さん(奥)、中央の陶器の器は北九州門司で活動する濱田正明さん。その後ろの茶碗は奈良に青蛾窯を構える松元洋一さん、右手前の陶器に漆をかけた黒いお皿は渡辺隆之さん。奥のお椀は能登の塗師・赤木明登さんの作品。 
手前のガラスのコップ2点はアキノヨーコさん、粉引の湯のみは濱田正明さん、奥の絵付けの湯のみ2点は佐藤もも子さん。その右手は伊万里焼。ちょうちょの柄の湯のみは、華やかな柄で人気の石木文さん。
手前のガラスのコップ2点はアキノヨーコさん、粉引の湯のみは濱田正明さん、奥の絵付けの湯のみ2点は佐藤もも子さん。その右手は伊万里焼。ちょうちょの柄の湯のみは、華やかな柄で人気の石木文さん。
イギリスの19世紀の技法「モカウェア」でつくった片瀬有美子さんの作品。焼く前の素地に絵具を混ぜた液体を垂らすことで、複雑で繊細な模様を描き出している。
イギリスの19世紀の技法「モカウェア」でつくった片瀬有美子さんの作品。焼く前の素地に絵具を混ぜた液体を垂らすことで、複雑で繊細な模様を描き出している。

自然の中で楽しむ日用品との暮らし

急な坂道を登りきると現れる「日用美」の店舗と浅川さんの新居は、ひっそりと森に囲まれるように建っている。店舗は築80年程の洋館をリノベーションし、住居はその隣に新築した。
「造り付けの本棚など、前の家でできなかったことが実現できました。キッチンは、もともと持っていた生活用品に合わせて棚を設計してもらったり、主人も使いやすいようにカウンターの高さを設定しています」。
扉を付けていないオープンな吊り収納には、福岡の実家から持ってきた骨董品の器や、大きな寿司桶なども。モルタルの床に無垢の木の家具、そこに散りばめられた温もりのある日用品が、穏やかで豊かな暮らしを偲ばせる。
プラスチックではないものをネットで探して見つけたライスストッカー。このサイズに合わせてキッチンの背面カウンターを設計したそう。
プラスチックではないものをネットで探して見つけたライスストッカー。このサイズに合わせてキッチンの背面カウンターを設計したそう。
お掃除道具を壁に吊るして。米澤ほうき工房が手作りする、約150年の歴史を持つ松本箒は、なんと材料のホウキモロコシから生産。
お掃除道具を壁に吊るして。米澤ほうき工房が手作りする、約150年の歴史を持つ松本箒は、なんと材料のホウキモロコシから生産。
約80年前迄、別荘として使われていた380坪程の土地に、一級建築士の資格を持つご主人がプランを練って新築。自然に寄り添う暮らしが営まれている。
約80年前迄、別荘として使われていた380坪程の土地に、一級建築士の資格を持つご主人がプランを練って新築。自然に寄り添う暮らしが営まれている。
当時のまま残っていた洋館はリノベーションして「日用美(http://www.nichiyobi.net)」店舗に。陶器やガラスなどの器を中心に、全国からセレクトした日用品を扱う。企画展も開催。
当時のまま残っていた洋館はリノベーションして「日用美」店舗に。陶器やガラスなどの器を中心に、全国からセレクトした日用品を扱う。企画展も開催。
「日用美」店主・浅川あやさん。竣工後購入したハンス・J・ウェグナーのデイベッドで。
「日用美」店主・浅川あやさん。竣工後購入したハンス・J・ウェグナーのデイベッドで。