受け継がれるものづくりと出会う お気に入りを見つけて
自由な発想で空間をデザイン
インテリアの選択肢を広げる機会として
「自分らしい暮らし」をイメージするとき、インテリアと内装は切り離せないもの。リノベーションのワンストップサービス「リノベる。」では、オプションで行っているインテリアコーディネートサービスを利用する人が、約7割に及ぶという。インテリア選びの選択肢を広げてもらいたいと、昨年、表参道にある本社併設のギャラリー「b1.」で、アルケオロジー スタジオ、ギャラリーネオと共に、エキシビション「建築家の椅子30脚展」を開催した。展示されたのは、フレンチミッドセンチュリーからポストモダンまで、時代も国籍も様々な名だたる建築家の椅子。
「インテリアのエキシビションをスタートしたのは2021年から。ヴィンテージ家具はインテリアの発想の幅が広がるという意味で、ずっと取り上げたいと思っていたテーマのひとつでした」(リノベる。 インテリアデザイン部 古久保拓也さん)。
1脚のヴィンテージチェアとの出会いから、空間全体のコーディネートに新しい着想が生まれることもある。
「セレクトした椅子はそれぞれ、デザインの美しさはもちろん、設計時の逸話や歴史など、人を魅了する力があります。古いものは1920年代から、新しいものは80年代のものまで。イノベーティブなものとして創られた椅子や、時間をかけて様々な人の手を渡り、海を渡ってきたものなど他にはないセレクトにしました。エキシビションを通じてストーリーのあるものや愛着を感じるものと暮らすことの豊かさに触れてもらい、インテリアをきっかけに自分らしい暮らしを楽しむ方が増えてくれれば嬉しいです。最終的にその流れが日本のインテリアの質の向上につながっていく好循環をつくれたら最高ですね」。
見て触れて名作を身近に
「建築家の椅子30脚展」では、時代も国籍もブランドも異なる椅子が並んだ。座ることもできるという体験型だったのもユニークな点。
「フラットな目線で純粋な感想を持っていただきたかったので、有名無名・価格などの要素で見せ方に強弱をつけず、あえてすべて同じ高さ、距離感で展示しました。デザインも素材も座り心地も大きく異なるものを同時に見ることで、選択肢の幅は広がりやすくなります」。
多様なバリエーションに触れることにより、好きなものを顕在化させやすくなるかもしれない。
「かしこまって眺めるだけでは感じられない手ざわりがあることで、名作家具、ヴィンテージチェアが一気に身近なものになります。家に置いたときのイメージやその椅子に合う内装のデザインなどが具体的になることが、自分らしい暮らしを考える一歩になると考えています」。
琴線に触れるインテリアに出会ったら、背景にあるストーリーや歴史を知り、それに共感することでモノ選びの視点は広がっていきそうだ。
「椅子に限らず、好きなモノから始まる家づくりがもっとあってもいいと思うんです。実際に、好きなことや好きなものから発想を広げて家づくりをしたいという希望も、多く頂きます」。
リノベーションは中古住宅を受け継いで、自分だけのストーリーを紡ぎ始めるタイミングともいえる。
「数多くあるインテリアの中から、長く使えて受け継いでいけるものづくりを行っているブランドやプロダクトを、積極的にご紹介できたらと思っています」。
お気に入りからスタートした実例
ひとつの家具をベースにしたリノベーションは、これまで「リノベる。」にも数多い。憧れのデイベッドから始まった、川崎市の夫婦二人暮らしの実例をご紹介いただいた。
「HAY hutteのナップデイベッドが住宅購入のきっかけだったそうです。背中にラタン、脚には真鍮が使われたデイベッドに似合う家にするため、所々に同素材を取り入れてなじませていきました」。
照明カバーに真鍮を取り入れたり、造作キッチンとデイベッドの色調を揃えたり。やりすぎることなく、さり気なくコーディネート。
一方で、愛着のある家具から住まいづくりが始まった事例も紹介いただいた。
「お祖母様の嫁入り道具である茶箪笥をどうしても置きたいということで、そこから発想を広げたリノベーションも行いました。箪笥に合わせて、フローリングは木目が引き立つ自然派塗料で仕上げたナラ材を使用しました」。
LDKの天井には、吊り下げ配線ダクトレールで、少しアジアンテイストをプラス。大切な家具を引き立てる工夫が随所に散りばめられている。
「長く受け継いでいきたいものを見つけて、時代を超えて循環させていくことをご提案したいです。ロングライフを見据えた空間づくりから、暮らしのストーリーを描いていっていただきたいですね」。