
色を空間に取り入れる鮮やかな色も、白色も。
色で自分を表現する
色は心と深くかかわる
海外の家でよく見かける、カラーを取り入れたインテリア。我が家も色を加えて素敵な空間に、と思っていても、踏み出せない人も多いだろう。そこで、カラー使いのコツや、カラーを使うことの意味について、AKKA COLOR PLANNINGのかつうらあきつさんと、川上あすかさんに伺った。
「壁などインテリアに色を用いることを冒険だと思われている方も、まだまだ多いと思います。でも、色はその人の感じ方、暮らし方に大きくかかわってくるものです。色彩心理というものがあり、色相は生理的に身体に直接影響するとも言われています」(かつうらさん)
「光の波長が色に当たったとき、特定の波長が目から入って脳に届き、自律神経やホルモンを刺激します。例えば赤ならアドレナリンや交感神経を刺激したり、青であれば副交感神経を刺激して心拍数を抑えるなどの効果があります」(川上さん)
色の効果を意識はしているものの、とりあえず「白」を選び、無難にまとめてしまいがち。
「実は、カラーリストからすると白はいちばん難しい色なんです。生活していくと色々なものが混じり合っていきますが、白い壁は何もまとめてくれなくて、雑多感が出やすいのです」
目立たない色でも、一面だけでも、カラーを加えることで全体にまとまりを生んだり、フォーカルポイントをつくったりして、空間を整えてくれる。白で統一しておけば安心、というイメージをまず変えてみる必要がありそうだ。

大胆な色使いが新鮮。『FARROW&BALL (正面壁上部)No.310 Beverly / (正面下部腰板)No.306 Selvedge』

全く違う色相を調和させるテクニックを掴みたい。

豊富な色のサンプルから選んで、無難からの脱却を。

かつうらあきつさん。自宅のDIYペイントもよく行っているそう。

川上あすかさん。海外駐在経験を活かしたカラーコーディネートを提案。
白は同じグループでグラデーションを
「白にこだわりのある方も、もちろんおられます。白といっても1色ではなく些細な赤みや黄み、紫みなど様々なニュアンスがあるので、あえて色々な表情をもつ白を複数色合わせて使うのもよいでしょう。そうした白のコーディネートのポイントは、同じ特徴を持つグループの中で選んで使い分けることです」
お話を伺ったのは、イギリス発の最高品質の塗料ブランドFARROW&BALLの銀座サロン。
「例えば、この店舗の白に見える壁は、ややグレーが入っていることで少し高級感を出しています。そして、床から段々と上にいくに連れて明るい色となっていくように塗り分け、折り上げ天井のところで最も明るい白を使っています。色は明るくなればなるほど軽さを感じやすく、いちばん高いところにこの空間の中でいちばん軽い色を使うことで、天井を高く見せているんです」
白であっても、そのニュアンスの違いでグラデーションをつけることで視覚的な効果を高められる。その時、大事なのはベースを揃えること。
「多くの色にはブルーベースとイエローベースがあり、同じベースの中で使い分けると、まとまりがつきやすくなります」
ペイントでもクロスでも、同じベースの色を使うことで、カラフルなコーディネートをしてもチグハグになるのを防いでくれる。

FARROW&BALL銀座サロン。1946年に創業。英国ドーセット地方の工場で生産される、身体や環境にやさしい製品を扱う。

白に見える壁面は単一ではなく、グラデーションがつけられている。折り上げ天井部分は最も明るい白に。

サロン内で使われているペイントのサンプル。白からダークグレーまで、同じベースで色の濃淡をつけている。

色を確認できるカラーチャート。リラックス、ウォーム、トラディショナルなど6つに分けた白のグループを提案。

白のグラデーションで統一した事例。洗練された空間は、床材、壁紙、巾木、キッチンの床やタイル、面材まで同じベースで選んでコーディネートしたもの。スタイリング:インテリアスタイリストRie Nakagawa((VIVRE.LTD)。
色の効果的なあしらい方
「一面だけ鮮やかな色を取り入れると、アクセントウォールがつくれます。その場合にも、他の壁がブルーベースかイエローベースかを押さえて色を選ぶのが大事ですね。例えば、黄みがかっているベースの中に、青みがかったピンクを合わせると、そこだけ浮き上がってしまいます。逆に鮮やかな色であっても、ベースを合わせれば、うまくなじませることができます」
色を使う面は、入り口と対角線上にあるところが理想だそう。
「ドアからいちばん遠いところにアクセントウォールがあると、目線が奥に誘導されるので奥行き感を出すことができます。ちょうどよい場所がなければ、できそうなところでも構いません」
リビングでおすすめしたいのはテレビの背面をペイントすること。
「黒いテレビはどうしても悪目立ちしてしまいますよね。そんな時も、白い壁の前に置くよりは、テレビの背面の壁をグレーなどで塗装しワンクッション置くことで、うまくその空間に溶け込ませることができます」
色を入れたアクセントウォールには、アートやポスターなどを飾ると、リビングの見せ場となる。
「作品に合わせて、壁とのカラーコーディネートを楽しむのもおすすめです。抽象画であれば雰囲気を邪魔しないベージュやグレージュなどのニュートラルカラーを。具象画であれば作品内に使われているカラーを壁に用いると、一体感を出しやすくなります」
廊下や奥にある部屋など、別の空間がリビングなどから見える場合には、空間によって色を塗り分けることで、奥行きを生んだり、住まいにストーリー性を感じさせる効果も。カラーコーディネートの楽しみは尽きない。

TVの背面を黒に近いグレーでペイント。重たさを感じさせるTVをカバー。

できればドアと対角線上にアクセントウォールを。グリーンはナチュラルで温かみや親しみを感じさせやすいので、初心者におすすめのカラー。インドアグリーンともマッチする。

手前と奥の部屋の壁の色を変えることにより、奥行き感を生んでいる事例。『FARROW&BALL(白い壁)No.300 Stirabout』

同ベースで揃えつつ、違った配色に。ストーリー性、創造性が生まれるコーディネート。『FARROW&BALL (手前壁)No.W55 Duck Green /(ドア・巾木等)No.W1 Snow White』
条件を考慮した色選びを
Farrow&Ballで扱う水性塗料は132色。豊富なカラーの中からセレクトして、寝室、子ども部屋、洗面などの個室に使い、色で遊んでみるのもいい。
「トイレなどの個室は冒険しやすいと思います。特におすすめなのはウォークインローゼット。色があるとただの収納スペースが特別な場所となり、服も映えて気分が高まりますよ」
家の中の各スペースによって、ふさわしい色の選び方はあるのだろうか。
「同じリビングでも家族構成やライフスタイルによって、過ごし方は変わってくるので、どう過ごすかが大事ですね。小さなお子さんがいて楽しい感じにしたいならリビングは黄色系にして、勉強に集中しなければいけない年頃のお子さんがいる場合は、集中できる青などの寒色系、お仕事スペースでやる気を出したりディスカッションするなら、積極性を後押ししてくれたりコミュニケーションが捗る赤やオレンジなど暖色系が向いています。でも色相ですべて分けられるわけではないんです。例えば書斎なら、色よりも明るさや鮮やかさが大事で、一見地味かなと感じるくらいやや暗めの落ち着いたトーンの色を選ぶと、大人っぽくシックな空間がつくれます。なお、大きな窓のあるリビングなら、大胆に暗めの色をもってきても大丈夫です」
色選びは、陽の入り方など、部屋の条件にも影響される。
「北向きの部屋であれば、温かみを感じさせるイエローベースのピンク、午後から室温が上がりやすい西向きの部屋なら、温度感を感じさせない中性色の緑か紫系なども選択肢の一つ」
さらに、光によっても色の見え方は変わってくる。
「照明が蛍光色か電球色かは、大きく影響します。オレンジの光を出す電球色の照明には、反対色であるブルーでかつ繊細なトーンの色をもってくると濁って見えてしまうので、青を感じたい場合は、照明光のオレンジ色に負けない少し鮮やかさを感じるトーンにするなど調整が必要です」

大きな窓があるため、抑え目のブルーグレーも映えている。ナチュラルにもシックにも見せられるおすすめカラー。『FARROW&BALL (壁)No.299 De Nimes® /(天井)No.291 School House White®』

ブルー系のピンクを使ったFARROW&BALL銀座サロンのトイレ。トイレなどの個室は、初心者でもトライしやすい。

ドアもペイントしやすい場所。やわらかな系統の黒が明るいピンクと調和。額装の中の色ともリンクしている。『FARROW&BALL (巾木・天井)No.2001 Strong White® /(壁)No.286 Peignoir®/(ドア)No.CC1 Tar』

同じ壁の色でも照明によって見え方が変化する。こちらは、青白い光に最も近い「昼光色」の照明を使った場合。

オレンジがかった暖かな「電球色」を使った場合。照明の光の色とのバランスも考えて塗料を選びたい。

「昼白色」を使った場合。メイクする時など色をはっきり識別したいときにおすすめ。

「電球色」を使った場合。お風呂あがりなど、暖かさを感じたい洗面所に。
何度もトライして楽しむ
色の見え方には、窓から差し込む陽光や照明の光をはじめ、使う面積、周りとの色のバランスによっても変わってくるので、自分の手で正解に辿り着くのは難しい。
「リノベーションをするとき、壁の色選びは大抵最後なんですね。でも本当は床材やキッチン、建具、さらには照明などと一緒に、最初に全体の色彩計画から入っていくのがいいと思います。様々な条件も考え合わせるとなると、プロに早い段階でご相談いただくのがよいと思いますが、壁は何度も塗り直せるので、失敗を恐れずに自由に楽しんでいただけたらいいと思います」
Farrow&Ballの製品を始め、水性塗料は何度でも上から塗り重ねることが可能で、厚みが気になる心配もないそう。
「ベースカラーを揃えてつながりを持たせるのはコーディネートの基本ですが、あえて外して楽しむ上級テクニックもあります。本当に正解はないし複雑ですが、どの部屋もとりあえず同じ壁紙で揃えてしまうのはもったいないと思います。家はできて100%ではないので、無難に落ち着くことなく、何度もチャレンジして自分の表現を楽しんでほしいですね」

コロナで注目されたのが、オンラインミーティングの背景。ビジネスには、熱量を感じさせるオレンジ系のカラーなどをあしらうのも手。

ペイントと壁紙で廊下を魅力的なスペースに。壁紙の蔦の柄を活かして、細長い廊下に奥行き感を演出している。

ペイントの壁とセットで使えるFarrow&Ballの壁紙。塗料でスタンプするように制作しているので、凹凸感が感じられる。
