DIYで異空間を創造アンティークが似合う
空間を創り上げる悦び
きっかけはフレアマーケット
東京郊外の分譲マンションの一室。ドアを開けるとそこには、時空を超えたアンティーク空間が広がっていた。
「マンション購入を機に、少しオシャレに暮らしたいと思ったのがきっかけです」。と家主のroshiさん。でも、なぜアンティークなのか?
「ニューヨークに旅行した時、フレアマーケットで1個のブリキ缶に出会ったのがきっかけです。凝り性なので、そこからどんどんはまってしまいました」。“ボーナス2回分”だというキャビネット、アンティークの扉、マントルピース…。それらが一体となってシックな空間を生んでいる。
DIYで古めかしさを出す
入居前に、大がかりなリフォームは業者に依頼。和室の畳を取り、押し入れをクローゼットに。リビングと和室だった部分をワンフロアにして、フローリングを敷いてもらった。
「そこからは自力です。ベッドルームの壁紙を、ひとさし指と親指で全部はがして、壁を塗装しました。最初青を塗ったら強すぎたので、上からグレーを塗ってまた塗り…、計3回くらい塗り直しましたね」。目指したのは“空の青、雲の白、少し太陽の黄色”を象徴するとされるセザンヌのアトリエ。複雑に塗り重ねた壁の色は、光の当たり方によってもニュアンスを変え、空間に奥行きを生んでいる。
「南仏がイメージなので、わざとフシ目が出た汚い北欧杉を買ってきて、天井には梁をつけました」。これもすべて自力。さらには壁もウォールデコレーション。「ベニヤを貼って色を塗りました。モールディングの部分は蒲鉾型の木材の角を45度にカットして両面テープでつけてあるんですが、この45度というのが難しいんですよ」。
リビングの壁は、最初は白だったがその後深いグリーンに塗り直し、さらにかすれた感じに修正して、現在は珪藻土に白グレーを塗り重ねてある。「全部同じ色だと全体がのっぺりしてしまいますから、同じ白でも各面で微妙に色彩を変えています」。
花やアクアリウムの生命が宿る
何もなかったリビングとキッチンの境目には、南仏のアンティークの窓を使って扉を取り付けた。ただこれだけだと半分のサイズしかないので、下半分をベニヤと角材で自作。「小さな装飾パーツでデコレーションも考えました。上下で分かれた扉は猫の出入りにも便利ですね」。
テレビの目隠しとしてイギリスから輸入したマントルピースは、うまくなじまなかった為、窓枠に合わせることに。南仏からアンティークの格子窓も買い足して組み合わせた。「マントルピースもやはり上半分の大きさしかないので、下の土台を作り…。格子窓が重くて大変な力仕事でした」。
アンティークに似合う、としてRoshiさんが大切に考えているのが花や植物。この日はやわらかな色のオレンジの実をつけたヤドリギが、キャビネットの上に活けられていた。窓にはコケやチランジアが飾られ、ベランダではオリーブやアイビー、ビオラやパンジーなどが育てられている。「DIYは私ひとりでやりますが、妻は花屋さんなので、植物を育てるのは助かっていますね。ただベランダのガーデニングもやり過ぎると集合住宅では問題になるので、最近は家の中でアクアリウムを楽しむことにしたんです…」。
部屋づくりが人生を深める
天野尚のネイチャーアクアリウムが以前から気になっていたというroshiさん。「水槽の中に生態系をつくるというのがかっこいいなと思って。丸い花器を買ってきて水草、小さな魚を育て始めました。子供の頃熱帯魚にはまって、アマゾンとかいろんな水系を作っていたのですが、興味を持つととことん調べてしまうので、これもきっとはまると思います。アンティークに似合うかどうかは分からないけど」。
休みの日は、クラシック音楽を流しながら、じーっとこのアクアリウムを眺めるのが今、幸せなのだとか。「何でも深く追求してしまう性分なので。でもひとつ探っていくと色んなことが広がっていくと思うんです。アンティークから始まってヨーロッパにはまって文化を知りましたが、それによって日常生活が深くなった気がします。好きなように制約なく、自分の空間をつくり続けたいですね」。