和のしつらえ『春分』 春の便りが届く季節。 希望に満ちた始まりの時

和のしつらえ『春分』春の便りが届く季節。
希望に満ちた始まりの時

落ち葉の下から覗く春を楽しむ

日本の細やかな季節の移り変わりを大切にした花を発信している『花屋 務(はなや つとむ)』の橋本冠斗さん。日本の文化を再発見できるしつらえを、前回の『桃の節供』に続き、案内いただいた。

春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けた24の期間を「二十四節気(にじゅうしせっき)」と言う。日本の旧暦では、季節を表すために用いられてきた。
3月5日頃からの『啓蟄(けいちつ)』は、冬ごもりをしていた虫たちが地上に出てくる季節。
次の3月21日頃からが『春分』となる。花の季節は、梅、桃、桜と、足早に駆け抜け、緑溢れる季節がやってくる。

「桜の花が咲く頃、足元には落ち葉を分けるように菜の花が咲きます。春の訪れの季節を、桐箱に仕立てました。
足つきの桐箱は、十二単(じゅうにひとえ)を納める箱のミニチュアです」

落ち葉から顔を覗かせる菜の花、ホトケノザ、ナズナ、ユキヤナギ、笹の葉。春の力強い息吹を感じさせる設え。

落ち葉から顔を覗かせる菜の花、ホトケノザ、ナズナ、ユキヤナギ、笹の葉。春の力強い息吹を感じさせる設え。

用意するもの/桐箱、セロハン、オアシス、はさみ、花材。

用意するもの/桐箱、セロハン、オアシス、はさみ、花材。

桐箱にセロハンを敷き、ちょうどよい大きさにカットしたオアシスを入れる。

桐箱にセロハンを敷き、ちょうどよい大きさにカットしたオアシスを入れる。

最初に設えのポイントとなる菜の花をオアシスに挿していく。

最初に設えのポイントとなる菜の花をオアシスに挿していく。

茎の柔らかい菜の花は、斜めにカットすると茎の先端がつぶれてしまうので、真横にカットして挿す。

茎の柔らかい菜の花は、斜めにカットすると茎の先端がつぶれてしまうので、真横にカットして挿す。

同じ種類の花材を三角形になるように挿していくとバランスを取りやすい。

同じ種類の花材を三角形になるように挿していくとバランスを取りやすい。

ユキヤナギのような硬い枝物は斜めにカットして挿す。

ユキヤナギのような硬い枝物は斜めにカットして挿す。

完成。庭に落ちている枯葉や、足元に咲く早春の花を桐箱に写し取る。

完成。庭に落ちている枯葉や、足元に咲く早春の花を桐箱に写し取る。

『花屋 務』の橋本冠斗さん。季節のしつらえを発信・販売。ワークショップやイベント、ホテルやショップの装花で活躍中。

『花屋 務』の橋本冠斗さん。季節のしつらえを発信・販売。ワークショップやイベント、ホテルやショップの装花で活躍中。

桜の木の下で恋の歌を詠む

奈良時代は桜より梅の花を鑑賞する習慣があった。当時の貴族たちは梅の花を愛でながら詩を詠むことが多かったとされている。
平安時代になると桜の花見が主流になり、桜を鑑賞する宴を催すようになった。

〜世の中に たえて桜の なかりせば
春の心は のどけからまし〜/在原業平

お花見を娯楽として楽しむようになったのは江戸時代と言われている。
「江戸時代の日本のお花見では、桜の下で男女が歌を詠み合い、恋が始まることも多くあったそうです」
徳川吉宗が桜を植えさせ庶民が桜を楽しめるようになった。現代の我々もその恩恵を預かっている。

桜を、正麩糊、和紙屑、粘土を混ぜ合わせる紙塑の技法で仕立てた。

桜を、正麩糊、和紙屑、粘土を混ぜ合わせる紙塑の技法で仕立てた。

「桜」と「橘」の木花。桜と橘には、古来から「魔除け」「邪気払い」の力があると考えられてきた。健康と成長の祈りを込め、雛祭りには木花を飾った。

「桜」と「橘」の木花。桜と橘には、古来から「魔除け」「邪気払い」の力があると考えられてきた。健康と成長の祈りを込め、雛祭りには木花を飾った。

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