インテリアの達人が私物を公開NOMADディレクター、
滝沢時雄さんの愛用品
デンマークのインテリアブランドを取り扱うNOMADのブランドマーケティングディレクター、滝沢時雄さんに愛用品を伺った。お気に入りのアートピースや、ムーベのストレージ、照明、ホルムガードのグラス、作家の器など、長年使っている愛用品を見せていただいた。見せる収納、隠す収納、ディスプレイのコツなども必見。
アートピース
滝沢邸のリビングでまず目に入るのは、壁面に並べられたセンスのいいアートピースたち。今回は、シェルフを利用したディスプレイのコツを伺った。
「デンマークのデザインスタジオ MOEBE(ムーベ)のつくるシェルビングシステムは、前職の時から気になっていた存在。輸入代理店を務める現在の会社に入社してようやく迎え入れることができました。設置した場所は、お気に入りに囲まれた狭い空間なので、奥行きの浅い棚板がつけられる壁付けタイプを選びました。隣には棚板単体で取付けができるギャラリーシェルフも合わせました。額装のアートやオブジェなどを並べておくのにぴったりですし、DIY感覚で自由に取り付けができます。日本の住宅でインテリアを考える時に壁面の活用はハードルが高いと敬遠されがちですが、インテリアの視点からみると、これほど有効に活用できる場所はほかにないと思います。家を建てるときはその辺も考慮して、壁面取り付けができるように仕上げておくことをお勧めします。省スペースに設置できて、なにより空間の完成度が高くなります。インテリアで違いを出すなら壁面ディスプレイは是非トライしてほしいです」
額装したニ枚の作品は、滝沢さんが愛する山と猫を線画家の吉田薫さんに依頼して描いてもらったもの。「吉田薫さんは、陶芸家吉田直継さんの奥様で、女性の身体をシンプルな線で表した作品を手掛けています。お気に入りの山と猫の写真を渡して、それを元に線画にしていただきました」
そのほかにも、立花英久さんの朔像、イギリスで活動している陶芸家、館林香織さんの作品、TENSEGRITYLAB.のオブジェ、郡司製陶所のピッチャー、渡部萌さんのアケビの鍋敷きなど、お気に入りの作家の作品たちが並ぶ。
右側のギャラリーシェルフには、山と猫が装丁されたマガジンをディスプレイ。「山、猫関連の書籍は国内外問わず集めています。最近は、スイスのグラフィックデザインスタジオ Bienvenue StudiosのZineとオランダのアーティストTrijnie van der KruijtさんのZineがお気に入り」
ブラックのシェルビングシステムには、滝沢さんが運営するブランド「山と猫」の作品が並ぶ。「山と猫は本格的な山道具や猫のグッズを取り扱っていません。代わりに山や猫の存在を身近に感じるものとして、さまざまな作家の作品を取り扱っています。石をモチーフにした作品が多いのですが、これは小さな自然が詰まった作品と捉えています」
書斎の壁面は、山をモチーフにディスプレイ。山の稜線をワイヤーで表現したワイヤーアートは、ワイヤーアーティスト山田一成さんに依頼したもの。「山関連の古書は装丁も綺麗で美しいし、内容も面白い」神保町に山の古書を探しに行くそう。
さり気なく、床置きされたフレームも印象的だ。「ムーベのフレームはアクリル板を四方バラバラの状態の枠で挟み、周りをゴムで留めて固定する斬新な構造です。表裏なく使えるので、透け感のあるハンカチなんかをいれるのも面白いかなと」山の写真をハンカチにする鈴木優香さんの作品や、外山翔さんの作品が額装されている。
見せる収納・隠す収納
お気に入りのアートピースが並べられ、生活感のあるモノが目に入らないのが印象的。そこで、今回は滝沢邸で取り入れているストレージを見せていただいた。
隠しておきたいモノは、収納ボックスに。ムーベのストレージボックスはベニヤ板をスチール製フレームで固定するシンプルな構造。横置き・縦置き・スタッキングも可能な便利なアイテムだ。「毎日は使わないけれど使いたい時にサッと取り出したい、そんな収納を探していました。そのまま部屋に出して置いても違和感なく、重ねられて、ちょっとしたテーブルや台としても使えますし、猫のトイレ周りのものを入れておくのもちょうどいいです」
細々としがちな日用品にはムーベのオーガナイズを愛用。「高頻度で使う日用品の一時置きに便利。A4とA5のサイズは重ね置きができるので、書類から小物まで整理しておけます。何より見た目が良いのが一番」
マルティノ・ガンパーのアーノルドスツールは、ひっくり返せば物入れにもなるマルチなアイテム。「植物を置いたり、鉢カバーとして使ったりするのもおすすめ。大理石模様はインテリアへの馴染みもいいんです」
キッチンに足を踏み入れて真っ先に目が行くのが、ステンレス製のオープンシェルフ。「このシェルフの無骨だけれど、それでいて使い勝手が良さそうなデザインが気に入っています」お気に入りの器やグラスは、このシェルフに飾るように収められている。
掃除用品は、機能とデザインが両立したモノを愛用。「デンマークの家庭用洗剤ブランドHUMDAKIN(ハムダキン)のマルチクリーナーは、マイルドな成分を使用しているので安心。インテリアにも馴染むシステムバケツに収納しています」キッチンクロスや掃除用クロスはKARIN CARLANDER(カリン・カーランダー)のリネンクロスを愛用。「コンパクトなサイズ感と緻密にブレンドされた色合い、そして、使いこむごとに馴染んでくる手触りがポイントです」
照明
滝沢邸は、リビングをはじめ、キッチンや洗面など、さまざまな場所に設置されている照明がインテリアのポイント。ヴィンテージと現行品をミックスした空間が印象的だ。
リビングのウォールランプはジェルデのヴィンテージをセレクト。ジュルデは1950年代に、工業用ランプとして誕生したフランスのブランドだ。「配線が表に見えない構造なので、無骨なのにスッキリしたところが好きです。アーム付きの壁付けを二本使用しています」
洗面所は、ジェルデのヴィンテージウォールランプとムーベのウォールミラーを合わせた。フレームの無いラウンドミラーを真鍮ワイヤーで吊るしたミニマムなデザインと、インダストリアルな照明が好相性。「ジェルデのランプは、塗装が剥がれかけてボロボロですが気に入っています。ムーベのミラーはデザインが気に入って導入。取り付けも一箇所のビス留めだけで簡単にできます」
キッチンの補助照明には、DCW editionsのGRASシリーズのシーリングライトを設置。「赤いシェードが気に入って採用しました。GRASはル・コルビュジエも愛用したシリーズです」また、キッチンのシンク上には、ムーベのセラミックペンダントを設置。水回りにセラミック素材の照明を取り入れるという、大胆な発想に惹かれた。「ここに住み始めてからポートランドのメーカーのインダストリアルランプを使っていましたが、最近、ムーべの照明に切り替えました。軽やかな印象にしたかったのと、光の方向を簡単に変えられる利便性にひかれて。大小、色を変えて変化をつけました」
器とグラス
滝沢さんが長年愛用している器やグラスを見せていただいた。機能美を追求した日常使いのグラスや、決して華美ではない独特なフォルムの器たちをご紹介。
いちばんの愛用品は、HOLMEGAARD(ホルムガード)のグラス。パーフェクションとフューチャーは、友人からのギフトだったそう。「ホルムガードは現在勤務しているNOMADで輸入代理をしていますが、うちに来たのは数年前。愛着があり、長年使っています」いまでは廃盤になってしまった、ホルムガードのステムグラスも、とても気に入っているグラスの一つ。「ステム付きのグラスは持ちやすさはもちろん、テーブルが結露で濡れにくいなど機能的で、スタッキングもできます」
タピオ・ウィルカラがデザインしたイッタラのBeer Glass #2052は、北欧ヴィンテージの名作を扱うエレファントで購入。「ククサをモチーフにデザインしたという丸みのあるフォルムと、ちょこっと飛び出た持ち手がかわいい。高級品なので出番は少ないですが、ずっと手元においておきたい逸品です」
シンプルながらも存在感のある白い器は、用の美を追求した陶芸家、五十嵐元次さんの作品。「汁物からパスタ、カレーまで、どんな料理にも合うので、飾らない日常使いの器として愛用しています。フランスの古い白磁の器のような雰囲気もいいんです」
たくさんある中から、特に出番が多いという作家モノの器を見せていただいた。吉田直継さんと三笘修さんの器は、ともに黒い釉薬が特徴。フォルムや質感の違いで、それぞれの魅力が楽しめる。尾形アツシさんのボウルは刷毛目が活かされた存在感のある佇まい。沖縄のまさひろ工房のきび紋皿は、琉球らしい力強いデザインが魅力。「以前は海外の器を好んでいましたが、最近は民藝や日本の作家モノの器を愛用しています」