人気の器専門店店主の住まい築42年の集合住宅の良さを
そのまま生かして住む
用の美の器が生きる、自然体の家。
器の専門店『工芸喜頓』の店主、石原文子さんのご自宅にお邪魔した。世田谷区内の築42年の集合住宅の持ち味をそのまま生かし、石原さんならではのセンスで住みこなしている。
食器棚はご主人のハンドメイド。
「古材をカットした棚板と鉄の棚受けでシンプルに作りました」
石原さんのお眼鏡にかなった器が、心地よさそうに並ぶ。
「ここは住民同士がとても仲がよくて、緑豊かな1階の共有スペースでバーベキューをしたりと、子育てにも抜群の環境です。そして不思議とクリエイティブな職業の住人が多いんです」
器も家具も、プリミティブなものが好き。
実は石原さん、器の素晴らしさに目覚めたのは、パリの美術館で出会った、日本の『民芸』のポスターだそう。
「その後、メキシコやペルー、アジアやヨーロッパの器を、旅行に出る度に買い集めて、それを見ていたシステムエンジニアの夫が、お店をやってみたら? とアドバイスしてくれたのが、『工芸喜頓』のスタートでした」
オンラインショップから始め、世田谷区上町に実店舗をオープンさせた。
「食卓で使った時に美しい、日常の器が好きです。陶器、ガラス、木の器など、素材や国籍を問いません。器は全国の窯元を訪ね、買い付けに行きます。フランスに住んでいたことがあるので、フランスにも仕入れに行きます」
土や木など、自然の力を感じさせるものに心を動かされるという石原さん。家具もプリミティブなものについつい手を伸ばしてしまうのだとか。
「主人はミッドセンチュリーなものが好きなのですが、私は、力強くて楽しくてどこかポエティックなものが好きです。家は両方のミックススタイルになっています」
家族と囲む食卓が、かけがえのないひととき。
家族揃って朝日を浴びながらダイニングテーブルで民芸の器で朝食を摂るひとときが、かけがえのない時間だそう。
「近ごろ、子どもたちに部屋を飾りたいという気持ちが出てきたようです。絵をここに貼りたい、怪獣をあそこに飾りたい、とやってます。時には私も手伝いますが、基本は自由にやらせています」
家族や、自然が生んだ土や木の力強さ、作品を作る人の手や気持ち。そんな大事にしたいものを守りながら、これからも器の魅力を伝えていきたいと話す石原さん。そんな石原さんの自然体の魅力を、この築42年の建物が存分に引き出している。