仕事も仲間も包み込む料理家が暮らす、
食と宴と眺望を楽しむ部屋
部屋を決める基準
東京都世田谷区の住宅街にある、12階建てのマンション。ここに昨年引っ越してきたのは、「minokamo」という名義で料理と写真を生業とする長尾明子さん。ご主人との二人暮らしだ。「自宅で料理の撮影もしますし、昔から仲間を招いて宴を開くのが好きなので、広いリビングは絶対条件だったんです。キッチンは本当は対面式がよかったけれど、広いテラスと眺望が決め手になりました」。
「minokamo」は、長尾さんの出身地・岐阜県美濃加茂市から取ったもの。郷土料理をアレンジしたレシピ提案や食を通じてのイベントなど、仕事は多岐にわたる。
上京した頃からよく自宅に友人を招くようになり、その友人が実家などから持ち寄る郷土色豊かな食材を料理するのが長尾さんの楽しみだったという。「私はみんなで食卓を囲んでごはんを食べるのが大好きなだけ。その延長線が今の仕事につながっているんです」。
おおらかな空間で
このマンションは築45年ほどだが、以前住んでいたのも同じくらいの築年数の建物だったそうだ。「新しいのがいやなわけではないのですが、このぐらいの年数の建物って部屋が広く感じるし、備え付けの収納などにも味わいがあって好きなんです」。
リビングにはダイニングテーブル、カウンターコーナーがあり、子供が来た時には低いテーブルを出すなど、大人数でもきちんと居場所をつくれる広さがある。また、木材が好きという長尾さんは「木造住宅の解体現場で出た板をもらってきて、大人数のときはそれを台にのせてテーブルの天板にしたりしています」という。
リビングと同じくらい気に入っているのが、街並みを見下ろせるテラス。料理の仕込みや撮影など、家で仕事をする時間が多いという長尾さん。「天気がいいときはテラスで食事したりもしますよ。仕事が行き詰まった時も、いい気分転換になります。出かけなくても開放感を味わえるんです」。プランターで野菜も育て始めたという。
器とのつきあい
高校生ぐらいの頃から器も好きだったという長尾さん。仕事や旅で出向いた各地で、器や籠などを買い求めることもしばしば。都内でも気になる作り手の展示などがあればこまめに見に行っているという。「器は、空想が膨らむようなものが好きですね。この料理をのせてみたらどうなるかなとか、手持ちの器と組み合わせたらどうなるかとか」。
こつこつ集めた器が収納されているのは、昔ながらのりんご箱だという。「青森のりんご農家さんが販売されていて、これはいい!と思いました。素朴な感じが持っている器とぴったりな気もしているんです」。長尾さんの無理のない自然な考え方が、この居心地のいい空間をつくりあげている。