緑のテラスで朝ごはんを  建築と料理、器、家具。 お気に入りが融合する住まい。

緑のテラスで朝ごはんを建築と料理、器、家具。
お気に入りが融合する住まい。

庭つきのヴィンテージマンション

「HOME.」という屋号で主に料理の仕事をしているフルタヨウコさんのお宅を訪ねた。静かな住宅街に佇むマンションは築50年近いというが、きちんと管理されていることを思わせる清潔感と色あせない魅力をどことなく漂わせている建物だ。「私の中ではこれでも新しい方です。前はもっと古い木造平屋に住んでいたりもしたので」。間取りは玄関から続く廊下の突き当たりがLDKとなっている。部屋に入るとまず目に飛び込んでくるのは大きな木が生える緑豊かな庭の景色。「とにかくこの庭がすごく気に入ったんです。それに、私が住む前は設計事務所として使われていた部屋で、壁の仕上げもクロス貼りじゃなく吹き付け塗装だったり、私の好みのポイントが合って決めました」。
緑が映え、一軒家のようなLDK。ハンス・J・ウェグナーのデイベッドは空間の仕切りにもちょうどよい。

緑が映え、一軒家のようなLDK。ハンス・J・ウェグナーのデイベッドは空間の仕切りにもちょうどよい。

キッチン・ダイニング方向を見る。食器棚はアーコールの古いもの。

キッチン・ダイニング方向を見る。食器棚はアーコールの古いもの。

デイベッドの脇の棚はスイスのUSMのヴィンテージ。金属の家具もシンプルなデザインで違和感なく収まる。

デイベッドの脇の棚はスイスのUSMのヴィンテージ。金属の家具もシンプルなデザインで違和感なく収まる。

自作の木の棚には、小物や食器棚に入らない器、本などさまざまなものを飾りながら収納。

自作の木の棚には、小物や食器棚に入らない器、本などさまざまなものを飾りながら収納。

建築から料理の仕事へ

LDKは扉を入って右側をリビングスペース、左側をキッチンとダイニングスペースとして使っている。「昔から北欧のものが好き」というフルタさん。使っている家具はヨーロッパの古いものが多く、北欧のアイテムがポイントに光る。フルタさんが吟味しながら少しずつ集めてきた家具はデザインや素材もバラバラだが、そこに収納されたり飾られているたくさんの器やオブジェなどの小物と相まって、フルタさんの世界観が凝縮された空間になっている。「家具は自作のものもあるし、友人の建築家がデザインしたものや譲り受けたもの、友人の営むヴィンテージショップで購入したものとさまざまです」。そう話すフルタさん。実は学生時代は建築を学び、その後も建築関係の仕事をずっとしてきたのだ。仕事で展覧会の企画などを手がけていた頃、料理が好きだったフルタさんはそのオープニングパーティーのケータリングや撮影も自分でこなしており、そこから料理の仕事が始まっていったという。

建築雑誌のライターもしているフルタさん。実はこのマンションのオーナーで以前事務所としていた建築家にインタビューしていたことが内見をした時に判明したという。「私が取材に伺ったのはご自宅の方だったので。インタビュー記事が掲載された雑誌が届いた翌日に内見して、運命を感じました」。オーナーさんご家族とはいいお付き合いができているという。

照明をつけるとほんのり浮かび上がる小物たちの影も目に楽しい。

照明をつけるとほんのり浮かび上がる小物たちの影も目に楽しい。

デイヴィッド・チッパーフィールド デザインのテーブルに、ウェグナーやアーコール、スイスの銀行の会議室にあったイームズの椅子などを組み合わせて。

デイヴィッド・チッパーフィールド デザインのテーブルに、ウェグナーやアーコール、スイスの銀行の会議室にあったイームズの椅子などを組み合わせて。

イギリスのヴィンテージの食器棚はキッチンとダイニングの仕切りに。

イギリスのヴィンテージの食器棚はキッチンとダイニングの仕切りに。

アアルトのスツールに設えた花。

アアルトのスツールに設えた花。

暮らしを整える住まい

大学で「朝ごはん学」の教授も務めているフルタさんは、朝ごはんを食べて調子を整えるのが日課だという。「いい気候の時、このテラスで朝ごはんを食べるのが気に入っています」。10畳ほどもあるテラスは、料理の撮影などにも使っている。「室内でも撮影しますが、軒が深いし窓の高さも低いので、晴れていても入ってくる光がやわらかくてすごくいい写真になるんです」。

キッチンに関しては、料理の仕事がメインとはいえ至って普通のサイズだ。「一人でつくるのでコンパクトな方が使いやすいんです。それより作業場所や冷蔵庫の大きさの方が大事で」。アルミ製の大きなダイニングテーブルは仕事の作業台としても重宝しているという。友人や仕事仲間を招いてホームパーティーをすることもしばしば。この部屋でフルタさんの料理を食べながら建築や器、食などさまざまな会話が弾む光景が目に浮かぶようだ。暮らしにまつわるフルタさんのお気に入りが詰まった住まいは、「HOME.」という屋号がぴったりだった。

キッチンは普通の広さ。冷蔵庫は別室にもう1台ある。

キッチンは普通の広さ。冷蔵庫は別室にもう1台ある。

窓を開けて座ればテラス席に。隣との仕切り壁も圧迫感のない形状。

窓を開けて座ればテラス席に。隣との仕切り壁も圧迫感のない形状。

フルタさんのいつもの朝ご飯。ケール入りの卵焼きにローストポーク。フルーツとスープは欠かさない。

フルタさんのいつもの朝ご飯。ケール入りの卵焼きにローストポーク。フルーツとスープは欠かさない。

「HOME.」ブランドでつくっているジャム。フルタさんのご実家の果樹園で穫れるフルーツも使われている。

「HOME.」ブランドでつくっているジャム。フルタさんのお父様のご実家の果樹園で穫れるフルーツも使われている。

Ranking Living