夫婦二人暮らしのスタイル 自分たちのスケールで 暮らし方に合う部屋づくりを

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暮らし方に合う部屋づくりを

新築マンションに造作家具を足して

東京の下町、門前仲町で世界中の針仕事をはじめとした手仕事品を集める店「watari」を営む小林紀子さんの自宅を訪ねた。
店からも自転車で行ける距離にある自宅は、4年前に新築で購入したマンション。「以前は東雲の集合住宅に住んでいました。店をこちらのエリアで始めたこともあったのですが、たまたま見に来たこのマンションのモデルルームを気に入って購入することに」。まだ建設前だったので、部屋の間取りも二部屋だった仕切りをなくしてひと部屋のリビングにしたり、床やドアの色、キッチンの高さもオーダーできた。
ご主人の陽明さんの趣味のレコードや二人が所有する本などを引越しと同時に収納できるよう、事前にキッチン前のカウンター、レコード棚、本棚などの造作家具を、友人の家具ファクトリー「soui woodworks」につくってもらったという。「僕の昔からの友人で、たまに海外旅行も一緒に行ったりする仲なんです。watariのお店の内装も彼らにお願いしたんです。レコードはどんどん増えてしまうので、この棚に入る分だけ、というルールを決めています」と笑いながら話す陽明さん。
リビングを囲むようにつくられた造作家具は、細々としたものをすっきり収納してくれる。一定の低さをキープして壁面を多く見せているので圧迫感はない。

リビングを囲むようにつくられた造作家具は、細々としたものをすっきり収納してくれる。一定の低さをキープして壁面を多く見せているので圧迫感はない。

コーヒーテーブルはHans Wegnerのもので、10年ほど前に盛岡の光原社で一目惚れし、その後購入したもの。「三本脚というところも気に入っています」と紀子さん。

コーヒーテーブルはHans Wegnerのもので、10年ほど前に盛岡の光原社で一目惚れし、その後購入したもの。「三本脚というところも気に入っています」と紀子さん。

ぎっしりと詰まった本棚の隙間には、小さな人形や郷土玩具など愛着のあるものを置いて。

ぎっしりと詰まった本棚の隙間には、小さな人形や郷土玩具など愛着のあるものを置いて。

ベランダ側からキッチン方向を見る。キッチン前のカウンター下はCDの収納になっている。

ベランダ側からキッチン方向を見る。キッチン前のカウンター下はCDの収納になっている。

暮らし方と部屋の使い方を考える

「部屋の使い方としては、夫婦二人なので所謂4人がけのダイニングテーブルを使うような暮らし方はしないね、ということで低めのコーヒーテーブルと椅子をメインに考えました。ご飯を食べるのもくつろぐのもここです。ちょっと作業をしたいときはキッチン前につくってもらったカウンターを使います。部屋が狭いなら、低く暮らしたほうがいいかなと」と紀子さん。「しょっちゅう人が大勢来るような家でもないのでこれで充分。狭いながらも楽しい我が家です」と陽明さん。
BC工房で購入した椅子に、陽明さんが一人暮らし時代から使っているオットマン付きのソファ、それらにちょうど良い高さのコーヒーテーブルの組み合わせは、実際に座ってみるとソファなど必要がない居心地の良さ。リビングの半分は収納機能をまとめたスペースだが、さりげなくきちんと設えられているのでリビング空間として馴染んでいる。
奥にあるクローゼットは以前の家でワンルームをゆるく仕切る壁として使っていたもの。上に飾ったものも見える絶妙な高さが意外と抜け感を出してくれている。

奥にあるクローゼットは以前の家でワンルームをゆるく仕切る壁として使っていたもの。上に飾ったものも見える絶妙な高さが意外と抜け感を出してくれている。

クローゼットの上の設え。ペンダントライトはご近所づきあいのある「飛松灯器」のものを。

クローゼットの上の設え。ペンダントライトはご近所づきあいのある「飛松灯器」のものを。

寝室に飾られているのは、ナット・ラッセルというアーティストのシルクスクリーン。

寝室に飾られているのは、ナット・ラッセルというアーティストのシルクスクリーン。

玄関で出迎えるのは、ババグーリで購入したベンチと柚木沙弥郎の作品。

玄関で出迎えるのは、ババグーリで購入したベンチと柚木沙弥郎の作品。

自分の目で見つけたものを集めて

「リビングにある君子蘭は近所で“ご自由にどうぞ”と置いてあったものをもらってきたんです。オリヅルランも捨ててあったものを拾いました」。そう話す紀子さんが選ぶものを見ると、どこか素朴な魅力を纏っていることに気がつかされる。小林家のインテリアには、周りの空気に流されることなく、自分たちの目で気に入ったものを選んでいる自由さが滲み出ている。
紀子さんの買い付けの旅へは陽明さんが同行することもしばしばで、つい最近もスリランカへ行ってきたばかりだという。「二人とも建築を見るのが好きなので、行く時はだいたい私が下調べをして買い付けと絡めて建築を見に行っています。ヨーロッパ、アジアと行っているので今年はアメリカに行きたいと思っています」と紀子さん。また棚が賑やかになりそうだ。
くつろぎの時間。棚に飾られているのは、50円で手に入れたものからロベール・クートラスの作品までさまざま。

くつろぎの時間。棚に飾られているのは、50円で手に入れたものからロベール・クートラスの作品までさまざま。

近所の精肉店の包み紙をブックカバーにしているところも、実に紀子さんらしい。

近所の精肉店の包み紙をブックカバーにしているところも、実に紀子さんらしい。

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