回遊できるワンルーム  陰影を見せるテクスチャーに ヴィンテージ家具がなじむ

ヴィンテージがなじむ空間にテクスチャーが陰影を生む
回遊できるワンルーム

決めていた設計事務所に依頼

「4〜5年間、戸建てを含め、リノベーション前提でずっと物件を探していたんです。ここは夫婦それぞれの職場にも通いやすく、初めて内見した日にすぐ決めました」。
真新しい新築よりも、味わいのある古い家に暮らしたかったというMさんご夫妻。都心の大きな公園にほど近い、築37年の集合住宅の1室を即決、1年程前に入居した。
「物件と平行して設計事務所を探していて、アオイデザインさんを知りました。素材の使い方がとても気に入って、物件を見つける前から相談に伺っていたのですが、購入を決めてすぐに依頼しました」。
内見当初は2LDKに分かれていた60㎡の空間をスケルトンにして引渡し。リビングをできるだけ広くとることと、素材にこだわりたいことを伝えてプランニングを開始した。
自然素材に包まれた、落ち着きのある室内。天井高を確保し、エアコンも埋め込みに。

自然素材に包まれた、落ち着きのある室内。天井高を確保し、エアコンも埋め込みに。

南向きのバルコニーから明るい光が差し込む。オークの床が心地よい。ソファーは広島のALGORHYTHMのもの。

南向きのバルコニーから明るい光が差し込む。オークの床が心地よい。ソファーは広島のALGORHYTHMのもの。

リビング、キッチン、ダイニングがL字に連なっている。

リビング、キッチン、ダイニングがL字に連なっている。

WICを挟んでぐるりと回遊

「リビングは長い時間を過ごす場所なので、最大限に広く取りたくて、キッチン、ダイニングと一体にしました」。
バルコニーのグリーンが美しいリビングは、ベッドルームにも接続。よく見ると、中央にあるウォークインクローゼットを挟んでぐるりと回遊できる間取りになっていて、引き戸を開け放てば、家全体がワンルームになる。
「3パターン出してもらった中で、この間取りがいちばん広く見えて効率的かなと。ベッドルームは引き戸を閉めれば独立させられるし、子どもが生まれたときには、現在のベッドルームをさらに仕切って、もう一部屋設けることも考えています」。
開放された大きな引き戸が、壁の一部のようにすっきり収まっている。廊下とLDKの間に設ける予定だったドアも、工事の段階で撤収。必要な生活まわりのものを最小限に揃えたウォークインクローゼットを中心に、空気と光が室内をぐるりと循環する。
光の当たり方で陰影が生まれる。照明はダウンライトのほか、テーブルランプ、スタンドライトなど分散型で。

光の当たり方で陰影が生まれる。照明はダウンライトのほか、テーブルランプ、スタンドライトなど分散型で。

リビングからベッドルームへと回遊。右側の引き戸を閉めて個室にすることも。引き戸の向こうがWICになっている。

リビングからベッドルームへと回遊。右側の引き戸を閉めて個室にすることも。引き戸の向こうがWICになっている。

ベッドルームからリビング側を見る。ここを仕切って子供部屋にすることも。

ベッドルームからリビング側を見る。ここを仕切って子供部屋にすることも。

玄関からLDKに抜ける廊下はトンネルのよう。錆色の床のタイルが導いてくれる。

玄関からLDKに抜ける廊下はトンネルのよう。錆色の床のタイルが導いてくれる。

玄関からベッドルームに直行することも。左手にWICがあって導線がいい。

玄関からベッドルームに直行することも。左手にWICがあって導線がいい。

選び抜いた素材を使って

「アオイデザインさんに決めたのは、陰影のある素材感がとてもいいなと思ったからです。特に惹かれたのは塗り壁です。見えるところは全部この素材を使ってほしいとお願いしました」。
壁や天井を、粒子の粗いテクスチャーの左官材を使ったジョリパット仕上げに。間接照明とバルコニーからの光が反射し、室内はやわらかな陰影に包まれている。
「大谷石も取り入れたい素材のひとつでした。全体に使うとやりすぎになってしまうので、ダイニングの一面にだけ張ってもらいました」。
床は、これもこだわったオークの床に、一部分を大判のタイルで切り替えた。渋い錆色をしたタイルが玄関から浴室、キッチンまで水廻りをカバー。玄関を入ると石のようなテクスチャーのタイルと塗り壁が続き、トンネルを通り抜けるような雰囲気が気分を高める。
壁には大谷石、左官材、タイルの異素材をあしらった。パントリーや壁際に集約した水廻りの床は、タイルにすることで水ハネや汚れも防御。

壁には大谷石、左官材、タイルの異素材をあしらった。パントリーや壁際に集約した水廻りの床は、タイルにすることで水ハネや汚れも防御。

赤味がかったドラセナが、大谷石によく似合う。左官材の色味はグレーがかった白に。ペンダントライトはNEW LIGHT POTTERY。

赤味がかったドラセナが、大谷石によく似合う。左官材の色味はグレーがかった白に。ペンダントライトはNEW LIGHT POTTERY。

水廻りの床は、アオイデザインに紹介された平田タイルの製品から選んだ。ムラのある色合いと、タイルの質感が味を出す。

水廻りの床は、アオイデザインに紹介された平田タイルの製品から選んだ。ムラのある色合いと、タイルの質感が味を出す。

バルコニーにはウッドデッキを敷き、ガーデニングを楽しんでいる。インテリアに合わせて、二重サッシの内側だけを赤茶色の塗料で塗装。

バルコニーにはウッドデッキを敷き、ガーデニングを楽しんでいる。インテリアに合わせて、二重サッシの内側だけを赤茶色の塗料で塗装。

タイルの貼り方が印象的な、清潔なサニタリー。洗面台はサンワカンパニー。

タイルの貼り方が印象的な、清潔なサニタリー。洗面台はサンワカンパニー。

なるべく生活感を見せないように

「ふたりともヴィンテージの家具が好きなので、それに合う素材やカラーを選んでいった感じですね」。
壁付けのキッチン台やアイランドは、床のオークに合わせて微妙に着色してもらい、北欧っぽさを出した。
「どっちもインドア派なので、ふたりで料理を作って家で過ごすことが多いんです。だからキッチンは広々とさせたかったのですが、とはいえ存在感はあまり出したくありませんでした。生活感を感じさせないよう、全体的にうまくまとめられたと思います」。
空間に似合うように、二重サッシの内側はアイアン塗装で赤茶色っぽいカッパー色に着色。リノベーションとともに買い揃えた家具に、すべてがしっくりと調和している。
「グリーンを育てるのも楽しいですし、気分転換したいときは近くの公園を散歩しても気持ちがいいです。理想が叶えられて満足しています」。
家具のように仕上げたキッチン。収納としても役立っている対面カウンターの天板は、セラミックで作業もしやすい。壁には薄いグリーン系のタイルを。

家具のように仕上げたキッチン。収納としても役立っている対面カウンターの天板は、セラミックで作業もしやすい。壁には薄いグリーン系のタイルを。

コンロの奥にはパントリーを設け、冷蔵庫や食品ストックを目隠し。

コンロの奥にはパントリーを設け、冷蔵庫や食品ストックを目隠し。

ダイニングセットはvitra.。ジャン・プルーヴェがデザインしたEMテーブルにスタンダードチェアを。ブラインドは天井に近い位置から取付けた。

ダイニングセットはvitra.。ジャン・プルーヴェがデザインしたEMテーブルにスタンダードチェアを。ブラインドは天井に近い位置から取付けた。

皮の風合いに味があるイスは、インドのヴィンテージ。青山のGRANPIEで購入。 

皮の風合いに味があるイスは、インドのヴィンテージ。青山のGRANPIEで購入。 

PACIFIC FURNITURE SERVICEのテレビボードの上で、Design House Stockholmのブロックランプが光を放つ。

PACIFIC FURNITURE SERVICEのテレビボードの上で、Design House Stockholmのブロックランプが光を放つ。

休日はゆったりした時間を過ごす。フロアランプは名作LAMPE GRAS。

休日はゆったりした時間を過ごす。フロアランプは名作LAMPE GRAS。

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