
シームレスな住まい色を遊ぶ、グリーンでゾーニングする
建築デザイナーの自邸
ソファから広がったデザインイメージ
かつての上司が独立して当該物件を仕事で買っていたことを知り、直接相談して購入が実現。仕事でリノベを手掛けているえむさんに、自宅をフルリノベーションする機会が巡ってきた。
「最初に見た瞬間から、キッチンが独立したつくりや三角に張り出したスペースが気に入って、イメージがふくらみました。購入前からパソコン上でプランを練ったくらいです」
玄関を入ると、左右にキッチンとリビングが分かれつつ、ワンルームのようにシームレスに広がっている。リビングではRoche BoboisのソファMah Jongが存在感を放ち、グリーンが伸びやかに葉を広げる、カラフルでみずみずしい空間だ。
「個性的な色使いで自由な使い方ができるこのソファをリビングに置くことは決めていました」という。シートやバック、コーナークッションを組み合わせ、1シートでも重ね使いにもできるが、「基本のシートが95㎝四方と大きいため既成のリビングには合いません。いかにリビングを広くするかを考えたソファメインの設計です。わが家は59㎡と決して広くはないので、もとは3DKの間取りでしたが、個室は子ども部屋のみにして、圧迫感がないよう全てがオープンなつくりにしました。リビングの壁面にオープンクローゼットを設け、壁を使わず観葉植物でゾーニングしてベッドとワークスペースを分けています」
自身の暮らしを発信するInstagram @vintagemansion_renovationは、フォロワー8万人とファンが多い。

オープンクローゼットは自ら設計、上置きスペースはかご収納で出し入れしやすく。間にライトを置いて間接照明風にしている。

クロスは使わず左官仕上げにした。白い壁は漆喰でプロジェクターを投影できる仕様。

FORNASETTIのアートインテリアからリバーシブルのクッション。季節でファブリックを替えリビングの雰囲気の変化を楽しむ。

しばらく前に迎え入れた保護犬のてんてん(天)と、つっきー(月)はいずれも7歳。大切な家族だ。

ペンダントランプはINGO MAURERのZETTEL’Z A6 ペーパーシェードを。好きなようにディスプレイできる。

世界各国の言葉でつづられたメッセージやイラストに交えて、えむさん自身が描いたイラストもディスプレイ。

愛犬たちの食事はSELETTIのカップ&ソーサーで。壁にはクリムトのポスター『生と死』。

左右が異なるSLETTIの花瓶。「クリムトの絵やこの花瓶など、楽園と魔界を感じさせる組み合わせに惹かれます」
3つの視点でゾーンを分ける
24.8畳のLDKは変化に富み、さまざまな居場所がある。リビングの中にデスクやベッドコーナーが同居していていながら違和感がないのは、センスと独自の発想によるものだ。
その1つが、建物が持つ特性を活かしていることだ。三角形に張り出したリビングの一画は、デッドスペースになりかねない空間だが、大きな柱と梁がもたらす「おこもり感」を生かしワークスペースにした。
「家の中に三角形のスペースが多く、それを活かしたいと思い、リビングとキッチンの床はフローリングとタイルで斜めに切り替えてフロアをゾーニングしています」。三角形や斜めのラインを強調することで、変形を美点として顕在化させている。
2つ目が、グリーンで緩やかに分けていることだ。ワークスペースやベッドコーナーは、サンスペリアをはじめ大小のグリーンを置き、天井からもハンギング。空間を分けるだけでなく、リラックスできる空間を演出している。
3つ目が、ファブリックで変化をつけていることだ。カーテンやラグ、ベッドカバーやクッションの素材や色に変化をつけることで、季節感や居心地を創り出している。「将来的には売却や賃貸も視野に、家具を抜いたらごくシンプルになるように設計しました。誰でも抵抗なく住めるベースに、色や個性は「ファブリックの力」で楽しんでいます」

長年愛用のIKEAのベッドに合わせてベッドコーナーを設計。グリーンをハンギングしシースルーの花柄のカーテンをつけている。

床はオークの無垢材。時間を経ることで色の濃淡と味わいが増してくる。ワークスペースのチェアはFRITZ HANSENのLITTLE GIRAFFE。

デスクや棚は変形スペースに合わせてダンボールで型取りをして造作した施工会社の労作。大きな柱が程よく空間を分けている。

赤の唇とドットがビビッドな差し色になっているラグミラーは直径70㎝。ウォールライトを点けるとまた違った表情になる。

ハンドオブジェとドットの鉢。鉢はホームセンターで購入したテラコッタの鉢にアクリル塗料で自作したもの。

ワークスペースのペンダントライトは職人が手作業で削りだしたAPROZのTORLE。素朴な温かみがある。

使っていないリモワのスーツケースは当初テーブル代わりにしていたが今はディスプレイ台に。隣のメタルラックとも好相性。
むき出しの箱が包容力を見せる
収納はその多くをオープン収納にしている。
「すぐに使えて出し入れがしやすいオープンな棚が好きなので、収納に扉はいらない派です」
クローゼットは絶妙な透け感のガーゼのカーテンで、必要に応じて閉めるスタイル。キッチンは木箱を自作して棚に納めている。小物を入れているかごや木箱は以前から愛用してきたもので、むき出しの天井や年月を経たコンクリートの武骨な味わいに、なじんでいる。
「リノベーションは、天井や壁など古いものを残していることで、古いものも新しいものも、違和感なく受け入れてくれる包容力があります」
東西に細長い間取りのえむさんの家は、どちらの窓辺もグリーンでいっぱいだ。
「以前は枯らせてしまうこともありましたが、ここに暮らしてから驚くほど元気です。家じゅうの40鉢ほどに、バシャバシャ水やりをしてあげられる。つくりこみ過ぎずラフに仕上げたリノベーションは、私の暮らしにぴったりです」

玄関ホールからLDKに入ると、左側に伸びているのがキッチン。カラフルなリビングとは対照的に、水回りはモノトーンにして視覚的にも空間を区切った。

キッチンはウッドワン。ステンレストップとオークの棚でハードに使えるものを採用。上部には業務用の棚を取り付けている。

ポーランドの食器、昔のマリメッコのカップなど日常使いを1か所に。窓辺の棚も斜めの壁に合わせて台形に造作している。

玄関を入ってすぐの洗面台はフロートタイプ。鏡もフレームがないものを採用し、廊下にあるが圧迫感がなく空間を広く感じさせる。

市販の紙袋にポリ袋を重ね、さりげなくロールアップしてゴミ箱に。紙のナチュラルな素材感がタイルの床にもなじむ。

黒のフレームのドアを開けると、モノトーンのキュートなバスルーム。洗濯乾燥機もブラックを選択。

タイルは長年の希望だったハニカム柄を採用し、花柄に貼ってどこかノスタルジックな雰囲気に。

フラワーモチーフのウォールミラー。鏡は室内に光と明るさを演出する効果がある。

玄関とLDKの間は視線が抜けるガラスの引き戸で開放的に。玄関収納は足元を抜いて間接照明を入れた浮遊感のあるデザイン。

玄関には友人の版画や自分で描いた絵を飾って。ピンクのネオンチューブライトはHEY。幻想的な明かりを斜めに走らせた。

ハンドオブジェを壁掛けにして玄関のギャラリーコーナーに。ポプリの優しい香りが迎えてくれる。








