アートを飾る大空間  110㎡を贅沢に使う ギャラリーのような住まい

アートを飾る大空間110㎡を贅沢に使う
ギャラリーのような住まい

リノベ済み物件を再リノベ

都心に建つ、昭和50年代の由緒あるヴィンテージマンション。
「以前は近くのマンションに住んでいたのですが、子供が3人になり、もう少し広いところに移りたいと思うようになりました。100㎡以上で探したのですが、最近の物件には少なかったんです」。
という寺本さん。アートが飾れる空間であること、良い“気”が流れていること、家族5人が伸び伸びと暮らせる空間であること、を条件に探し、3面に採光のある110㎡の物件を購入。7階に位置する部屋からは、広大な公園と都心の景色が一望できる。
「既にリノベーションはされていて、将来的に再リノベするつもりでした。でも1年弱住んでみたところ、思っていた以上に使い辛くて」。
再リノベの計画を早めることに。以前の住まいも依頼し、好みを熟知してくれていたアオイデザインに相談。フルスケルトンにしてスタートした。
築43年の風格のあるヴィンテージマンションの1室。水廻り以外、すべての部屋が窓に面している。

築43年の風格のあるヴィンテージマンションの1室。水廻り以外、すべての部屋が窓に面している。

リビングダイニングのアクセントともいえる、アートを飾った間仕切り。その向こうは、WICと本やレコード、書類などの収納コーナー。天井を空けたことで抜け感が生まれている。

リビングダイニングのアクセントともいえる、アートを飾った間仕切り。その向こうは、WICと本やレコード、書類などの収納コーナー。天井を空けたことで抜け感が生まれている。

マンションの外観を活かして

当初は3LDK。壊せない構造壁で区切られていたキッチンや水廻り、2部屋の個室の位置は変えずに、リビングを仕切っていた間仕切り壁のみ撤去して2LDKに。
「個室が必要になったときは、もう一部屋設けられるようにも考えています。子供の成長も早いと思うし、その時々に応じて変えられるようにしました」。
より広くなったリビングダイニングは、多くの窓から光がたくさん届けられる。以前は個室があったスペースには、家族全員分のウォークインクローゼットを設置。
「天井まで塞がず空けておくことで、リビングとの一体感と広がりを出しています。一角は書斎にして、本やレコードなど収めるコーナーも設けました」。
アオイデザイン独特のテクスチャーの粗い素材で、WICの仕切りや壁、天井まで左官仕上げ。素材感を感じさせる空間に、廊下やリビングの一面にあしらわれたレンガタイルが重厚感を与えている。
「マンションの外壁に合わせたらどうかと提案してもらったんです。左官材はレンガに合わせて黄色がかったやや土っぽい色味にしています。古い建物ならではの、趣きのある雰囲気が活かされたと思いますね」。
バルコニーの向こうの外壁から連なるようにレンガタイルを採用。ダイニングテーブルは新木場で購入した板に、アオイデザインにオーダーして造った鉄の脚をDIYで取り付けたもの。1920年代の教会のベンチを合わせた。

バルコニーの向こうの外壁から連なるようにレンガタイルを採用。ダイニングテーブルは新木場で購入した板に、アオイデザインにオーダーして造った鉄の脚をDIYで取り付けたもの。1920年代の教会のベンチを合わせた。

味わいのあるレンガタイルは、シックなマンションの雰囲気と連動させている。イスはイルマリ・タピオヴァーラ。

味わいのあるレンガタイルは、シックなマンションの雰囲気と連動させている。イスはイルマリ・タピオヴァーラ。

レンガタイル以外の壁は、粒子の粗いジョリパット仕上げ。R曲面の壁にしたことで、空気と光がやさしく流れる雰囲気に。

レンガタイル以外の壁は、粒子の粗いジョリパット仕上げ。R曲面の壁にしたことで、空気と光がやさしく流れる雰囲気に。

家族全員分の衣類を収めるWIC。スイッチパネルなども内蔵している。

家族全員分の衣類を収めるWIC。スイッチパネルなども内蔵している。

書斎コーナー。個室を取り払ったことで、奥の窓からの光もリビングに差し込んでくる。

書斎コーナー。個室を取り払ったことで、奥の窓からの光もリビングに差し込んでくる。

アートが映える空間に

レンガタイルがあしらわれた玄関には、額装された家族の写真やアートが飾られ、ギャラリーのような雰囲気だ。
「廊下はアートを飾って美術館のようにしたいと思っていました。間接照明で作品を照らすために、垂れ壁もつけてもらいました」。
廊下からリビングにさしかかるところの壁はR曲面になっていて、アートと光の流れが、室内に招き入れてくれるかのよう。
「10年くらい前に草間彌生さんの作品を買ったところから興味が広がって、気に入ったアートを買い集めるようになりました。リノベーション時には、持っている中でいちばん大きい作品を掛けるスペースのことも考慮しました。WICの仕切りがちょうどよい場所になりましたね」。
躍動感のあるその作品を眺めることで、仕事のモチベーションも上がるのだそうだ。
「家具は以前から持っていた北欧ヴィンテージなどを配置しています。窓の多い部屋なので、特にこだわったのはカーテン選び。せっかくリノベーションしてもカーテンで気を抜くと台無しだと思って(笑)。分厚いのは避けて、薄いカーテンを選びました」。
抜けるように薄いのに外からは見えないというやわらかなカーテンが、味わい深いインテリアに調和している。
壁にレンガタイルを用いた玄関。間接照明が家族の写真を照らし出す。クリエーション・バウマン の、吸音効果のあるカーテンをドア前に設置。床は既存のタイルをそのまま生かした。

壁にレンガタイルを用いた玄関。間接照明が家族の写真を照らし出す。クリエーション・バウマン
の、吸音効果のあるカーテンをドア前に設置。床は既存のタイルをそのまま生かした。

リビングにつながる壁をR曲面に。廊下の閉塞感が緩和されるかのよう。エンツォ・マーリのポスターが映える。

リビングにつながる壁をR曲面に。廊下の閉塞感が緩和されるかのよう。エンツォ・マーリのポスターが映える。

「マグナム・フォト」の写真家デビット・ハーンの、ビートルズの写真を額装。

「マグナム・フォト」の写真家デビット・ハーンの、ビートルズの写真を額装。

NY在住のアーティスト・松山智一の作品を飾る。東洋と西洋、古代と現代など色々なモチーフが混在。ご本人に直接連絡して購入したそう。

NY在住のアーティスト・松山智一の作品を飾る。東洋と西洋、古代と現代など色々なモチーフが混在。ご本人に直接連絡して購入したそう。

筆を使わず手で直接ダンボールなどに描く、ロッカクアヤコの作品。東日本大震災に因んだもの。

筆を使わず手で直接ダンボールなどに描く、ロッカクアヤコの作品。東日本大震災に因んだもの。

アートに興味を持つきっかけになった草間彌生の「かぼちゃ」の版画。直筆サイン入り。

アートに興味を持つきっかけになった草間彌生の「かぼちゃ」の版画。直筆サイン入り。

「人生で1回座りたいと思っていた」アルネ・ヤコブセンのスワンチェア。

「人生で1回座りたいと思っていた」アルネ・ヤコブセンのスワンチェア。

ガラス作家イイノ・ナホのシャンデリア。繊細で美しい。

ガラス作家イイノ・ナホのシャンデリア。繊細で美しい。

使い勝手を考えて更新

リノベーション済みだった購入時、特に使い辛いと感じたのは水廻りだったそう。
「キッチンはL字で通路部分がやたらと広く、いっぱい歩かなくてはいけないので疲れていました(笑)」と奥様。取り出しにくい吊り戸は外し、以前から持っていた食器棚が入るように計画。たくさん収納できるパントリーも設けた。
「トイレが一体となったバスルームも、ホテルっぽいのだけど不便でした。いちど暮らしてみて、自分たちに合わせてリノベーションして良かったと思っています」。
フルスケルトンにするときは、子供たちに思い切り自由に壁に絵を描かせたのだそう。
「それもよい思い出になっていると思います。明るい空間で子供たちものびのびできるし、広々と過ごすことができて良かった。もっと広くてもいいかなと思っていますね」。
独立したキッチンは、動線と掃除のしやすさを考えて再リノベ。水廻りの床は、既存の玄関タイルに合わせテラコッタタイルを敷いた。

独立したキッチンは、動線と掃除のしやすさを考えて再リノベ。水廻りの床は、既存の玄関タイルに合わせテラコッタタイルを敷いた。

トイレとバスルームを別々に。真鍮のバー金具など、寺本さんが施主支給。

トイレとバスルームを別々に。真鍮のバー金具など、寺本さんが施主支給。

個室はコンパクトに。

個室はコンパクトに。

奥様はかつてインテリア関係の仕事に従事。スイスのファブリックブランド、クリエーション・バウマンのカーテンを通して、やわらかな光が差し込む。

奥様はかつてインテリア関係の仕事に従事。スイスのファブリックブランド、クリエーション・バウマンのカーテンを通して、やわらかな光が差し込む。

床は幅広で厚みのある無垢のオークフローリング。天井は設備配管などを隠しつつなるべく高さを出して、段差部分に間接照明を設置している。

床は幅広で厚みのある無垢のオークフローリング。天井は設備配管などを隠しつつなるべく高さを出して、段差部分に間接照明を設置している。

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