ToKoSie ー トコシエ

身近な金継ぎを習う 前編 金継ぎで新たな美しさを
纏う現代の器

日常の器を金継ぎで楽しむ

金継ぎ(きんつぎ)とは、漆が持つ接着力を利用して、割れた陶器を接着し、その上から金による装飾を施したもの。器の割れ、欠け、ヒビ、の3つを修復することができる。
その歴史は古く、漆による修復は縄文土器にも見られる。
金で装飾して仕上げるのは、室町時代のお茶の文化から始まったとされている。
 

今回、金継ぎを教えていただいた大脇京子さんがカリフォルニアに住みながら金継ぎをしていた頃、“大切な日用品を修理して欲しい”という依頼を数多く受けたそう。
「持ち主の思い出がたくさんつまった器が、金色の筋模様を纏って再生され、とても喜んでくれました。
金継ぎは高価な茶道具や骨董の修理だけでなく、日常の器を再生する“身近な金継ぎ”として喜んでいただきたいと思うようになりました」
 

前編では、金継ぎの道具と、割れの修繕の方法を学ぶ。
次回の後編では、欠けの修繕と、金を蒔く仕上げの工程を教えていただく。

アスティエ・ド・ヴィラットのキャンドルホルダー。金継ぎを施したことで、金のアクセサリーを纏ったような美しさに。
アスティエ・ド・ヴィラットのキャンドルホルダー。金継ぎを施したことで、金のアクセサリーを纏ったような美しさに。
鎌倉在住の大脇さん。カリフォルニアでギャラリー「turtle&hare」にて個展とデモンストレーションを成功させる。帰国後、全国から金継ぎの依頼を受注。器に合わせた仕上げのアドバイスも好評を得て、著名人からの依頼も多数。定期的にワークショップを開催し、金継ぎの楽しさを多くの人に伝えている。
鎌倉在住の大脇さん。カリフォルニアでギャラリー「turtle&hare」にて個展とデモンストレーションを成功させる。帰国後、全国から金継ぎの依頼を受注。器に合わせた仕上げのアドバイスも好評を得て、著名人からの依頼も多数。伝統的な本漆の金継ぎ教室のほか、定期的にワークショップを開催し、金継ぎの楽しさを多くの人に伝えている。
プリンの『MARLOWE』の容器は依頼品。「器には、その持ち主にしかわからない、大切な思い出があるのが素敵ですよね」。同じ割れ方をする器は2つとない。金継ぎをすることで唯一の器になる。
プリンの『MARLOWE』の容器は依頼品。「器には、その持ち主にしかわからない、大切な思い出があるのが素敵ですよね」。同じ割れ方をする器は2つとない。金継ぎをすることで唯一の器になる。
もちろん伝統的な茶の湯の器にも金継ぎはよく似合う。
もちろん伝統的な茶の湯の器にも金継ぎはよく似合う。

金、銀、プラチナの色の違いを楽しむ

金継ぎは、金を使うだけでなく、銀粉やプラチナ粉、錫粉を使い、器の色や雰囲気に合わせた仕上がりを楽しむこともある。口に入るものではない器であれば、真鍮粉を使うことも。
 

「TOPの写真のアスティエ・ド・ヴィラットも、プラチナ粉で仕上げています。
このカップは初めて買ったアスティエで、思い入れがある器です。残念なことに割れてしまい金継ぎしました。
金を蒔いたり、赤漆で仕上げたり、いろいろな材料で試してきました」
 

金継ぎは何度もやり直すことができる。
「漆は、グラグラと鍋で煮ると剥がれます。
金継ぎした器は破損前の状態に戻ったわけではありません。煮え立つお湯を注いだりしないようにしてください。食洗機や電子レンジにもかけないよう、やさしく扱ってくださいね」

金継ぎで直せる器は、陶器はもちろん、磁器も大丈夫。ガラスも直せないことはないけれど、ガラスの断面に漆が見えてしまうのでけっこうやっかいなのだそう。

「ご依頼のお品です。金で仕上げる予定でしたが、途中で相談させていただき、焼錫粉で仕上げました。それだけでは粒子の粗さが目立ってしまったので、焼錫粉を蒔いたあと錫粉も軽く蒔いています」
「ご依頼のお品です。金で仕上げる予定でしたが、途中で相談させていただき、焼錫粉で仕上げました。それだけでは粒子の粗さが目立ってしまったので、焼錫粉を蒔いたあと錫粉も軽く蒔いています」
アスティエの器は不思議と金以外にもいろいろな色が似合う。左のカップは、飲み口のカケに金を、持ち手にプラチナ粉を蒔いている。
アスティエの器は不思議と金以外にもいろいろな色が似合う。左のカップは、飲み口のカケに金を、持ち手にプラチナ粉を蒔いている。

金継ぎに使う材料を揃える

金継ぎに必要な道具は、下の写真のキャプションで紹介する13点。
「金には消粉と丸粉の2種類があり、目的によって使い分けます。最近、金の値段がどんどん上がっているので、ちょっと困っています(笑)」
 

漆も、接着に使う生漆と、素地を整えるための黒漆、金を撒く際に使う絵漆の3種類を準備する。

「金継ぎに必要な材料がセットになっている、堤淺吉漆店の『金継ぎコフレ』もオススメです」

【準備するもの】右から、①筆。筆は金を蒔くために使うものと、漆のラインを引くために使う筆を用意する。②ヘラ。断面や欠けに漆を塗る際に使う。③強力粉と砥の粉(とのこ)。漆に混ぜて使う。④金粉 ⑤テレピンオイル ⑥水 ⑦サラダ油 ⑧真綿。金粉を均一に漆に乗せるために使う。⑨漆。他に⑩耐水ペーパー。水をつけながら研磨する。⑪マスキングテープ。継いだ器の固定に使用。⑫和紙。絵漆を濾す際に使う。⑬ビニール手袋。漆は肌につくとかぶれるので、注意して取り扱いたい。
右から、①筆。筆は金を蒔くために使うものと、漆のラインを引くために使う筆を用意する。②ヘラ。断面や欠けに漆を塗る際に使う。③強力粉と砥の粉(とのこ)。漆に混ぜて使う。④金粉 ⑤テレピンオイル ⑥水 ⑦サラダ油 ⑧真綿。金粉を均一に漆に乗せるために使う。⑨漆。他に⑩耐水ペーパー。水をつけながら研磨する。⑪マスキングテープ。継いだ器の固定に使用。⑫和紙。絵漆を濾す際に使う。⑬ビニール手袋。漆は肌につくとかぶれるので、注意して取り扱いたい。
漆は3種類を使用。生漆(きうるし)は強力粉や砥の粉と混ぜて接着に使い、黒漆で素地を整える。赤茶色の絵漆(えうるし)は金の塗装を施す際に使用する。写真の左から2本目は日本産生漆。
漆は3種類を使用。生漆(きうるし)は強力粉や砥の粉と混ぜて接着に使い、黒漆で素地を整える。赤茶色の絵漆(えうるし)は金の塗装を施す際に使用する。写真の左から2本目は日本産生漆。
右の強力粉は、生漆と混ぜ合わせ、接着剤として使うためのもの。左の砥の粉は、漆と混ぜ合わせ、欠けを埋めるパテとして使う。
右の強力粉は、生漆と混ぜ合わせ、接着剤として使うためのもの。左の砥の粉(とのこ)は、漆と混ぜ合わせ、欠けを埋めるパテとして使う。
金粉にも種類がある。「消粉」は金箔を粉にしたもの。赤漆に撒くとピタっとつく。「丸粉」は地金を削ったもの。粒子が球体のため漆に載せただけではうまくつかないので、蒔いた上にさらに漆を重ねて研ぎだすことで、金の輝きを出す。手間はかかるが耐久性は消粉より高い。銀色に仕上げたい時は、銀消粉を使う。
金粉にも種類がある。「消粉」は金箔を粉にしたもの。赤漆に撒くとピタっとつく。「丸粉」は地金を削ったもの。粒子が球体のため漆に載せただけではうまくつかないので、蒔いた上にさらに漆を重ねて研ぎだすことで、金の輝きを出す。手間はかかるが耐久性は消粉より高い。銀色に仕上げたい時は、銀消粉を使う。
右から、「テレピンオイル」。漆をゆるめるのに使う。「水」。砥の粉と混ぜ合わせたり、耐水ペーパーにつけて使う。「サラダ油」。漆がついた筆を洗う際に使う。
右から、「テレピンオイル」。漆をゆるめるのに使う。「水」。砥の粉と混ぜ合わせたり、耐水ペーパーにつけて使う。「サラダ油」。漆がついた筆を洗う際に使う。
耐水ペーパー。800番と1000番を準備。継ぎ目から溢れた漆や、欠けを埋めた漆のパテを研ぐために使う。
耐水ペーパー。800番と1000番を準備。継ぎ目から溢れた漆や、欠けを埋めた漆のパテを研ぐために使う。

割れた器を接着する

接着に使う漆は、生漆と強力粉を混ぜたものを使う。
「私はタイルの上で作っていますが、絵皿を使うのもよいでしょう」
 

割れた器の断面に練った漆を塗り、貼り合わせる。段差がないように確認しながらしっかりと合わせて接着し、マスキングテープで固定する。

漆は、28度前後、湿度60〜80%で最も乾燥が進む。
継いだ器は約一週間、温度と湿度を保った“室(むろ)”に入れて乾かす。
「私は木箱に電熱ヒーターと濡れた布を入れて室を作っています。
冬場と夏場では作業中の漆の乾燥の進みも変わります。特に赤うるしに金粉を撒く際は、乾いていないうちに金を撒くと沈んでしまうので注意が必要です」

次回のNo.2では、欠けを埋める作業と、いよいよ金を撒く工程を紹介。乞うご期待!

(1)強力粉に生漆を加える。
(1)強力粉に生漆を加える。
(2)ヘラで生漆と混ぜ合わせる。
(2)ヘラで生漆と混ぜ合わせる。
(3)写真のような粘りのある濃さが目安。
(3)写真のような粘りのある濃さが目安。
(4)それぞれの断面に漆を塗る。
(4)それぞれの断面に漆を塗る。
(5)破片と破片に段差がないことを確認。
(5)破片と破片に段差がないことを確認。
(6)継いだ器をマスキングテープで固定し、室(むろ)に入れて乾かす。
(6)継いだ器をマスキングテープで固定し、室(むろ)に入れて乾かす。

合成樹脂を使う金継ぎ

漆の代わりに合成接着剤を使う簡易的な方法もある。
漆を使った金継ぎは、漆を乾かすのに時間がかかるが、合成樹脂を使えばすぐに乾くので、金継ぎの時間が短縮できる。

「一日で終了する体験的な金継ぎワークショップでは、合成樹脂を使います。
接着剤を割れた断面につけて、ずれないように押し付けて15分ほど乾かします。
乾いたら、赤うるしを継いだ部分に塗って30分ほど乾かし、金を撒きます。その後は数日乾かしますが、教室では金を撒いて終了します」

ちなみに、接着剤は2液を混ぜ合わせるタイプの、比較的ゆっくりと接着する接着剤を使う。瞬間接着剤はつけた瞬間についてしまうので、ズレを修正できないのでオススメできないのだそうだ。

右から、カケを埋めるのに使うエポキシパテ。混合タイプの接着剤。ジェルネイルでお馴染みの光硬化型のパテ。光硬化型のパテを硬化させるのに使うUVライト。
右から、カケを埋めるのに使うエポキシパテ。混合タイプの接着剤。ジェルネイルでお馴染みの光硬化型のパテ。光硬化型のパテを硬化させるのに使うUVライト。
合成接着剤でつけた器。はみ出た部分は削り、赤うるしを継いだ部分に塗って、しばらく置いたあと(30分ほど)、金を撒いて仕上げる。
合成接着剤でつけた器。はみ出た部分は削り、赤うるしを継いだ部分に塗って、しばらく置いたあと(30分ほど)、金を撒いて仕上げる。