暮らしをデザインする布1枚の布を自由に使って
窓を隠すのではなく彩る
欧米と異なる、日本の窓の歴史
窓の大きさに合わせてオーダーしたり、引っ越しの度に買い替えたり。窓まわりにかけるカーテンに悩まされて来た人は多いはず。
「窓まわりというと大まかにはカーテンかブラインドの2択しかなくて、これまで選択肢が少なかったですね」。
と語るのはテキスタイルクリエイターであり、『ieno textile』の代表、南村弾さん。ご実家はファブリックメーカー。いつも布が身近にある環境で育ったのだそう。
「自分の家にはカーテンというものはなくて、ただ布のサンプルを試して使っていただけなんです。縫製もされていないほとんど切りっ放しの布を、簡単なクリップでつまんだり、留めてかけていたり。気軽な感じであしらっていました」。
窓には美しく仕立てられた、ぴったりとサイズが合うカーテンをかけなくてはいけない。そのスタイルはどこから生まれたのだろう。
「ヨーロッパのインテリアが日本に入ってきて、カーテンも広まっていきましたが、日本のカーテンはあくまで“カーテン風”なんです。国によってライフスタイルは違っていて、海外では人を家に招く習慣が根づいています。またドイツでは、外を歩いている人にも家の中を見せる文化があって、カーテンもインテリアの一部と捉えられています。だから、そもそも閉じることを考えて作られていません。ところが日本では隠す文化があるので、家の中を見せないようにするためにカーテンを作ってきたという背景があります」。
各国の文化をミックスしながら、さらに閉じる文化に合わせて進化してきたのが、日本で生まれた日本風カーテン。
「でも今の時代、モノはもう十分買ったので、そろそろ違うものを取り入れたい、隠すためのカーテンじゃなくてもいいと考える人が増えてきています。この20年で考え方が大きく変わってきました。その時に、私自身は自分の家でやってきたことが、スタートになりました」。
アレンジにベストサイズの布
『ieno textile』で扱っている布の商品は全て、約140cm×230cmというサイズだ。
「20年程前、試作品を家で使っていて、ある時必要なもののサイズに大まかに切ってみたんです。そもそも生地幅は140cm〜150cmが多く、その幅を活かして必要な高さで切ってみたところ200cm〜230cmでした。これが色々に使える暮らしにベストなサイズだったのです」。
もともとカーテンを想定したわけではなく、およそ140cm×230cmの布があれば、テーブルまわりにもベッドまわりにも、暖簾やパーテーションにも、どこでも使えることを発見して、1枚の布“14-23”が生まれた。
「これを手に入れた途端、窓まわりにおいても自由な使い方が可能になりました。そもそも布を窓にかけるというもともとあった発想が、今新しく感じられるのが面白いです」。
2枚両開きで高さが180cm〜200cmくらいの典型的な日本の窓であれば、20cm〜30cmを折り返してクリップで挟めば窓まわりにかけられるし、そのまま横にすれば腰高窓にも対応してくれるなど、色々なタイプの窓に使いこなすことができる。
「左右で違うカラーの“14-23”をかけるなど、アレンジも楽しめます。窓で使っていて飽きたらテーブルクロスにしたりソファカバーにしたり。最近ではクローゼットのパーテーションなど、建具の代わりにされる方も多いです。色々な用途に使えて、アレンジの幅が広がっていきます」。
リノベ時にも活用したい
視線や光を遮り、断熱・保温効果を得るためのカーテンから、暮らしを楽しむための1枚の布へ。
「布には機能性だけでなく、柔らかさや優しさ、温かみや涼しさという特性があるので、そういった雰囲気も楽しんでほしいですね」。
リノベーション時に引き戸や開き戸、間仕切りなどの選択に悩んだら、“14-23”を使ってみる。透け感のある素材が光を優しく通したり、鮮やかな色合いが立体感を生んだり、空間を魅力的に仕上げてくれる。その際には、布を吊り下げるためのクリップや、束ねるためのタッセルなどの小物を使って、様々なアレンジも楽しみたい。
「〜用と決めつけるのではなく、布を取り入れた暮らしを楽しんでほしいし、布を愛して使ってほしいと思います。カーテンであれば窓辺を彩る道具として。それに飽きたら別の用途で。Tシャツのように折り畳んでおけるので、洋服を着替えるように、季節や気分に合わせて使ってもらってもいいです」。
インテリアのプロも愛用する“14-23”。暮らしを自分らしくデザインするための、ひとつの道具となってきた。