廃れいくものを活かして 新進気鋭の空間が生まれる ゆったりと時が流れる廃工場

廃れ行くものを活かして新進気鋭の空間が生まれる
ゆったりと時が流れる廃工場

“もったいない”が始まりだった

剥き出しのコンクリートや、武骨な古材・廃材を使った空間が、TO KO SIEでも人気の工務店「YUKUIDO」。そのベースは、台東区・東上野の路地裏にある。かつてメッキ工場だった建物を改修した「ROUTE89 BLDG.」は、事務所であり工房、そして人が集まれるオープンなスペースでもある。昔ながらの下町の風情が残る住宅街にある、その一角を訪ねてみた。
「ここは工場で使われていたものや、以前私がやっていた海の家で余った板など、在りものを使って造りあげた空間です。もともと廃材を扱う仕事をしていて、もったいないと思って使ってみたのが始まりなんです」と、代表の丸野信次郎さん。
「YUKUIDO」では、リノベーションだけでなく、解体現場から持ち帰った廃材、お客さんから支給された素材などを使って、家具も制作。鉄のフレームの大きな階段が圧巻の工房では、制作途中や完成後のオリジナル家具も目にすることができる。

使われていなかった廃工場を再生。コンクリートの躯体を活かしつつ、古材やトタン、溶接した金物を使って甦らせた。アイアンの階段を登った2階が事務所。1階が工房となっている。

使われていなかった廃工場を再生。コンクリートの躯体を活かしつつ、古材やトタン、溶接した金物を使って甦らせた。アイアンの階段を登った2階が事務所。1階が工房となっている。

錆びたトタンで囲った溶接スペース。

錆びたトタンで囲った溶接スペース。

大きなアイアンの扉は、前の工場から使われていたもの。

大きなアイアンの扉は、前の工場から使われていたもの。

階段上から工房を見る。

階段上から工房を見る。

ロスから日本に輸送される際の、クロムハーツの梱包材をアレンジして家具を制作。取っ手にはクロムハーツのキーホルダーを取り付けた。

ロスから日本に輸送される際の、クロムハーツの梱包材をアレンジして家具を制作。取っ手にはクロムハーツのキーホルダーを取り付けた。

2階の事務所。工事現場で使われる照明をそのまま使用している。

2階の事務所。工事現場で使われる照明をそのまま使用している。

都心のコミュニティスポット

「ROUTE89 BLDG.」とその向かいに建つ「ROUTE BOOKS」では、リノベーションの相談だけでなく、「YUKUIDO」のものづくりの雰囲気を様々な形で味わうことができる。
「置いてある廃材は勝手に持っていってもらってもOKなんです。でも家で何か作るのだったら、ここで作ってもらってもいいかなと思って始めたのが、ワークショップです」。
工房ではプロが使う工具を使って、職人さんのアドバイスを受けながら家具を自由に制作することができる。参加費・廃材はなんと無料だ。リラックスしたいときは「ROUTE BOOKS」でゆったり本を読んだり、お茶の時間を愉しんだり。味わいのあるオリジナルの家具と溢れるようなグリーンが癒しを与えてくれる。
「植物は廃材との相性がいいんです。色々集めているうちに増えていったので、店でも販売することになりました」。
そんな自然の流れから、毎年開催されているのが“ROUTE COMMON crafters market”。コロナ禍を経て今年3月、3年ぶりの開催となった。雑貨や器、フードなどの作り手たちが、それぞれの作品を出品。ミュージシャンによるライブも行われる中、近隣から遠方まで、たくさんの人が集まり交流できる場となっている。

ワークショップは毎週土曜日に開催。

ワークショップは毎週土曜日に開催。

工房の向かい側にある「ROUTE BOOKS」。手作りのパンやスイーツが愉しめる。建築関係の本なども。

工房の向かい側にある「ROUTE BOOKS」。手作りのパンやスイーツが愉しめる。建築関係の本なども。

熱帯、亜熱帯の植物を中心に販売するボタニカルショップ。部屋のアレンジやガーデニングの提案もしてくれる。

熱帯、亜熱帯の植物を中心に販売するボタニカルショップ。部屋のアレンジやガーデニングの提案もしてくれる。

癒しムードが漂う「ROUTE BOOKS」の2階。

癒しムードが漂う「ROUTE BOOKS」の2階。

経年の味わいにグリーンが調和。

経年の味わいにグリーンが調和。

オリジナルのリメイクテーブル

オリジナルのリメイクテーブル

陶芸体験で土に触れてみる

「ROUTE BOOKS」の2階では、陶芸教室「陶庵」もほぼ毎日開催。ビギナー向けの体験レッスンと、定期的に通える創作レッスンを行っている。
「週末はたくさん人が集まりますが、平日は割とゆったり、マンツーマンでレッスンすることが多いですね」と、陶芸作家の荒井彩乃さん。
九谷焼で使われる石川県の白土を使って作陶。自分の作りたいお皿や湯呑み、茶碗などを、一から指導してもらいながら作ることができる。今回、電動ろくろを体験してみた。
「大切なのは優しい力から始めることです。力は徐々に入れるようにしていきます。ポイントをお教えしますので、どなたでも素敵な器が完成しますよ」。
土に触れると不思議と心が温まり、穏やかな気持ちに。ゆったりと時が流れるかのような空間で、ものづくりと触れ合う時を愉しみたい。

電動ろくろ体験は¥4,000〜。手びねりや絵付け体験も。要予約。CERAMICS ART (https://route-books.com/ceramics-art/) 。

電動ろくろ体験は¥4,000〜。手びねりや絵付け体験も。要予約。CERAMICS ART

「陶庵」で作れる器たち。色をのせると+¥500。

「陶庵」で作れる器たち。色をのせると+¥500。

陶芸作家の荒井彩乃さんに教えていただいた。

陶芸作家の荒井彩乃さんに教えていただいた。

足でペダルを踏み、電動ろくろを回してスタート。天板の中央に土を載せ、手で包み込むように押す。

足でペダルを踏み、電動ろくろを回してスタート。天板の中央に土を載せ、手で包み込むように押す。

濡らした両手で、土を包み込むようにしながら回していく。

濡らした両手で、土を包み込むようにしながら回していく。

土を縦に伸ばしたり、押し戻したりを繰り返す“土殺し”を行う。土の硬さを均一にするのが目的。

土を縦に伸ばしたり、押し戻したりを繰り返す“土殺し”を行う。土の硬さを均一にするのが目的。

押し戻すときは、指先の付け根にしっかり体重をかけて押していく。水分量がちょうどよいと成型しやすくなる。

押し戻すときは、指先の付け根にしっかり体重をかけて押していく。水分量がちょうどよいと成型しやすくなる。

器の形を作っていく。両手で土をそっと包み込み、右手の親指を円の中心に移動させ、指先を下に倒して押し、下から1cmくらいのところまで穴を開ける。

器の形を作っていく。両手で土をそっと包み込み、右手の親指を円の中心に移動させ、指先を下に倒して押し、下から1cmくらいのところまで穴を開ける。

穴を広げていく。両手の親指を穴に入れ、土の壁を押すように指を外側に向けて、4本指がゆったり入るくらいまで広げていく。

穴を広げていく。両手の親指を穴に入れ、土の壁を押すように指を外側に向けて、4本指がゆったり入るくらいまで広げていく。

右手の中指を内側に、親指を外側にして左手で支えつつ、厚さが5mmになるまで、上にまっすぐ伸ばしていく。力加減、スピードが合わないと土がいびつになるので、優しい力から始めて、徐々に挟む力を強めていくのがポイント。

右手の中指を内側に、親指を外側にして左手で支えつつ、厚さが5mmになるまで、上にまっすぐ伸ばしていく。力加減、スピードが合わないと土がいびつになるので、優しい力から始めて、徐々に挟む力を強めていくのがポイント。

両手で土を挟み、下から上に向かってゆっくり動かして形をつくっていく。自分の好きな形に調整する。

両手で土を挟み、下から上に向かってゆっくり動かして形をつくっていく。自分の好きな形に調整する。

口元をなめらかにする。ろくろのスピードを落とし、なめし革で口をならす。

口元をなめらかにする。ろくろのスピードを落とし、なめし革で口をならす。

体験はここまで。この後、釉薬を掛けて焼きあげてくれる。

体験はここまで。この後、釉薬を掛けて焼きあげてくれる。

廃工場から様々な活動が生まれ、コミュニティの輪が拡大。クリエイターの集まる場に。

廃工場から様々な活動が生まれ、コミュニティの輪が拡大。クリエイターの集まる場に。

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