整理収納アドバイザーのアイデア ゆとりある暮らしを生む
キッチン、洗面室の整え方
家づくりがきっかけに
4年程前に、築約16年のマンションをリノベーション。自然素材を使った、経年変化が楽しみな空間を完成させたたなべしほさん。当時、リノベ計画とともにスタートさせたのが整理収納の勉強だった。
「整理収納についても学ばれた設計士さんの影響が大きいですね。心地よい空間をつくるためには、快適に暮らせる仕組みづくりが欠かせません。せっかく自分好みの空間を完成させたのだから、持ちものを厳選して余裕のある暮らしを楽しみたい。家づくりがきっかけとなって、モノを断捨離し、整えることの大切さを感じるようになりました」
アドバイザーの資格も取得。心地よい生活の大切さを伝えたいと、活動を広げている。理想の空間で暮らしを楽しむ、たなべさんの整理収納のシステムを見せていただいた。
キッチンは使いやすく、美しく
「普段はキッチンにいることが多いんです。リノベ当時、ふたりの子どもがまだ小さかったので、家事をしながら子どもを見守ることができるよう、設計してもらいました」
リビングや勉強スペースにいるお子さんに常に目を配れるだけでなく、調理しながら洗濯をしたり、お子さんをお風呂に入れたり。家のほぼ中央にあるオープンキッチンは、たなべさんの滞在時間が最も長い場所。洗面室に隣接していて、この動線が日常生活の要となっている。
「キッチンは私の城なんです。だから使い易さだけでなく見た目も好みに合うように整えています」
目に入る位置には、昔から大事にしている調理器具をハンギング。レンジフード上のスペースも自然素材のカゴを活用して、中身を隠しつつ収めている。
「まな板などを置いておくとカビが生えやすく、掃除も面倒なので吊り下げています。子どものカラフルな水筒など、目立つものはカゴに入れて布をかけ、隠しています。さらにグリーンもあしらって、目に癒しを与えています」
戸棚は、使用するケースに合わせて設計してもらった。
「同じケースが並んで収まるように計算されています。浅いケースを使うと、中のモノが見えてしまって嫌なので、高さも考えてもらいました。普段は扉を閉めているのですが、開けたときの景観も大事。扉を開けて遠くから眺めるのが好きなんです(笑)」
シンク下の収納には、同一の色や素材のモノをグルーピングして配置。扉を開けたときにも、目にうるさくない。
「あとは取り出しやすさの工夫ですね。食洗機から最短の位置に日常使いのモノを置いたり、袋などの消耗品は上からさっと取り出せるよう、基本的に立てて収納するなどしています」
食材や消耗品、洗剤など、統一した容器に詰め替えているモノも多い。このひと手間が後々の動作をラクにし、見た目も整えてくれる。
洗面所にも空きスペースを
キッチンの横にある洗面室は、たなべさんのこだわりが詰まった場所でもある。
「シューメーカースツールや、持っていた収納ケースがきれいに収まるように設計してもらいました」
シューメーカースツールは、移動させてキッチンで作業中に腰かけたり、リモートワークスペースで使ったり、用途の広いアイテム。
「持ちモノを増やすのが好きではないので、とも気に入っています。収納ケースも以前から持っていたモノを活用できました」
家族全員分の下着やハンカチ、マスクなど、入浴や外出の前後に必要なモノを一括に。
「子どもの衣類は、冬物のダウン以外、すべてここに収めていますが、厳選しているのでそれでも余裕があります。最上段にはカゴを置いていて、仮置きの衣類などを一時的に保管しています。だから空っぽだったりすることが多いのですが、こうした余白が使いやすさに繋がります」
洗面収納もすべて扉を付けて棚にはせず、あえて余白を残している。
「棚の中にもグリーンを飾っているんです。生活感を出さないようにする工夫が大事だと思いますね」
洗面所ではアロマの調合をゆっくり楽しむことも。生活インフラスペースも、趣味を楽しむ心地よい場所となっている。
心にゆとりが生まれた
必要なモノだけで揃えたキッチン&洗面。ただ、ストック用の食材や生活必需品、非常用持ち出し袋を備えたパントリー代わりの場所も、1カ所確保している。
「玄関収納をストレージとして活用しています。配達してもらったとき、ほとんど移動させないで収納できるのが便利です」
玄関先には、夫の趣味である自転車を、オーダーしてつくったフックを使って壁付けに。グリーンも添えることで、家のチャームポイントともなっている。
「家づくりがきっかけでモノを減らすことになり、好きなモノだけに囲まれた暮らしが実現できました。整理収納の仕事を始めたことで、前より忙しくなったのですが、システムが整い無駄が省かれたからか、時間に余裕が生まれました。スケジュール管理も上手くなり、暮らしを楽しめるようになりましたね」
空いた時間は、キッチンカウンターで一人お茶を飲んだり、好きなアロマの調合を楽しんだり、インテリアのことを考えたり。
「クッションカバーを変えることや、グリーンをお世話することなどをいつも考えています。インテリアに興味を持つことは、人生に必要なことだと思うのですが、どうしても後回しになりがちですよね。そんな心のゆとりを持てるようになったことが嬉しいです」