照明でムードを高める  空間に奥深さを出す あかりの取り入れ方

照明で陰影を楽しむ空間に奥深さを出す
あかりの取り入れ方

秋は家々からこぼれ出るあかりに心そそられる季節。暖かいあかりやほの暗いあかり…。あかりは家族の団欒や、リラックスタイムにとって大事な役割を果たしてくれる。だから照明をインテリアの一部として大切に考えたいもの。住空間での効果的なあかりの取り入れ方を、照明デザイナーの村角千亜希さんに伺った。

効率性だけでない照明を

「日本の住宅照明は、まだまだ世界の中でも明るすぎると言われています」と村角さん。
大きなシーリングライトを1つ天井につけることで明るさを確保している家は多い。
「効率的で便利ですが、部屋全体をまんべんなく照らすので何となく落ち着かず安らぎにくいのです」。
特に夜は明るさをセーブし、やわらかなあかりの下でリラックスしたいもの。
「1カ所からパワフルに照らすのではなく、スタンドライトやペンダントライトを必要な場所に活用しましょう」。
読書など手元を明るく照らしたいときはパワースタンドもおすすめ。容量の大きなランプなので、1台でもしっかりと部屋を明るく照らすことが可能。シェードから光を拡散して、機能的でありながら心地よいあかりを届けてくれる。

リラックスしたいときには、部屋中を照らすシーリングライトよりもスタンドライトがふさわしい。

リラックスしたいときには、部屋中を照らすシーリングライトよりもスタンドライトがふさわしい。

ディナータイムはペンダントライトが暖かな食卓を演出。テーブルに合う大きさで、吊るす高さはテーブルの上からライトの下まで70cmくらいが一般的。

ディナータイムはペンダントライトが暖かな食卓を演出。テーブルに合う大きさのもので、吊るす高さはテーブルの上からライトの下まで70cmくらいが一般的。

白熱ランプで100〜200W相当の、大きな容量のランプが入ったパワースタンド。いくつも照明器具をつけなくても明るさが確保できるのでおすすめ。

白熱ランプで100〜200W相当の、大きな容量のランプが入ったパワースタンド。いくつも照明器具をつけなくても明るさが確保できるのでおすすめ。

光と空間の相性を考える

「照らし出されるマテリアルとの相性も大切です」。
例えば壁は、光を受けてキラリと反射したり、ふんわり広がったり、光を取り込んで落ち着いて見えたり、と色々な表情を見せる。
「ビニールなど人工的なものではなく、天然素材を使うと、光を受けて素材の質感や美しさが引き出されます。壁や床などの素材選びにはこだわりましょう」。
村角さんのおすすめは左官仕上げやツヤ消しマット塗装の壁、無垢の床のオイル仕上げなど。あかりの強さや向きによっても表情を変えて、楽しめる。
また、村角さんはリビングの一部にあえて家具を置かない、「まっ白な大きな壁」を確保。
「この壁の前にスタンドライトを置きたかったんです。壁が大きな反射板となって光を拡散し、美しいグラデーションが描かれます」。
光の陰影は空間演出のひとつ。あえて余白を設けて、時間によって変化するその映り具合を楽しみたい。

村角さんの家のサニタリーの一角。スノーピンクの左官壁が、光をやわらかく受けてナチュラルで落ち着いた雰囲気を与える。

村角さんの家のサニタリーの一角。スノーピンクの左官壁が、光をやわらかく受けてナチュラルで落ち着いた雰囲気を与える。

リビングの白い壁は漆喰仕上げ。微妙な凹凸が光を反射して陰影を生み、自然な味わいを出す。

リビングの白い壁は漆喰仕上げ。微妙な凹凸が光を反射して陰影を生み、自然な味わいを出す。

マットなツヤ無し仕上げは、光をしっかりと受け止めるので映り込みがなく上品な雰囲気に。

マットなツヤ無し仕上げは、光をしっかりと受け止めるので映り込みがなく上品な雰囲気に。

リュクスに仕上げるあかり

キッチンで調理をするときなどは、しっかりとした明るさがほしいので、手元灯として蛍光灯やLEDなどがあると便利。だが、調理後はライトを落として気分を切替えたい。
「作業性を考えたアクティブモードと、食後の時間を楽しむステイモードの2種類を用意しておくと便利です。食事中は調光でアクティブモードを弱め、食後はブラケットライトやダウンライトをほんのり灯してはいかがでしょう」。
やわらかなあかりで過ごすリラックスタイムにも、一部をスポットライトで照らしておくと効果的。お気に入りのディスプレイなどを照らすとムードが高まる。
同時に、忘れたくないのがサニタリー。
「我が家ではいちばんパウダールームにいちばんこだわっています。ダウンライトとガラスシェードのペンダントライトで、リュクスな仕上げにしています」
現実的な場所であるからこそ、ラクジュアリーに設えてあかりの効果を取り入れたい。

調理中は明るさが必要。その場合も白色ランプではなく、LDKとのつながりを考えて電球色の温かみのある色味を選びたい。

調理中は明るさが必要。その場合も白色ランプではなく、LDKとのつながりを考えて電球色の温かみのある色味を選びたい。

調理後は手元灯を消し、ブラケットライトやダウンライトをほんのりと灯して。調光で光量の調整をするのも有効。

調理後は手元灯を消し、ブラケットライトやダウンライトをほんのりと灯して。調光で光量の調整をするのも有効。

サニタリーまわりにこだわると、ホテルのように上質な暮らしが楽しめる。ペンダントライト選びにもこだわりたいもの。

サニタリーまわりにこだわると、ホテルのように上質な暮らしが楽しめる。ペンダントライト選びにもこだわりたいもの。

あかりを落とした夜の時間は、スポットライトで一部を照らすとムーディーに。壁にかけた絵などを照らしても素敵。

あかりを落とした夜の時間は、スポットライトで一部を照らすとムーディーに。壁にかけた絵などを照らしても素敵。

機能面、効率性だけでなく、インテリアの一部として考えたい照明。部屋を照らすスタンドライトやペンダントライト以外にも、1つ置くだけでムードアップしてくれるあかりのアイデアが色々。本棚にあかりをディスプレイとして取り入れたり、カラーランプで室内をカラフルに彩ってみたり…。様々な工夫を取り入れて、部屋のアレンジを楽しんでみては。

ソファーの背後に床置きの間接照明を。ソファーを壁から少し離すことで光の通り道ができ、床から壁伝いに光が広がってアッパーライトになる。

ソファーの背後に床置きの間接照明を。ソファーを壁から少し離すことで光の通り道ができ、床から壁伝いに光が広がってアッパーライトになる。

本棚の一角に小さなスタンドライトを。まわりの本や小物を照らし、本棚がディスプレイ棚のようにチェンジ。

本棚の一角に小さなスタンドライトを。まわりの本や小物を照らし、本棚がディスプレイ棚のようにチェンジ。

LEDのカラーランプでカラフルに。映画を観るときやパーティーなど、いつもと違う雰囲気を演出してくれる。

LEDのカラーランプでカラフルに。映画を観るときやパーティーなど、いつもと違う雰囲気を演出してくれる。

コーナーの暗がりや部屋の入り隅、デッドスペースなどに小さなライトをしのばせる“かくれんぼライト”。照明器具が隠れていることでより幻想的な雰囲気を出してくれる。

コーナーの暗がりや部屋の入り隅、デッドスペースなどに小さなライトをしのばせる“かくれんぼライト”。照明器具が隠れていることでより幻想的な雰囲気を出してくれる。

椅子の背もたれや棚など、様々なところに挟めるクリップライト。小型でシンプルなものがあれば使いやすく、簡単な間接照明として、ディスプレイコーナーのライトとして活躍。

椅子の背もたれや棚など、様々なところに挟めるクリップライト。小型でシンプルなものがあれば使いやすく、簡単な間接照明として、ディスプレイコーナーのライトとして活躍。

村角千亜希さん
照明デザイナー スパンコール代表。著書に「照明で暮らしが変わる あかりの魔法」¥1600(エクスナレッジ)がある。

撮影:水谷綾子

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