(4)金継ぎの完成!

身近な金継ぎを習う 後編 思い出の器に金を撒いて
華やかに蘇らせる

欠けを修繕する

大脇京子さんに教えていただく「身近な金継ぎを習う」の前編では、割れた器を“接着”する方法を習った。
今回の後編では、飲み口が薄く剥がれるような欠けや、割れた器のパーツが揃わない場合の、欠けた部分を“補う”技術を学ぶ。
 

接着や欠けが修繕できたら、いよいよ金を蒔いて仕上げていく。

「ご依頼のアスティエ・ド・ヴィラットです。持ち手のパーツの一部がありませんでした。「さてどう治そうか、ずいぶん思案しました。負担のかかる持ち手の修復は、麻布を撒き、のり漆で固めることが多いです」

「ご依頼のアスティエ・ド・ヴィラットです。持ち手のパーツの一部がありませんでした。「さてどう治そうか、ずいぶん思案しました。負担のかかる持ち手の修復は、麻布を撒き、のり漆で固めることが多いです」

上の写真のアスティエの金継ぎは、持ち手のパーツの制作からスタート。まずエポキシパテで形成し、その上から錆漆(砥の粉と混ぜ合わせてペーストにした欠けを埋める材料)で表面を整え、黒漆を何度も塗り重ねて修復し、仕上げに金を撒きました」

上の写真のアスティエの金継ぎは、持ち手のパーツの制作からスタート。まずエポキシパテで形成し、その上から錆漆(砥の粉と混ぜ合わせてペーストにした欠けを埋める材料)で表面を整え、黒漆を何度も塗り重ねて修復し、仕上げに金を撒きました」

欠けることが多い薄口の器。金継ぎで修復すれば素敵なアクセントに。上のアスティエは赤みのある金に、こちらの透明感のある器は青みがかった金で仕上げた。

欠けることが多い薄口の器。金継ぎで修復すれば素敵なアクセントに。上のアスティエは赤みのある金に、こちらの透明感のある器は青みがかった金で仕上げた。

割れた器には、欠けが伴うことが多い。この器は、接着と欠けを補い、金継ぎしている。

割れた器には、欠けが伴うことが多い。この器は、接着と欠けを補い、金継ぎしている。

鎌倉在住の大脇さん。カリフォルニアでギャラリー「turtle&hare」にて個展とデモンストレーションを成功させる。帰国後、全国から金継ぎの依頼を受注。器に合わせた仕上げのアドバイスも好評を得、著名人からの依頼も多数。定期的にワークショップを開催し、金継ぎの楽しさを多くの人に伝えている。

鎌倉在住の大脇さん。カリフォルニアでギャラリー「turtle&hare」にて個展とデモンストレーションを成功させる。帰国後、全国から金継ぎの依頼を受注。器に合わせた仕上げのアドバイスも好評を得、著名人からの依頼も多数。定期的にワークショップを開催し、金継ぎの楽しさを多くの人に伝えている。

依頼の品。持ち手近くのカップの口が欠けた部分を金継ぎ。金継ぎをすることで自分だけのオリジナルな思い出の品に変わる。

依頼の品。持ち手近くのカップの口が欠けた部分を金継ぎ。金継ぎをすることで自分だけのオリジナルな思い出の品に変わる。

欠けを補填する錆漆の作り方

割れた器の接着には、生漆に強力粉を混ぜた「麦漆」を使ったが、欠けた部分を補う材料には、生漆に砥粉(とのこ)を混ぜた「錆漆」を使用する。
 

「後で研いでいくので、欠けた部分に多めに乗せてください。
3〜4日乾かしたあと、耐水ペーパーで研ぎます。器の部分に耐水ペーパーが当たると傷をつけてしまいますので、なるべく漆だけに当たるように心がけてください」

もし錆漆が余ったら、空気を遮断するようにラップに包めば、1〜2日程度保存できる。

(1)口をつける部分は欠けやすい。きれいに直したい。

(1)口をつける部分は欠けやすい。きれいに直したい。

(2)砥粉を適量とって、砥粉がまとまる程度の少量の水で練る。

(2)砥粉を適量とって、砥粉がまとまる程度の少量の水で練る。

(3)練った砥粉に生漆を加える。

(3)練った砥粉に生漆を加える。

(4)砥粉と生漆をよく混ぜ合わせる。

(4)砥粉と生漆をよく混ぜ合わせる。

(5)ヘラを使い、欠けた部分につける。

(5)ヘラを使い、欠けた部分につける。

(6)研いでいくので多めに乗せ、3〜4日乾かす。

(6)研いでいくので多めに乗せ、3〜4日乾かす。

(7)800番〜1000番の耐水ペーパーで丁寧に研ぎ、段差のないように仕上げる。

(7)800番〜1000番の耐水ペーパーで丁寧に研ぎ、段差のないように仕上げる。

赤漆を塗る

割れた器を接着したり、欠けを修繕した後、金を蒔くための前段階、色漆を塗っていく。この色漆に金を撒く。
金の発色を良くするためには、赤や弁柄の漆を使うとよい。

「漆を塗る際のコツですが、ゆっくりと筆を動かすと、細い線でもかすれずに引けます。何度も塗り直すと2重線になりやすいので、ゆっくりと一気に一本の線を引くようにしてください」

(1)和紙に赤漆を適量とる。

(1)和紙に赤漆を適量とる。

(2)和紙を絞り、漆のゴミやホコリを濾しとる。

(2)和紙を絞り、漆のゴミやホコリを濾しとる。

(3)継いだ部分に(この皿の場合はヒビの補修)、赤漆を塗る。

(3)継いだ部分に(この器の場合はヒビの補修)、赤漆を塗る。

金を蒔く

いよいよ最後の金を蒔く仕上げの工程だ。

「赤漆が半乾きの状態になったら、上から筆にとった金粉をトントンと落としていきます。その際、筆と漆がつかないように気をつけてください。
まだ乾かないうちに蒔くと金が漆に沈んでしまいますし、遅いと金が乗りません。蒔くタイミングが大切です」

真綿を使って優しくクルクルと金を馴染ませる。
「不必要な金を取り除くと同時に、必要な場所に金を乗せていく作業です」
真綿の下でみるみる金が輝き出す。金継ぎの完成だ。

「熱湯でグツグツ煮れば漆は剥がれるので、失敗を恐れずに挑戦してください。
金粉には種類が多く、赤みがかった金から、青みがかった金まで、粒子の大きさによってガラリと雰囲気が変わります。私も金の色を変え、時に銀にしたりと、金継ぎをし直しながら楽しんでいます」
どんな色に仕上げたら魅力的な姿に蘇るのか、器と金の種類の相性を考えながら金継ぎを楽しみたい。

(1)筆に金粉を含ませる。

(1)筆に金粉を含ませる。

(2)赤漆の上から金を蒔く。

(2)赤漆の上から金を蒔く。

(3)真綿をクルクルと滑らせ、金をまんべんなく馴染ませていく。

(3)真綿をクルクルと滑らせ、金をまんべんなく馴染ませていく。

(4)金継ぎの完成!

(4)金継ぎの完成!

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