日常の器に生ける  身近な草花を 普段使いの器に合わせる

日常の器に生ける身近な草花を
普段使いの器に合わせる

季節の移り変わりを楽しむ

日々の暮らしの中で草花を生ける楽しみを教えてくれる挿花家の雨宮ゆかさん。
今回、“日常の器”を使って生け花を楽しむ方法を教えていただいた。
 

日常で使う器には身近にある花のほうが似合う上に、生ける楽しみも大きい。
「たとえば、上の写真の、白いお皿に生けたビオラは、冬から育てておくと、春の終わりまで長い間花をつけてくれます。
そのビオラを摘んで、大きなお皿に一輪、生けます。アケビで花留を作って水を張ったお皿に入れビオラを挿し、 “冬忍”と書くニンドウを添えれば、春を待ちつつ冬を楽しむ花になります。
生けることで身近な季節の移り変わりを、ぜひ楽しんでいただければと思います」

気に入って選んだ器なら、自分好みのものを選んでいるはず。
その器を生かすようにするとまとまるので、花は入れすぎないようにするのがコツなのだそう。
「毎日眺めていても気持ちがいいように生けるよう心がけます。そのためにも少なめにすると飽きない花になります」

今回使った器はこの5種類。木のボウルやお椀、脚付きのグラス、お皿、そして飯盒など、雨宮さんが普段使っている様々な器に花を生けるコツを教えていただいた。

今回使った器はこの5種類。木のボウルやお椀、脚付きのグラス、お皿、そして飯盒など、雨宮さんが普段使っている様々な器に花を生けるコツを教えていただいた。

挿花家の雨宮ゆかさんのお宅は、季節の移ろいを日々感じられる自然豊かな神奈川の丘陵地にある。

挿花家の雨宮ゆかさんのお宅は、季節の移ろいを日々感じられる自然豊かな神奈川の丘陵地にある。

伸びやかな動きを楽しむ

「市販の花は真っ直ぐな茎のものが多いので、動きのあるものを足すと、少ない花でいきいきとみせることができます」
たとえば、冬芽のついた枝ものや、動きのユニークなウンリュウヤナギを草花に合わせる。

「種類は少なくし、それぞれに形の違うものを選ぶと、うまくまとまります」

日常の器に生ける際は、花を短く切ることになることを予め花選びの際に考えておいたほうがよいのだとか。
「花器に生けていた花を切り戻すうちにどんどん短くなったら、日常の器に生け直すのもよいアイディアです。
その際、身近なグリーンをプラスすると、花器で飾っていた時とはまた違った生け花を楽しめます」

花材は3つに絞るのがうまくいくコツなのだとか。
まず①主役の花。手持ちのものでも生花店で買ってきたものでもよい。
そして②緑のもの、あるいは枝もの。
3種目は、①と②に足りないタイプのものを。①と②の間を繋いでくれるような形のものがいい。
「冬は花が少ない季節ですが、一方でテクスチャーが際立つものがある時期でもあります。姿形がユニークな草花を生ける際は2種類でもかまいません」

春に咲く花の冬芽を楽しむ。「冬芽のついたヒュウガミズキと椿を一緒に飾りました。主役にしたい花と枝物をシンプルに合わせます」

春に咲く花の冬芽を楽しむ。「冬芽のついたヒュウガミズキと椿を一緒に飾りました。主役にしたい花と枝物をシンプルに合わせます」

水を直接入れられない器の場合は、ガラス瓶などの落としを入れる。

水を直接入れられない器の場合は、ガラス瓶などの落としを入れる。

脚付きのグラスは特別なものに見える。白いガラスには、凛とした冬の空気も感じられる。花材はボケ。冬の風景の中にも、春が近づいてくる足音が聞こえるようだ。ボケの伸びやかな枝も美しい。枯れた山芋の種を枝にかけて遊ばせる。「下に垂れる動きがあるとおもしろいです」。身近な自然の風景がそのまま場所を移したかのようだ。

脚付きのグラスは特別なものに見える。白いガラスには、凛とした冬の空気も感じられる。花材はボケ。冬の風景の中にも、春が近づいてくる足音が聞こえるようだ。ボケの伸びやかな枝も美しい。枯れた山芋の種を枝にかけて遊ばせる。「下に垂れる動きがあるとおもしろいです」。身近な自然の風景がそのまま場所を移したかのようだ。

枝に切り込みを入れて広げる。グラスの中で枝ものを安定させるコツだ。

枝に切り込みを入れて広げる。グラスの中で枝ものを安定させるコツだ。

一輪の白いバラを、枝の動きが際立つウンリュウヤナギとともに、赤いお椀に飾った。

一輪の白いバラを、枝の動きが際立つウンリュウヤナギとともに、赤いお椀に飾った。

ウンリュウヤナギの弾力性を生かし、器の中で丸めるようにして留める。

ウンリュウヤナギの弾力性を生かし、器の中で丸めるようにして留める。

器を決めてから花を選ぶ

日常の器に花を生ける手順がある。
「まず、どこに飾るか、場所を決めてください。
次に、生ける器を選びます。
最後に、器に合った花を見つけましょう」
普通は花を買ってからどこに飾ろう?となりがちだけれど、場所→器→花、の順番で決めるのがポイントだそうだ。

四角い器に生ける時は花材を横に流すように、丸い器にはこんもりと。細長い器に生ける時は細長く仕立てるのがポイントなのだとか。
「器を花で埋めようとせず、空間を生かして生けましょう」

白いお皿に、ビオラとアケビ、ニンドウを生ける。お皿の余白を残して生ける。日常の器と花、その両方が引き立つ。

白いお皿に、ビオラとアケビ、ニンドウを生ける。お皿の余白を残して生ける。日常の器と花、その両方が引き立つ。

アケビの蔓を花留に使う。薄く水を張ったお皿に、アケビをクルリと丸めて置く。

アケビの蔓を花留に使う。薄く水を張ったお皿に、アケビをクルリと丸めて置く。

アケビの花留めに、ビオラを挿す。最後に、ニンドウ(スイカズラ)を匍わせる。

アケビの花留めに、ビオラを挿す。最後に、ニンドウ(スイカズラ)を匍わせる。

キャンプで使う飯盒に、赤のウメモドキ、白のナンキンハゼ、緑のツワブキの葉を合わせた。「木の実だけを使うときは、葉を花に見立てて飾ります。脇役に回ることが多かった葉が主役になることで、また違った見え方を楽しめます」

キャンプで使う飯盒に、赤のウメモドキ、白のナンキンハゼ、緑のツワブキの葉を合わせた。「木の実だけを使うときは、葉を花に見立てて飾ります。脇役に回ることが多かった葉が主役になることで、また違った見え方を楽しめます」

雨宮ゆかさん。花の教室「日々花」主宰。身近な草花を使って、生活に季節をとりこむ花の楽しみ方を教えるレッスンを行っている。和の花を使った作風は人気が高い。工芸作家の器に生けるコラボレーションも評判を呼んでいる。著書に『花ごよみ365日』(誠文堂新光社)

雨宮ゆかさん。花の教室「日々花」主宰。身近な草花を使って、生活に季節をとりこむ花の楽しみ方を教えるレッスンを行っている。和の花を使った作風は人気が高い。工芸作家の器に生けるコラボレーションも評判を呼んでいる。著書に『花ごよみ365日』(誠文堂新光社)

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