たっぷりの緑で空間を満たすアイディア 植物の力を生かして
イメージを造る方法を学ぶ
“曖昧”を植物で表現する
その植栽を手掛けた『Yard Works』の天野慶さんに、たくさんのグリーンで室内を満たす際のコツを伺った。
今年築98年になる建物の重厚な外観・躯体はそのままに、内部をリノベーションして2020年2月に開業した『K5』は、2~5階が『HOTEL K5』、1階にレストラン『CAVEMAN』とコーヒーショップ『SWITCH COFFEE』、バー『青淵』、地下にビアホール『B』を備える。
建築と空間デザインは、スウェーデンのストックホルムを拠点に活躍する建築家デザインユニット『CLAESSON KOIVISTO RUNE(通称CKR)』が担当。
『K5』は庭がないのにガーデナーがいる、唯一無二の施設を標榜する。
150鉢を超える植物が都市の建造物を有機的な空間に変える。大量の植物が建物を飲み込み、森に還っていく途上にも感じられる。
『K5』のデザインコンセプトの1つとなっているのが“曖昧”。
たとえば1階はレストランとコーヒーショップがひとつのカウンターを共有し、その境界線は曖昧だ。
天野さんは”曖昧”を、植物で表現する。
空間をゆるやかに分ける棚に置かれた植物は、成長しながら有機的に空間を曖昧に分ける。
乾いた場所に生育する植物と亜熱帯の植物をあえて混在させ、曖昧なTOKYOらしいMIX感を演出する。
鉢を素焼きで統一する
素焼きのインナーポットもデザインしている。
「日本のメーカーでは納期に合わせられず、中国に発注していました。臨機応変に物事を前に進めていくパワーに圧倒されました」と天野さん。
『K5』の鉢はすべて素焼きで統一。素焼きの鉢は通気性、吸水性、排水性に優れ根腐れしにくい。
地面に近いナチュラルな色で揃えることで、植物に視線が集まる。
枝ぶりのよい植物は、それひとつで絵になる。
レセプションの右手にあるライブラリーバー『青淵(あお)』の正方形の窓枠に、枝ぶりのよいシェフレラがバランス良く収まる。
「最初に持ってきた鉢はカッコよすぎたので、ほどほどのものに抑えました(笑)」
寄せ植えをする
寄せ植えした鉢の表面はコケでマルチングしている。
「バークでも良かったのですが、日本らしさを出したかったのでコケを使いました」
通常、光が少なく乾燥している過酷な環境にある商業施設の植物は交換が前提となる。
「植物がツールになってしまうんですね。
でも『K5』ではそうしたくなかった。なのでしっかり定期的にメンテナンスに入っています。
それでも、光の少ない環境に適応できなかったり、水が切れて枯れてしまうものもあります」
植物を育てる時、枯らすことを過度に怖がらなくてもいいと天野さん。
「なぜ枯れたのかを学び、次に生かせる経験となります。プロでも枯らしますから、後ろめたく思わないでください。たとえばサボテンは枯れても姿かたちが様になりますし、掘り起こして根を洗って飾るとカッコいいんですよ」
information
『K5』
東京都中央区日本橋兜町3-5
『YARD WORKS』
山梨県笛吹市春日居町鎮目39-3