自由な発想で盆栽を。Part2   冬の景色を升に再現して 迎春にふさわしい盆栽を楽しむ

自由な発想で盆栽を。Part2冬の景色を升に再現
迎春にふさわしい盆栽を楽しむ

縁起物の升を使って

伝統的な盆栽の基本を守りながら、自由な発想で楽しむ新しいスタイルを提案する盆栽家の樹弥沙さん。Part1では、室内で楽しめる「NEO盆栽」をご紹介。Part2では、樹さんらしいモダンな感覚で、お正月を迎えるのにもふさわしい盆栽のアレンジを教えていただく。
「お正月は松竹梅を寄せ植えにしたり、石庭をイメージして寒水をあしらったりするのがおすすめです。陶器の鉢の代わりに升を使ってみても、お祝いムードが演出できます」。
樹さんのワークショップでは、ガラスコーティングされていて腐りにくい桐の升を使用。この升を使って、今回は植え替えを行う。まずは鉢に見立てた升の仕掛けからスタート。
升を鉢に見立て、クロマツに苔と寒水をあしらいって冬景色を再現。

升を鉢に見立て、クロマツに苔と寒水をあしらいって冬景色を再現。

升、ハサミ、箸、10cmと20cm程度のアルミ線、底網、苔、寒水(白い砂のようなもの)、小粒と微粒の2種類の土、そして苗にクロマツを用意。一般的な升を使った場合は劣化しやすいが、直径3cm程度の底穴を開ければ使用も可能。

升、ハサミ、箸、10cmと20cm程度のアルミ線、底網、苔、寒水(白い砂のようなもの)、小粒と微粒の2種類の土、そして苗にクロマツを用意。一般的な升を使った場合は劣化しやすいが、直径3cm程度の底穴を開ければ使用も可能。

10cm程のアルミ線の両側、端から3分の1くらいのところにそれぞれ輪っかを作る。センターの線に対して、同じ側に輪がくるように。

10cm程のアルミ線の両側、端から3分の1くらいのところにそれぞれ輪っかを作る。センターの線に対して、同じ側に輪がくるように。

輪っかの先の脚を2本とも垂直に下に降ろす。

輪っかの先の脚を2本とも垂直に下に降ろす。

底網の中に対角になるようにアルミ線を入れた後、枡の底の穴に、底網ごと入れ込む。211201bon-005

底網の中に対角になるようにアルミ線を入れた後、枡の底の穴に、底網ごと入れ込む。

上から底網を押さえながら、アルミ線の脚を折り曲げ、しっかりと固定させる。

上から底網を押さえながら、アルミ線の脚を折り曲げ、しっかりと固定させる。

苗を支えるため、20cm程のアルミ線で緩やかな和をつくり、底網に差し込む。枡の底の裏側では、アルミ線を折り曲げて固定させておく。鉢の仕掛けはこれで完了。

苗を支えるため、20cm程のアルミ線で緩やかな和をつくり、底網に差し込む。枡の底の裏側では、アルミ線を折り曲げて固定させておく。鉢の仕掛けはこれで完了。

盆栽は人間の縮小版。見えない部分を大切に。

今回の苗は盆栽の定番と言えるクロマツ。升に入れる前に、その土の処理から始める。
「美しい木のカタチを楽しむのが盆栽ですが、大事なのは鉢の中の根っこ。人間と一緒で見えない部分が見える部分をつくるんです」。
根の処理は丁寧に。苗をポットから取り出し箸で表面の汚れを落とし、ポットに入っていた部分の土の半分から下をほぐしていく。
「上の方にある上根が大事なので、上の根っこは傷つけないようにします。表面をきれいにするときは、お箸の腹をやさしく使ってください」。
木や葉のカタチも、鉢とのバランスを考えてカットしてもよい。ここで気をつけたいのは光がなるべく全体に行き届くようにすること。
「木は光に向かって育つので、上に上にと伸びてしまうと下の方で光合成ができず、葉っぱが美しく育ちません。そこで、光が全体に行き渡りやすいように、樹形は不等辺三角形を意識します」。
苗をポットから外し、箸を使って土の表面に載っている苔や葉を落としてキレイにする。

苗をポットから外し、箸を使って土の表面に載っている苔や葉を落としてキレイにする。

根っこをほぐす。ポットに入っていた部分の土の半分から下のみ、髪の毛をとかすように箸の先を使ってほぐしていく。

根っこをほぐす。ポットに入っていた部分の土の半分から下のみ、髪の毛をとかすように箸の先を使ってほぐしていく。

あまり水を吸わない太い根を除き、細い根をなるべく残すようにする。

あまり水を吸わない太い根を除き、細い根をなるべく残すようにする。

根っこをハサミでカット。

根っこをハサミでカット。

丸坊主のようになったらOK。

丸坊主のようになったらOK。

升の中を隙間なく埋めて固定する

土を処理したクロマツは、小粒の土を底に敷いた升の中に入れ、アルミ線でしっかりと固定。
「水をよく含んでくれて水筒の役割をする小粒(赤玉)を最初に入れます。鉢とのバランスを考えてクロマツを入れたら、隙間にさらに粒の細かい微粒を入れていきます。その後、お箸で上からぷすぷすと差して埋め込んでいきますが、力を入れすぎても粒が壊れて底網が詰まり、水が流れなくなって根腐れしやすくなります。加減しながら、ぐらつかなくなるところまで行ってください」。
お箸でぷすぷすと差していくと、隙間が埋まることによって、土が下に沈んでいくことが確認できる。
水をよく含んでくれる小粒(赤玉)の土を底網が隠れるくらいまで入れる。

水をよく含んでくれる小粒(赤玉)の土を底網が隠れるくらいまで入れる。

樹形をカットして整えた苗を升のアルミ線の中に入れ、下からアルミ線を引っぱって固定する。

樹形をカットして整えた苗を升のアルミ線の中に入れ、下からアルミ線を引っぱって固定する。

升の下のアルミ線をハサミでカット。

升の下のアルミ線をハサミでカット。

微粒を入れて隙間を埋めていく。

微粒を入れて隙間を埋めていく。

上からお箸で、空洞を埋め込んでいくようにぷすぷすと差す。

上からお箸で、空洞を埋め込んでいくようにぷすぷすと差す。

隙間が埋められ、土の高さが変化。

隙間が埋められ、土の高さが変化。

根腐れしない処理を行う

クロマツの苗を升に植え替え、しっかり固定されていることを確かめたら、根腐れさせない処理へ。バケツに水を張り、升ごと2〜3回水につけたりあげたりして細かい土を流しておく。
「枯れないようにするために大事な作業です。水はけをよくして、木にとって心地のよい循環する状態をつくってあげます」。
ここまで行ったら、仕上げのアレンジへ。苔を張ったり、寒水をのせたりして、自然界の様子を小さな世界に再現する。寒水は雪が積もった石庭のような雰囲気を演出してくれる。
「盆栽は鉢の中に、人の手を介して自然を再現するものです。自然の仕組みを理解しながら楽しんでいただきたいですね」。
根腐れを防ぐ処理。バケツに張った水に鉢ごとつけ、つけたらあげる、を2〜3回繰り返す。

根腐れを防ぐ処理。バケツに張った水に鉢ごとつけ、つけたらあげる、を2〜3回繰り返す。

水とともに細かい土が落ちてくる。水が透明になればOK。

水とともに細かい土が落ちてくる。水が透明になればOK。

苔の裏側をハサミでカットし、厚みを取る。

苔の裏側をハサミでカットし、厚みを取る。

苔を載せて、土に定着するよう箸で上から押さえる。

苔を載せて、土に定着するよう箸で上から押さえる。

寒水を載せて雪や川に見立てる。

寒水を載せて雪や川に見立てる。

1年中緑を楽しめるクロマツの盆栽が完成。水やりの目安は土が乾いたら。日当りのよい場所に置いておきたい。

1年中緑を楽しめるクロマツの盆栽が完成。水やりの目安は土が乾いたら。日当りのよい場所に置いておきたい。

盆栽家・樹弥沙さん。「Bonsai盆々。」として、自由に楽しめる時代に寄り添った盆栽を提案。様々なワークショップも開催。

盆栽家・樹弥沙さん。「Bonsai盆々。」として、自由に楽しめる時代に寄り添った盆栽を提案。様々なワークショップも開催。

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