和のしつらえ「神嘗祭」実りの秋に感謝する
お米の国の伝統を飾る
自宅で楽しむ伊勢神宮のお祭り
先月、お月見のしつらえを教えていただいた『花屋Fcrown』の橋本冠斗さんに、実りの秋のしつらえをご案内いただいた。
今月は「神嘗祭」。伊勢神宮では一年を通して様々なお祭りがあるが、神嘗祭はその中心。
天照大御神が“主食にするように”とお授けになった稲を、感謝とともに収穫の秋に初穂を捧げるお祭りだ。その年の新穀を最初に神様に捧げる。
実りの秋の季節は、日本人が大切にしてきた自然に対する畏敬の念や感謝の気持ちを尊ぶしつらえを楽しみたい。
「稲穂に紙垂(しで)をかけ、”末広がり”の形の和紙に乗せた、自宅で伝統行事を楽しむしつらえをデザインしました」
今年収穫した稲わらと奉書紙を準備
「神嘗祭」の主役は稲穂。今年収穫した稲穂を準備する。
「稲穂は花材として手に入れることができます。近くの花材店になければ注文して取り寄せてもらいましょう」
和紙は紙垂を作る奉書紙と、稲穂を包む手漉きの和紙の2種類を準備する。
奉書紙の由来は室町幕府が公文書を作成するために用いていた紙と考えられている。楮(こうぞ)を原料に作られた。現代の奉書紙はパルプが使われているものがほとんどだが、大切なことを伝える和紙とされている。紙垂にも奉書紙が使われる。
紙垂を造る
紙垂(しで)は、榊の枝や串などに垂らす紙や布を言う。注連縄(しめなわ)に垂らせば、神域や祭場を標示し、清浄を象徴する。
紙垂のジグザグの形は稲妻をイメージしていて、神域にやってくる邪悪なものを追い払うという意味合いがあるそうだ。
なぜ稲妻を稲の妻と呼ぶようになったかというと、雷が多いと豊作になる気象条件になることが多かったからと言われている。
氷の季節の桐箱
橋本さんは日本の細やかな季節を表現した桐箱をデザインしている。小さな桐箱の中に、愛おしい日本の季節が写し取られている。
「桐箱は明治元年創業の上野の『箱義桐箱店』のものを使っています」
「霜降(そうこう)」と「立冬(りっとう)」の桐箱を見せていただいた。
「霜降」は霜が草木を覆い始める季節、そして「立冬」は木枯らしの到来が冬の始まりを告げる。