洗練の空間に温もりをインテリアに工夫を凝らして
外国風の暮らしを叶える
イギリスの大学でデザインやアートを学び、ベルギーのインテリアデザイン事務所で働いていたヘザー・ブラッキンさん。ふらりと訪れ即決で購入した集合住宅を、自分のテイストにリメイク。好きなものに囲まれて暮らしている。
「海外に住んでいたので広さは優先。100㎡は欲しいと思っていました。ここは郊外ですが緑はあるし、プライバシーも守られていて落ち着けますね」。
近くには、土手でご主人がジョギングを楽しむ川が流れ、家の目の前には桜並木が連なる。静謐な環境の中、古いものを大切にし、手をかけて暮らしを楽しむ、イギリス流の生活空間が創りあげられていた。
DIYで自分らしさを
「入居当初、壁は白いビニールクロスだったのですが、私のテーマカラーであるグレイッシュをベースに塗り替えました」。
玄関はブルーグレーに、LDKやベッドルームの一部は薄いグレーに、書斎はチャコールグレーに。職人さんに依頼しつつ、ベッドルームと書斎は自らDIYで塗り上げた。塗料はすべて、微妙な色合いが気に入っているイギリスの“ファロー&ボール”。
「壁は部屋の中で大きな面積を占めているので、単調では面白くないと思うんです。ひと部屋を全部同じカラーで塗るのではなく、一面だけ塗ってみたり、面によってトーンを変えてみたりしています」。
一面をアクセントにすることでフォーカルポイントになり、部屋が活き活きしてくるという。
「ブルーが重たかったキッチンの戸棚も、自分でカッティングシートを貼ってグレーにしました。収納棚なども自分で作ったんですよ」。
ホームセンターで板を買ってきてネジで組み合わせペンキを塗布。空間に無駄がなく、食材などを入れたガラス瓶もちょうどきれいにぴったり収まっている。
「寝室のベッドは存在感を出したくて、背の高いヘッドボードを探したのですが、欲しいものが見つからず。それなら作ってしまおうと、これも手作りしました」。
壁に溶け込む微妙なカラーのヘッドボードは、下地に紫を塗り上から白を重ねたもので、薄紫色のカーテンと調和する。ナチュラルなトーンが、清潔感を感じさせる。
経年を感じさせるインテリア
自らも手を加えてリメイクした空間には、ベルギー時代から大事にしているアンティークのキャビネットや、古材でできたダイニングテーブルなどを置いて、経年の味わいが楽しめるインテリアに。そこに花や、お気に入りの雑貨、思い出の品などをさり気なく配置。
「ティーポットやグラスを花瓶にしてみたり、拾ってきた小石でブックエンドを作ったり、とらわれずに色々アレンジして活用しています。センスよりも、そういうやりたいという気持ちが大事じゃないかな」。
ヘザーさんのお気に入りのスペースは、どっしりとしたイギリス風のソファーを置いたリビング。
「日本では、家の中でダイニングがメインとなることが多いですよね。でもうちはソファーがメイン。ゆっくりお茶をしたり、ワインを飲んだり、そういう時間を楽しんでいます」。
ふんわりと体を包むソファーに腰かけ、ビルダーズティーの時間を楽しむ。イギリスの郊外の午後を思わせる空気が流れていた。
愛するものたちと一緒に
そんなヘザーさんの家に手をかける暮らしは、ご両親から引き継いだのだそうだ。
「イギリス人の父は、DIYが“趣味”というよりは“暮らし”。屋根を直したり、古くなったクッションを取り替えたり、今も常に家のどこかを直しています。父が住む与論島の家を訪れると、家が生きているのを感じるんです。母は、インテリアにとてもこだわりがありました」。
ヘザーさんのお母様は、その美意識を鮮烈に世に残した作家の森瑤子さん。
「家を建てた時は、京都の古民家から建具などを買い取ったり、イタリアのタイルを輸入したりしていました。和もありエキゾチックな雰囲気もあり、色んなものを取り入れていましたね」。
森瑤子さんが愛用していた器や、額装の絵なども大切に引き継いでいるヘザーさん。
「自分にとって意味のあるものに囲まれて暮らしていたいと思います。例えば、大好きな街であり、妹が住んでいる街でもあるフィレンツェのポスターを額装して飾っていますが、何でもいいからポスターを飾るというのはないんです。ここにあるものはみんな大切なものばかりですね」。
ただ外国風、ヴィンテージ風なのではなく、愛情が溢れているからこそ深い味わいを感じさせるのかもしれない。