自由設計のコーポラを活かして 暮らした街の魅力をMIXした ストーリー性のある住まい

自由設計のコーポラを活かして 暮らした街の魅力をMIXした
ストーリー性のある住まい

ホームベースは東京に

シアトル出身のブレイク・パイパーさんは、昨年、都心に建つ新築のコーポラティブハウスを購入。
「大学で日本語を勉強し、留学したり仕事で赴任したりして、日本在住歴はトータルで11年くらいです。仕事柄色んな国に住んでいたのですが、どこかに落ち着ける自分のホームベースが欲しいと思うようになりました。で、どこに家を持ちたいか考えると、東京だったんです」。
初めて訪れたときに目にした首都高からの景色やネオン。強烈な印象を与えた東京が、ブレイクさんにとって“帰りたい街”だったのだそう。
「自分の家を持つのだから、自由にプランニングしたいと思っていました。最初は中古マンションのリフォームが希望でしたが、その時は中国にいてローンを組むことが難しかった。それで自由設計ができるコーポラティブハウスを見つけたんです」。
3面に開口のある65㎡。ワンルームのため光が家中を通り抜ける。

3面に開口のある65㎡。ワンルームのため光が家中を通り抜ける。

玄関・和室側を望む。コンクリートの空間に、多文化をMIX 。

玄関・和室側を望む。コンクリートの空間に、多文化をMIX 。

開放的なワンルームに

コーポラティブの設計担当者のひとりであったono design studioの小野裕美さんとともにプランニングを開始。使いたいものをコラージュしたコンセプトボードを用意して相談した。
「ブレイクさんの好みがすごく伝わってきたし、私もコレ好き、と思えるものばかりでした。設計者である私がアドバイスするというよりは、ブレイクさんが見つけたものをコラボレーションでカタチにした感じです」。
と小野さん。変形地に建つためユニークなカタチをしている65㎡。ワンルームのような間取りにすることは当初から決めていた。
「標準プランでは廊下があって仕切られていたけど、これは本当に日本の住宅の無駄なところだと思うんです。オープンにして広く使うことと、キッチンをメインに考えること、あとは玄関を広く取ることを希望しました」。
標準プランにあった壁の仕上げなども取りやめて、コンクリート現しのままにしたラフな空間を、自由に彩ることに。
和室にも仕切りは設けていない。リビングの壁には窓の形に合うように小野さんと相談して、VITSOEのユニバーサル・シェルビング・システムを導入。

和室にも仕切りは設けていない。リビングの壁には窓の形に合うように小野さんと相談して、VITSOEのユニバーサル・シェルビング・システムを導入。

琉球畳に沖縄の花ブロックをイメージした白い有孔レンガブロック、ルイス・ポールセンのペンダントライト、昭和の卓袱台がモダンな和室。神棚には明治神宮の矢も。天井と建具にシナ材を用い、コンクリートとのバランスをとった。ゲストルームとしても活用している。

琉球畳に沖縄の花ブロックをイメージした白い有孔レンガブロック、ルイス・ポールセンのペンダントライト、昭和の卓袱台がモダンな和室。神棚には明治神宮の矢も。天井と建具にシナ材を用い、コンクリートとのバランスをとった。ゲストルームとしても活用している。

リビングとつながったベッドルーム。窓の向こうには開発が進む街の様子が広がる。

リビングとつながったベッドルーム。窓の向こうには開発が進む街の様子が広がる。

ベッドルームからバスルームに接続する欧米スタイル。変形の条件を活用してウォークインクローゼットも設けている。ジョージ・ネルソンのベッドはアメリカで使っていたものを船便で運んだ。

ベッドルームからバスルームに接続する欧米スタイル。変形の条件を活用してウォークインクローゼットも設けている。ジョージ・ネルソンのベッドはアメリカで使っていたものを船便で運んだ。

暮らしの中心にあるキッチン

間仕切りされているのはバスルームのみ。ベッドルームはチェッカーガラスの引き戸で仕切ることもできるが、普段はオープンに。畳コーナーもあるワンルームの中心に、レストランの厨房のようなキッチンが存在感を放っている。
「料理が好きで人を招くのも好き。キッチンはコミュニケーションの場と考えていたので、打ち合わせ回数も半端なかったです(笑)。でも、ここまで強くなるとは思っていなかったですね」。
アイランドはキッチン専門の業者にオーダー。天板やカウンターの素材、引出しの仕様、取っ手や水栓金物などのパーツまで、ブレイクさんがこだわって指定した。
「高さも身長に合わせているので、とても使いやすいんです。アイランドに立っているのがいちばん居心地良くて。友人が来てもみんなソファーではなくキッチンカウンターに集まってきます」。
スタイリッシュなブラックのキッチンにあって、古材を使ったカウンターが温かな印象だ。
「これはポートランドっぽいですね。ポートランド、日本、上海などこれまでに暮らした街の様子を取り入れ、MIXさせています」。
ワンルームの中心にあるキッチンに立つブレイクさん。ペンダントランプはカナダ・モントリオールのLambert&Fils。

ワンルームの中心にあるキッチンに立つブレイクさん。ペンダントランプはカナダ・モントリオールのLambert&Fils。

レストランの厨房のようなキッチン。壁一面に収納を設け、家電もビルトインにした。アイランドの作業台は厚みにこだわったステンレスを天板に。カウンターにはフシのあるパインの古材をあしらった。

レストランの厨房のようなキッチン。壁一面に収納を設け、家電もビルトインにした。アイランドの作業台は厚みにこだわったステンレスを天板に。カウンターにはフシのあるパインの古材をあしらった。

料理の匂いが気になるときなどは、ベッドルームの引き戸を閉めることもできる。上海をイメージしたチェッカーガラスが光を通す。

料理の匂いが気になるときなどは、ベッドルームの引き戸を閉めることもできる。上海をイメージしたチェッカーガラスが光を通す。

“高火力のガスコンロ”に“サンクスギビングデーには七面鳥が焼けるサイズのオーブン”をビルトイン。HANSGROHE AXORシリーズの水栓は、“日本にはあまり入っていないマットなタイプ”にこだわった。キッチンツールを入れている備前焼は、友人からの引っ越し祝い。

“高火力のガスコンロ”に“サンクスギビングデーには七面鳥が焼けるサイズのオーブン”をビルトイン。HANSGROHE AXORシリーズの水栓は、“日本にはあまり入っていないマットなタイプ”にこだわった。キッチンツールを入れている備前焼は、友人からの引っ越し祝い。

アイランド下の収納。引出しの形状など、細部までこだわってデザイン。和食器をたくさん揃えている。

アイランド下の収納。引出しの形状など、細部までこだわってデザイン。和食器をたくさん揃えている。

シンプルな形状の取っ手はMOCKETT。アメリカの家で使っていたものを取り入れた。

シンプルな形状の取っ手はMOCKETT。アメリカの家で使っていたものを取り入れた。

物語のあるものに囲まれて暮らす

玄関と和室の間仕切りには、沖縄の花ブロックをイメージした有孔レンガで、光や空気の抜けを確保した。
「ブレイクさんが現地で見つけてきたデザイン要素を取り入れていて、すべてにストーリーがあるんです」(小野さん)。
バスルームやサニタリーも、パリのホテルで使われていたシンクなどを海外から取り寄せた。
「ロナン&エルワン・ブルレックのシンクがどうしても付けたくて。天板には駅などの床に使われているテラゾータイルを使い、ポートランドの“SCHOOL HOUSE”から鏡や照明を自分で輸入。モザイクタイルはテクスチャーがすごく気に入っている多治見の“エクシィズ”のものを指定しました」。
家具やアート、雑貨のひとつひとつもすべてお気に入りのものばかり。
「好きなものを集めて完成させたら空間づくりが面白くなってしまったんです。で、伊東の古民家を購入してリノベーションしました。そこは建物を活かして、昭和の雰囲気が再現されるようにデザインしています。まだまだ色々なことをやってみたくて。次は何ができるかを考え中です」。
パリのホテルLES BAINSで使われていたシンクを採用したバスルーム。岐阜県・多治見市のエクシィズのタイルを床や壁にあしらった。

パリのホテルLES BAINSで使われていたシンクを採用したバスルーム。岐阜県・多治見市のエクシィズのタイルを床や壁にあしらった。

テラゾータイルの天板に、ロナン&エルワン・ブルレック兄弟デザインのシンクが特徴的。SCHOOL HOUSEのシンメトリーなライトにも注目。

テラゾータイルの天板に、ロナン&エルワン・ブルレック兄弟デザインのシンクが特徴的。SCHOOL HOUSEのシンメトリーなライトにも注目。

ブレイクさんが自分で撮影した作品を額装してサニタリーの壁に。

ブレイクさんが自分で撮影した作品を額装してサニタリーの壁に。

デッドスペースを活用して、掃除道具を収めるストレージに。引出し式にすることで存在感を感じさせず、奥行きの深さも活かすことができる。

デッドスペースを活用して、掃除道具を収めるストレージに。引出し式にすることで存在感を感じさせず、奥行きの深さも活かすことができる。

玄関は、昔の日本住宅のように広々としたスペースを希望。圧迫感を避けるため、抜けのある有孔レンガを採用。

玄関は、昔の日本住宅のように広々としたスペースを希望。圧迫感を避けるため、抜けのある有孔レンガを採用。

ユーモアのある作風で知られる花井祐介の作品を飾る。キャビネットはCIBONEで購入したグレタ・M・グロスマンのもの。

ユーモアのある作風で知られる花井祐介の作品を飾る。キャビネットはCIBONEで購入したグレタ・M・グロスマンのもの。

壁の作品は香港のアーチストJonathan Jay Leeにオーダーしたもの。歌舞伎町を背景に、ブレイクさん自身とかつての愛犬を描いてもらった。

壁の作品は香港のアーチストJonathan Jay Leeにオーダーしたもの。歌舞伎町を背景に、ブレイクさん自身とかつての愛犬を描いてもらった。

HAYで購入した、ロナン&エルワン・ブルレック兄弟デザインのソファーで寛ぐブレイク・パイパーさん。中東・メキシカン・アメリカン料理を経て、伝統的な日本料理の基礎を研究中。

HAYで購入した、ロナン&エルワン・ブルレック兄弟デザインのソファーで寛ぐブレイク・パイパーさん。中東・メキシカン・アメリカン料理を経て、伝統的な日本料理の基礎を研究中。

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