空間丸ごとプロが監修 トラッドをベースに今を加えて
永く住み継ぐ普遍の住まい
業界大手の2社がコラボ
20年以上前から中古マンションを扱い、リノベーションに特化したサービスを行う「グローバルベイス」と、ハイグレードなファッションとライフスタイルを提案するセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」。両社がコラボレーションして都市部のマンションリノベを行う「RE : Apartment UNITED ARROWS LTD.」は5周年を迎え、ますます注目されている。今回、この協業で誕生した港区三田のマンションでグローバルベイス社の常務取締役・野田清隆さんと、ユナイテッドアローズ社ストアオペレーションセンターの大島一吉さんにお話を伺った。
ーそもそも、コラボレーションが誕生したきっかけは何でしょうか。
「5年ほど前というと中古の流通量が増え、東京においては中古を買う人が新築を上回ってきた時期でした。その中で、もっとリノベについて知ってもらいたい、20代30代の若い世代を含めて、より幅広い年代のみなさんにリノベの可能性を知ってもらいたい、という課題が私たちにはありました。ちょうどその頃、ユナイテッドアローズさんとお話をする機会があり、創業時から事業として住空間に取り組みたい思いがあったとお聞きしたんです」(野田さん)。
「ユナイテッドアローズは創業34年になるのですが、もともと“衣食住”のスタンダードをつくって提供しよう、というのが創業時の志でした。洋服の分野が大きくなったところはあるのですが、住空間に携わりたいというビジョンはスタート時からあったんです。お互いにやりたいことが一致していることを確認したのが始まりですね」(大島さん)。
ータッグを組まれて、良かったことは何ですか?
「マンションは主に側で構造が造られているので、設計できる領域が広く自由度が高いんです。さらにグローバルベイスさんは表層だけではなく、スケルトンにして一からリノベーションされる会社なので、そこがすごくいいと思っています」(大島さん)。
「私は、いざ始めてみたらこれまでの住宅造り、空間造りとは全然違うなと感じました。部屋に入ったときの空気感、一体感が全く違う。限られた選択肢の中から組み合わせてどこかチグハグな空間を造っても、一応きれいには見えるのですが、全体としてコーディネートされていない場合も多い。この協業では家具も含めてトータルで提案していますが、これまでとは違う、ひとつの空気感をつくりあげることができたと思っています」(野田さん)。
両社の強みを活かして
ー「RE : Apartment UNITED ARROWS LTD.」には、どのようなサービスがありますか。
「グローバルベイスが長年積み上げてきた不動産の知見から、資産性の高い物件をご提案し、ユナイテッドアローズ社による空間デザインを経て、設計施工を行います。選択肢としては完成済み物件の“リノコレ”、一から空間造りを行う“マイリノ”のふたつがあります。他に社としては1棟リノベーションも行っているのですが、古い建物を活かすというのが、社の共通した事業展開です」(野田さん)。
ーユナイテッドアローズ社としては、リノベーションは初めての取り組みとなりますが、これまでの店舗設計のノウハウを住宅設計に活かされているところはあるのでしょうか?
「店舗設計では、お客さまにできるだけ長い時間滞在してもらい、買い物を楽しんで頂きたいという目的があります。居心地のいい空間、入ったときの空気感がとても大切で、それを意識した内装、レイアウト、動線を考えて店づくりをしています。自宅は一番長く過ごす空間なので、やはり心地よい空間でなければいけない。見た目のかっこよさだけではなくて、意匠性と機能性がちゃんと両方確立されてないと長く過ごしたいと思える空間にはならないと思っています。動線を考えた扉の位置や、使いやすい造作棚の高さなども大切に考えて設定しています」(大島さん)。
飽きのこないデザインを
ー居心地のよい住空間を造るために、大切にされていることを教えてください。
「時代性、トレンド性にあまり引っ張られすぎない、ということです。流行りだけを追っているとどうしても飽きがきてしまう。社内に“トラッドマインド”という造語があるのですが、これは古い様式・手法を尊重しながら、新しいものを加えようという考え方です。会社の理念に近い意識なのですが、住空間においても大切だと思います」(大島さん)。
ー“トラッドマインド”は「RE : Apartment UNITED ARROWS LTD.」にどう反映されていますか?
「まず左官など昔からある手法、工法をどこかに加えるようにしています。全体にはミニマルに、キーマテリアルを決めて素材の種類をあまり増やさないようにしています。お客さまの趣味のものを置いたら崩れてしまう、という内装デザインではなく、住む人の趣味嗜好を邪魔しない、一体感を感じられるデザイン、長く暮らしても飽きのこない空間を意識しています。その根底には普遍的で変わらない“トラッドマインド”の理念があります」(大島さん)。
ー古い建物を活かして普遍的に受け継いでいく、グローバルベイス社の考え方とも共鳴しますね。
「そうですね。リノベーションは文化だと思っています。時代のニーズもあり、これからますます注目されていくでしょう。新築がなかなか建たない今、中古であれば立地の良いところや自分の住みたい地域で見つけることができるし、建物に趣きがあったり、まわりの景観と調和していたり、メリットがたくさんあります。今はお客さまが多様化していて、様々な世代、ライフステージによって求められる空間も様々ですが、自分の好きな空間を自由にアレンジできるリノベーションはそれとも相性がいい。「RE : Apartment UNITED ARROWS LTD.」は、その可能性に目を向けてもらうきっかけになるといいと思っています」(野田さん)。
「RE : Apartment UNITED ARROWS LTD.」は、リノベ済みの“リノコレ”、物件探しから始めオーダーメイドでデザイン、施工まで行ってくれる“マイリノ”の2タイプ。その中で、小物やアートなどが映えるようデザインされたPLAN A 、プライベートとパブリックをしっかり分けたPLAN B、LDKを中心にした間取りでファミリーに人気のPLAN Cの3タイプを展開。いずれもユナイテッドアローズが全体を監修し、空間との調和を意識してデザイン、セレクトしたオリジナルファニチャーも標準パッケージされている。ハード面とソフト面、どちらもプロの知見を得ながら、トータルでコーディネートされた、永く愛せる住まいが完成しそうだ。