人間工学に基づいたイス選び 長時間のデスクワークを支える
ワークチェアを見つける
コンシェルジュがアドバイス
リモートワークが定着する中、ワークチェアの重要性が認識されるようになってきた。『WORKAHOLIC』は、実際にお店でイスに座ってみて自分にぴったりの一脚を選ぶことができる、ワークチェアの専門店。2011年のオープン以来、人間工学に基づいた商品を提案してきた。今回、ワークチェア選びの考え方や、選ぶときのポイントについて伺ってみた。
「もともとオフィス用文具の会社からスタートしたのですが、オフィス家具の中でも人の身体に直接触れるイスの大切さを感じていました」。というのは、同社の伊藤僚範さん。人体の形状を考えて設計されたワークチェアなのに、当時はまだ試して購入できる場所がほとんどなかった。
「高額な商品をオンラインなどで購入しても、使ってみたら合わない、という話もよくありました。そんな問題をクリアするため、実際に試せる店舗が必要だと感じました」。
『WORKAHOLIC』では、国内外の15ブランドを扱い、店舗には常時70脚強の商品を揃える。専門のチェアコンシェルジュが、様々な知見を基に、一人一人の身体やライフスタイルに合う商品をアドバイスしている。
正しい座り方からスタート
「学生から社会人まで、多くの人がイスに毎日長時間座ります。合っていないと姿勢が崩れ血流が悪くなり、筋肉に負担がかって腰痛になったり、骨格自体が変わってきたりします」。
では、何を基準に自分に合うイスを選んだらいいのだろうか。
「『WORKAHOLIC』では、まず座り方の説明から入っています。いざ座る時、背もたれを使ったことのない人が多いんですよ。みなさん大体、もたれることに抵抗があるんです」。
良い姿勢を保とうとすると、背もたれから身体を離して背筋をピンと伸ばして座ろうとする。でもこの体勢を維持するのはなかなか難しい。
「立っている時は、重たい頭を背骨のS字カーブで支えて、筋肉に過剰な負担がかからないようにしてバランスを保っています。頭の位置と背筋のカーブの関係性はとても大事で、座っている時もこれを同じように維持したい。ただ意識しないと続けられないし、意識しすぎると仕事の集中力にも影響してきます」。
それをサポートしてくれるのがワークチェア。背もたれが人間の背中の形状に合わせて設計されているので、深く腰かけて身体を預けることによって、自然とS字カーブが維持され、無理なく望ましい体勢が保たれる。
「まず深く腰かけてみて、自分の背中と背もたれの間に隙間ができていないかどうかを確認します。後は座ったときにお尻に固さを感じないかどうか、座面との相性も大事になってきます」。
自分に合ったイス選びの方法
どのように自分にぴったりのワークチェアが選定されるのか。実際の流れを聞いてみた。
「まず机の高さや天板の厚み、奥行きなど、お客様のデスク情報を伺います。PCはデスクトップかノート型なのかもお聞きして、それとなるべく近い環境にして座っていただきます」。
大切にしているのはヒヤリング。在宅ワークかどうか、普段どれくらい座っているか、腰や肩など悩みはどこにあるか。ドクターの問診のようなことが行われる。
「普段の座り方もお聞きします。いちばん多いクのは両手を机の上にのせて猫背で前傾した座り方です。あとは男性に多いのですが、よくあるのはお尻が前に滑る座り方です。これだとS字ラインが“C”の形に丸まってしまいます。女性に多いのは浅く腰かける座り方ですが、これは長続きしません」。
問題点を明確にした上で、深く座れる腰かけ方をアドバイス。
「まず座るときはお尻を後ろにぐっと突き出して、イスの背もたれと座面の間の溝に沈めるような体勢で腰かけます。そしてそのまま身体を起こすと背中のラインがぴたりと合ってきます。さらに上半身を、直角の状態から軽く後傾にすると、よい座り方ができます」。
同じように大事なのは、座面の状態。
「座った状態でふくらはぎがイスのフレームにあたっていないかを確認します。膝を90度に曲げた時、だいたい指2本が入るくらいの余裕があるのがベストです。店舗ではスリッパにはきかえていただき、実践に家で使うのと相違ないようにして確かめます」。
長く使える一脚を選び抜く
ギャラリーのように、美しいワークチェアが整然と並ぶ同店。素材は主に通気性がよく弾む感覚のメッシュ、やわらかい感触で冬には温かさも保てるクッションがある。
「メッシュは必ずまわりに固いフレームがあるので、脚に当たらないかどうかを確認します。クッションは熱がこもりやすい点がありますが、固さの感触も異なるため、どちらを選ぶかはお好み次第。一瞬ちょっと座っただけでは感じ方が変わってくることがあるので、時間が許す限り長めに座ってもらうのがおすすめですね」。
アームレスト、ヘッドレスト、オットマンのオプションも商品によって様々。
「あれば有効ですが、なくても構いません。正しい座り方をした上で、身体をしっかり支えてもらえるポジティブな印象のイスを探してもらい、その上でデザイン、価格、メーカー保証などをチェックします。しっかり選んで、長く使い続けていただきたいです」。